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2020年10月24日(土)

なくすな大阪市

歴史ある共同体 壊させぬ

宮本憲一 大阪市立大名誉教授に聞く

 住民投票(11月1日)で是非を問う大阪市の廃止・分割について、宮本憲一大阪市立大学名誉教授(財政学・都市経済学)に聞きました。(隅田哲)


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 大阪市のような都市は、広域行政を担う府県と違い、住民の生産・生活の共同体です。大阪市を廃止・分割する「都」構想は、大阪市の権限と財源を府が吸い上げて広域行政を進めるという意図が露骨に出ています。しかし市の財源は広域行政のためだけにあるのではない。市民の教育や福祉、文化のためにあるのです。

 廃止された市を分割してできる四つの特別区は財源も弱く、これまでのような統一した行政ができるとは思えません。都市行政が弱体化することは明らかです。地方自治という民主主義の基本から見ると、歴史的に形成された共同体を破壊する行為です。市民にとっては屈辱と言っていい。

 大阪市は誇りある都市です。市を核に大阪は独自の経済・社会・文化を発展させてきました。かつては司馬遼太郎や井上靖など大勢の作家が活躍しました。芸能でいえば文楽があり、四つの交響楽団をもつ文化の都です。今大切なのは、大阪市を愛し、誇りをもって発展させることです。

 戦前、大阪市は経済的にも文化的にも日本をリードしました。関一(せき・はじめ)市長(在任1923~35年)は、御堂筋や地下鉄などをつくっただけではありません。労働者のための公営住宅をたくさんつくり、大阪商科大学(現在の大阪市立大学)や公害防止のため大気汚染を観測する研究所をつくりました。当時「都市計画は大阪にならえ」といわれるほどでした。

 大阪市は市民がつくった市民の資産です。その資産を行政上の都合で取り上げるのは暴挙です。

 コロナ対策を優先するべきときに実施する住民投票は、維新と公明党という政党がつくった構想に乗るか乗らないかを問うています。これを市民が決断しなければならないのは不幸なことです。住民投票とは本来、どんな自治体をつくりたいのか市民が構想し、市民一人ひとりがじっくり考えておこなうものです。投票まであとわずかですが、自分たちの街をどうするのか、よく考えて判断してほしい。


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