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2020年10月19日(月)

主張

コロナと文化危機

生きる糧として支援の拡充を

 新型コロナウイルス感染症で深刻な状況に陥っている文化芸術関係者が政府に支援の継続、拡充を求めて切実な声を上げています。イベントの参加人数規制が緩和され、満席営業を始めた劇場や映画館がありますが、コロナ危機が半年以上に長期化し、文化芸術活動の存続は死活的事態です。文化庁の支援事業は申請手続きが複雑な上、自己資金を用意しなければならないことが障害となって申請そのものが進みません。政府は文化芸術に携わる人々の声に耳を傾け、支援を大幅に強化すべきです。

必要なのは損失補てん

 安倍晋三前首相がコロナ危機の早い段階からイベントの自粛を求めたため、多くの文化イベントが中止、延期となりました。損失はぴあ総研の調べで2月から1年間で6900億円、観客延べ2億人超と推計されています。補償は政府の責任です。

 文化芸術分野でかつてない運動が広がり、政府の第2次補正予算に509億円の「文化芸術活動の継続支援事業」が盛り込まれました。フリーランスの芸術家・技術スタッフや小規模団体の活動費を補助する事業です。申請見込みは当初、個人だけで10万件といわれていましたが、9月末に締め切られた3次募集までの累計申請件数は全体で5万4216件にすぎません。交付決定は今月16日までで2万2123件です。支援を一刻も早く届ける必要があります。

 文化庁は追加募集を行いますが、文化芸術団体は、申請を見送らざるをえない、使いにくい制度だと批判しています。このままでは多くの予算が使われずに終わってしまう恐れが濃厚です。

 募集要項の分かりにくさや、手続きの煩雑さでつまずく人が多く、「申請を何回も差し戻された」という人が相次いでいます。しかも損失を補てんする制度でなく、新たな事業を始めなければ補助対象になりません。支出の全額が支援されないため、自己資金をあらかじめ用意しないと申請できない仕組みです。

 現場の人たちは「公演が次々キャンセルされ手元にお金がなく、先も見えない中で実情にあわない」と欠陥を指摘しています。公演やイベントの中止で廃業せざるをえなくなった個人、団体は見捨てられています。22団体で構成する文化芸術推進フォーラムは、制度を抜本的に改善した上で実施期間を延長するよう求めています。

 日本共産党は政府への「緊急申し入れ」(2日)の中で「あらかじめ自己資金を用意しないと補助が受けられない仕組みを改めるとともに、国が数千億円を出資して『文化芸術復興基金』を創設すること」を要求しています。

守り育てる国へ転換の時

 日本の文化芸術が苦境に陥っている根本には、文化予算がフランスの9分の1、韓国の10分の1以下という国の政策の貧困さがあります。ドイツの文化相が「芸術家は生命維持に必要不可欠な存在」として無制限の支援を表明したこととあまりに対照的です。

 コロナ危機で演劇や音楽などを直接鑑賞する機会を絶たれたもとで、文化芸術がいかにかけがえのないものかを私たちは痛感させられました。人間が生きる上でなくてはならないものとして予算をかけ、文化芸術を守り育てる国に変えていく時です。


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