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2020年10月28日(水)

なくすな大阪市

行政スリム化しない

ジャーナリスト 幸田泉さんに聞く

廃止・分割でコスト増 維新は隠す

 11月1日の住民投票で是非を問う大阪市の廃止・分割の問題点は何か。市を廃止・分割する「都」構想について話し合う大阪府・市の法定協議会を傍聴してきたジャーナリストの幸田泉さんに聞きました。(隅田哲)


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 維新は、「都」構想で「二重行政」が解消されてスリムになり、行政のコストが下がって浮いたお金を住民サービスに回すというイメージを振りまいてきました。

 しかし、政令都市の大阪市が廃止されて新たに四つの特別区が設置されると、スケールデメリットが働いて行政コストは増大するはずです。私は37回にわたる法定協議会(大阪府知事・大阪市長、府議・市議で構成)を傍聴してきました。そこで問題に思ったのは、4分割による行政コストの増大を、維新は行政ぐるみで隠して議論を進めたことでした。

 4分割でコストがどれぐらい増大するのか、知る手掛かりになるのが「基準財政需要額」です。各自治体の人口や面積などから毎年算出する教育や厚生、土木などの行政運営費用です。「基準財政需要額」に税収が足りない分は、国が地方交付税を出して補っています。

 ところが「都」構想の事務局である府・市の「副首都推進局」は「基準財政需要額」の算出を避けてきました。法定協議会で、反対派の議員が算出して議論するよう求めても、知事・市長をはじめとする維新は議論の対象から外しました。「選挙で選ばれる特別区長が運営するはずだ」と将来の特別区長に責任を負わせる姿勢です。

 住民投票の直前になって、大阪市を四つに分けると行政運営コストが218億円増大するという大阪市財政局の試算が報道されました。「基準財政需要額」を算出したものといいます。法定協議会でも、反対派議員は独自で試算をし、行政運営コストは少なくとも約200億円増大すると指摘していました。

 松井一郎市長はこの報道に「218億円は大阪市をそのまま四つの政令指定都市にした場合の金額だ」と意味不明の反論をしていますが、市民に誠実に情報を伝えるべきです。

 コスト増大分を国は地方交付税で補てんしません。国の方針で進められた市町村合併と違い、大阪市の廃止・分割は大阪独自の再編なので援助はないというのです。財源不足が218億円となると住民サービスは維持できるのでしょうか。

 維新は自治体再編の土台になるものを隠して大阪市を廃止・分割しようとしているのです。住民投票を前に「住民サービスは上がります」と宣伝しています。しかし法定協議会でつくった協定書は、住民サービスは特別区設置後、「維持するよう努める」として、上がるとは記していません。

 市の廃止・分割で行政はスリムになるのか、なぜ他の政令市では廃止・分割の議論が起きないのか、市民には大阪市廃止・分割のデメリットを考えてほしい。


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