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2020年9月6日(日)

主張

安倍政権と憲法

立憲主義の回復こそが急務だ

 首相自らの辞任表明によって終わりを告げる安倍晋三政権の7年8カ月は、民主主義国家では当たり前の政治原則である立憲主義や「法の支配」を無視した悪政の連続でした。憲法と法律をこれほどないがしろにしてきた政権は戦後かつてありませんでした。安倍首相の後継を事実上決める自民党総裁選に出馬表明している3氏もこれまで安倍政権の要職に就き、ともに悪政を推進してきました。その共同責任から逃れることはできません。

国の在り方を変える暴走

 安倍首相は2012年12月の政権復帰直後から改憲を公言し、その実現のためさまざまな策略を巡らせてきました。

 首相がまず企てたのは、改憲の手続きを定める憲法96条の改定でした。改憲の国会発議の要件である衆参両院議員の3分の2以上の賛成を過半数に引き下げるというものです。しかし、改憲のルールそのものを変えるやり方には、「裏口入学」などといった批判が噴出し、行き詰まりました。

 安倍政権による立憲主義破壊の最たるものは、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定(14年7月)と、それに基づいた安保法制=戦争法の強行(15年9月)です。

 歴代の政権が「憲法9条の下では許されない」としてきた集団的自衛権に関する解釈を「許される」に百八十度転換したもので、元内閣法制局長官や自衛隊合憲論を主張する憲法学者からも「違憲立法」との批判が上がりました。国民の大規模な反対運動・世論に逆らい、与党の数の力で強行採決を繰り返し、安保法制を成立させたことは、まさに“憲法破壊のクーデター”に他なりません。

 安保法制の下で、「戦争する国」づくりが加速しています。安倍首相の政権復帰後、軍事費は8年連続で増額され、20年度には過去最高の5兆3000億円にも達しました。「専守防衛」というこれまでの建前も覆し、「いずも」型護衛艦を最新鋭の戦闘機F35Bが発着艦できる空母に改修することや、長距離巡航ミサイルの導入などを進め、敵基地攻撃能力の保有に踏み出そうとしています。

 首相が辞任表明の会見(8月28日)で、敵基地攻撃能力の保有検討を含めた新たな安全保障政策について「今後速やかに与党調整に入り、その具体化を進める」と強調したことは重大です。

 安倍政権の「戦争する国」づくりのたくらみは、憲法9条の改定を最大の目標としています。首相は17年5月、9条に自衛隊を明記する明文改憲を主張し、実現に執念をみせてきました。狙いは、9条2項の戦力不保持の規定を空文化し、海外での無制限の武力行使を可能にすることです。戦後日本のあり方を根本から変える「戦争する国」づくりは必ずやめさせなければなりません。

抑制ない権力行使許さず

 立憲主義破壊の政治は、抑制のきかない横暴勝手な権力の行使につながります。疑惑の追及を逃れるため、司法の独立という憲法上の要請に基づき検察官の定年延長はできないとしてきた政府解釈をねじ曲げ、首相官邸に近いとされる前東京高検検事長の定年延長を閣議決定で強行し、国民の怒りを広げたのも、その典型です。

 一刻も早く立憲主義を取り戻すことが切実に求められています。


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