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2020年8月21日(金)

コロナ重症者数 正確に把握せず

都 ICU患者一部除外 国“報道で知った”

国基準なら東京10人増

 新型コロナウイルスの重症者数を把握する基準が、厚生労働省と東京都で異なっていたことが問題になっています。重症者数は、感染拡大の判断と対応を決定するための重要な指標です。国が首都の感染状況を正確に把握できていなかったのではないかという異常な事態が起きています。(井上拓大)


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(写真)重症のコロナ患者が入院する国立国際医療研究センター=東京都新宿区

 厚労省は4月26日、集中治療室(ICU)での管理、人工呼吸器または体外式膜型人工肺(ECMO)を使っている患者を重症者として報告するよう都道府県に求めています。

 東京都は当初、ICUも重症者に集計していましたが、4月27日から人工呼吸器、ECMOを使用していないICUの患者を重症者数から除外しています。都防疫情報管理課の担当者は、ICUに入っている患者すべてが重症者ではないので、専門家の意見も聞いて除外したと説明します。都は今後、独自の基準を使いつつ、厚労省にはICUを含めた重症者数を報告するとしています。

 では一体どのぐらいの差がでるのか―。

 20日に開かれた東京都のモニタリング会議では、都の基準による重症者は32人で、厚労省基準では41人であることが明らかにされました。前出の都担当者も厚労省基準になおした場合「10人前後が増えるのではないか」といいます。

 政府の新型コロナ対策分科会は、感染状況をステージ1~4に分類するための指標を公表しています。重症者数も指標の一つです。厚労省の基準で集計した都の重症者数は、ステージ3(感染者の急増及び医療提供体制における大きな支障の発生を避けるための対応が必要な段階)の目安を上回ります。一方、都基準の集計では目安を下回ります。

 都モニタリング会議では、今月11~17日の新規感染者のうち、40代以上の中高年層が約4割を占めるなど、増加傾向にあることが示されました。

 中高年は重症化リスクが高いとされています。都基準の重症者32人も、全員が40代以上です。専門家は重症化は2週間遅れて増えてくるとして、警戒を呼び掛けています。

 19日の野党合同ヒアリングでは「いつ東京都の重症者の基準が違うと認識したか」と聞かれ、厚労省担当者が「正確に今回情報が出てから。ニュースで報道されてから」「(重症者数の)数値に対しては一部漏れがある可能性があると思う。調査中」などと答えました。

 国は都の感染者数が増大するなか「大事なのは重症者の数」(菅義偉官房長官)などと、“まだ大丈夫”かのように語ってきました。正確な感染状況を把握できないまま対策を怠ってきた国の責任が問われます。

医療体制の脆弱さ反映か 抜本的な拡充こそ急務だ

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 医師・共産党東京都委員会新型コロナ対策本部長の谷川智行さんの話 重症者数は医療体制の逼迫(ひっぱく)度の指標となっており、全国共通の基準が必要です。その基準を東京都が説明もなしに変更するなど、とんでもないことです。厚労省が把握していなかったことも大きな問題です。

 本来、ICUは集中治療を行う貴重な病床であり、安易な利用がされているとは思えません。

 中等症の患者がICUを利用せざるを得ない状況が広がっているとすれば、それ自体が医療体制の脆弱(ぜいじゃく)さを反映しています。医療体制の抜本的な拡充が急がれます。


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