2020年10月10日(土)
学術会議元会長の発言要旨 野党合同ヒアリング
日本学術会議の会員任命拒否問題に関する野党合同ヒアリングで日本学術会議元会長の広渡(ひろわたり)清吾、大西隆両氏が発言した内容の要旨は次のとおりです。
法解釈からして誤り 広渡清吾さん
政治にとって最も重要な科学に対する関係は、科学が独立して自由に真理を追究することを保障することです。
日本学術会議は何のためにできたのかを政府によく考えていただきたい。日本学術会議の独立性を保障しなければ、科学者の組織を国費でつくって運営している意味がないではありませんか。
日本学術会議法には、「優れた研究又は業績」がある科学者から会員の候補者を選ぶと書いてあります。会員資格はないと首相が言うのなら、この要件に照らしてどうかということを言わなければいけない。もし、政治的な理由で拒否されたとすると、学術会議は次の会員の選考で、この人は政府の法案に反対した声明に参加していたことがある、やめた方がいいと判断するかもしれない。この明らかに日本学術会議法に反した判断に導く恐れのある首相の行動は、法の解釈からすると誤っているとしかいいようがない。単に権限行使するのが首相の責任ではすまない。理由を言わなくては首相の責任は果たせない。
政治は科学にどう向き合うことが必要なのかという根本にふれる問題です。学術会議の活動の独立性を保障するための会員選考の独立性は、学問の自由に位置付けられます。学問の自由に基づいて豊かに発展する学術の成果を政治や社会にどう生かすかという観点から、戦後、日本国憲法が学問の自由を保障した。このことに基づいて置かれたのが学術会議。これをどう考えるのかという問題です。
任命拒否は法律違反 大西隆さん
日本学術会議法が定める会員選考基準の本質は、「優れた研究又は業績がある科学者」です。任命しない場合は、この基準に照らして適格でないことが理由になります。これは総理大臣といえども一人で判断できません。それぞれの専門家が集まり、業績を評価して判断しなければならず、それを日本学術会議が行っています。法律にある選考基準と違う基準が適用され、任命が拒否されたのなら、法律違反になります。
2016年の補充人事では、官邸から選考途中でも経過を説明しほしいと言われました。三つのポストに、2人ずつ優先順位をつけたものを届けました。官邸は二つのポストについて『1番ではなく2番の方がいいのでは』と難色を示しました。理由を尋ねても明かされませんでした。
政府が繰り返す「総合的・俯瞰(ふかん)的」というのは組織の在り方だと思います。会員が総合的・俯瞰的な人かどうかより、組織全体にいろんな人がいることで総合的・俯瞰的になります。俯瞰的という点では、新たに課題別委員会をつくりました。専門分野ごとに会員が集まるのではなく、例えば東日本大震災では文系から理系までいろんな専門分野の人が集まり、英知を発揮しました。
学術会議の会員が提言作成に参画するのは、研究成果を表現する一つの手段です。その手段が奪われたり制約されたりするのは学問の自由への制約になります。今回の件は、学問の自由の問題としても考える必要があります。