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2020年10月6日(火)

神鋼石炭火力発電所アセス

環境相意見書に経産省圧力

CO2排出数値を削除

 神戸市で建設中の神戸製鋼石炭火力発電所(2基、計130万キロワット)をめぐり、計画時に行う事業者の環境影響評価(アセスメント)に対する環境大臣の意見書について、2015年に経済産業省が事前に変更を求めていたことが分かりました。環境省は経産省から繰り返し圧力を受け、発電所からの二酸化炭素排出量の数値を削除していました。(小梶花恵)


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(写真)経産省が二酸化炭素排出量数値の削除を要求した文書

 同発電所の建設・稼働差し止めを求める住民訴訟の弁護団が情報公開で入手した両省間のやりとりを記した文書から判明したもの。

 計画時に事業者は環境保全のために配慮すべきことを「配慮書」にまとめます。環境大臣はこの配慮書に対して、「意見書」を出します。

 温暖化の原因となる温室効果ガスの排出について環境大臣の意見書案は当初、発電所の稼働が「年間690万トン以上の二酸化炭素を排出する可能性があり、最新鋭の天然ガス火力発電所と比べて380万トン以上多い」と指摘。削減のための電力会社による自主的枠組みができず、環境保全措置が満たされない場合は「発電所の設置を認めることはできない」と主張していました。

 経産省はそれに対し、「具体的な排出量は確定していない試算値」「枠組みや保全措置は運転開始までにできればよい」として削除を要求。環境省は、枠組みや保全措置が見通せない状況で石炭火力発電所が増えれば、国の温暖化対策を阻害すると反論したものの、経産省は再び「過去の環境大臣意見と比べて過剰」と削除を求め、最終的には排出量の数値が削除されました。

「関電」「PM2.5」も

 意見書をめぐる環境省とのやりとりの他の記述でも経産省は、事業者側に立ってしつこく圧力をかけていました。神戸製鋼石炭火力発電所の電気を買う契約先の関西電力について、環境省は「(二酸化炭素排出削減の)枠組みの構築に向けて主体的に取り組むよう(経産省が関電に対し)促すこと」と述べています。経産省は関電の名前を削除するよう繰り返し求めています。

 意見書案で環境省は当初、微小粒子状物質(PM2・5)の排出を調査し、影響の予測、評価、環境保全措置を検討するよう求めています。これに対し経産省は、影響は解明の段階であり、「調査や予測、評価、環境保全措置の検討を行わせることは困難」として削除を要求。環境省が削除に応じないと、経産省は「過去の環境大臣意見と比べても過剰で」などと畳みかけています。

 環境影響評価において、環境省は「配慮書」と「準備書」の2文書に対して意見を出すことができますが、「準備書」においても同様に経産省とやりとりしています。


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