2020年10月5日(月)
首相の任命は「形式的」
83年の政府文書に明記
学術会議への監督権否定
菅義偉首相が日本学術会議の推薦した新会員候補6人の任命を拒否した問題で、政府が1983年に日本学術会議法を改定した際、首相の任命は「形式的」と明記し、実質的には首相に任命権はないとする文書を作成していたことが分かりました。内閣法制局は2日の野党合同ヒアリングで「法解釈を変えたわけではない」としており、今回の任命拒否がこれまでの政府解釈を無視した違法な決定であることがいっそう明らかになっています。(岡素晴)
拒否は違法
文書は、内閣法制局の「法律案審議録」にまとめられている「日本学術会議関係想定問答」(83年)で、国立公文書館に収納されています。首相の任命は「実質任命であるのか」との問いに、「推薦人の推薦に基づいて会員を任命することとなっており、形式的任命である」と明言しています。
また、学術会議に対して首相はいかなる権限を持つのかとの別の問いには、法律に規定するものを除き、「指揮監督権を持っていないと考える」と回答。その上で指揮監督権の具体例を予算、事務局職員の人事と庁舎管理、会員・委員の海外派遣命令などに限って示しています。
加藤勝信官房長官は1日の会見で「会員の人事を通じて監督権を行使することは法律上可能」と述べましたが、実際には人事に対する監督権がないことになります。
学術会議の会員選任をめぐっては従来、科学者・研究者の投票で選ぶ公選制でしたが、政府は同年の法改定で推薦制に変更。会員は首相が任命するとしました。首相が会員の任命権を握ることによって、政治が学術会議に介入できるようになれば、組織の独立性が損なわれ、憲法に保障された「学問の自由」も侵害されかねないと懸念が広がりました。
これに対し、当時の中曽根康弘首相は、国会で「政府が行うのは形式的任命にすぎません」(83年5月12日、参院文教委員会)と答弁。日本共産党の吉川春子参院議員の質問に対し、丹羽兵助総理府総務長官(当時)も「学会の方から推薦をしていただいた者は拒否はしない、そのとおりの形だけの任命をしていく」(83年11月24日、参院文教委員会)とのべており、これらは想定問答の政府見解に基づく発言とみられます。
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