2020年10月30日(金)
国民の公務員選定罷免権を簒奪
志位委員長 菅首相の答弁不能ぶり批判
日本共産党の志位和夫委員長は29日、国会内で、衆院本会議での自らの代表質問に対する菅義偉首相の答弁への受け止めを問われ、日本学術会議推薦会員候補任命拒否問題で「答弁の体をなしていない」「ことごとく答弁不能に陥っている」と指摘しました。また、首相が、公務員の選定罷免権が国民にあると定めた憲法15条1項を「根拠」に“すべての公務員の選定罷免権はわれにあり”ともいうべき主張を行ったことについて、「内閣総理大臣が国民の権利を簒奪(さんだつ)しようとしている。独裁国家への宣言だ」と痛烈に批判しました。
志位氏は、菅首相が志位氏への答弁で、憲法15条1項を6回も繰り返し、「必ず推薦の通りに任命しなければならないわけではない」と強弁したことについて、「(フランスで絶対王政を敷いた)ルイ14世の『朕(ちん)は国家なり』を想起した」と指摘。「憲法15条1項で規定された国民の公務員選定・罷免権は、国会が定めた法律で具体化するもので、その法律に照らして問題を聞いているのに、これ(憲法15条1項)を持ち出して、すべての公務員の選定・罷免権はわれにありというものだ」と重ねて批判しました。
その上で、戦前は天皇にあった官吏(公務員)の任免権を、それが全体主義と侵略戦争を招いたとの反省のうえに、主権在民のもと国民の選定・罷免権へと変更したのが憲法15条1項だと指摘。「そういう大転換を踏まえた国民主権の条項によって国民が選定・罷免権を持っているのに、内閣総理大臣がそれを簒奪しようというわけだから、本当にこれは独裁国家への宣言だ」と指摘しました。
学術会議推薦の会員候補を「拒否することはない」とした1983年の政府答弁や、公務員の罷免について「明確に客観的に、もう誰が見てもこれは非常に不適当であるという場合に限って任命しない場合もありえる」との69年の国会答弁について、菅首相は「承知している」としか言わず、この答弁に基づいた議論を拒否したと指摘。「いずれの答弁も法解釈についての確定答弁だ。都合が悪い問題は認めず、一応『承知している』が、それに基づいた議論はできないと全部を逃げるという内容だった」と強調しました。
また、前日(28日)の衆院本会議で、学術会議の会員は「多様性が大事だ」から今回の判断をしたと答弁しながら、50代前半の研究者、1人しか候補がいない大学の研究者、女性研究者の任命をなぜ拒否したのかについて、「個々人の任命の理由は人事に関すること」と答弁を拒否したことを示し、「個人の評価の問題を聞いているのではない。昨日自分が言った答弁にてらして理屈がたたないことをただした。それについてまともな答弁ができないのは、トートロジー(同語反復による理論崩壊)だ。これでは国会の議論は成り立たない」と批判。「予算委員会で引き続き徹底的に追及する」と述べました。
杉田副長官の国会招致必要
任命拒否について菅首相に「事前報告」したとされる杉田和博官房副長官の国会招致について問われた志位氏は「学術会議からの推薦名簿を首相は見ていないと言っているが、見ていないでどうして多様性に問題があると言えるのか」と指摘。「杉田氏一人に責任を負わせて問題が解決するわけではないが、そのプロセスを明らかにする上でも、杉田氏の招致はどうしても必要だ」と主張しました。
コロナ対応も無責任な答弁
新型コロナウイルス感染症対策の問題では、「切実な実態を突きつけ、検査と医療の問題、事業と雇用の問題を具体的に聞き、首相は細かく答えたが、国民が置かれた苦難への認識も、それをどう打開するかについても、責任ある答弁がなかった」と指摘。雇用調整助成金の特別措置の延長については「適切に判断する」と検討を約束したが、「他の問題ははっきりした答弁がなかった」として、「一番困難で苦しんでいる国民の苦しみに寄り添って打開していこうという答弁ではまったくなかった。引き続きただしていきたい」と表明しました。