2020年11月7日(土)
参院予算委 小池書記局長の追及
日本共産党の小池晃書記局長は6日の参院予算委員会で、日本学術会議の会員候補6人の任命拒否問題で説明不能に陥っている菅義偉首相の答弁を厳しく追及したほか、新型コロナウイルス感染症対策の強化や、選択的夫婦別姓の導入について政府の姿勢をただしました。
|
学術会議の独立を脅かす
推薦前から介入
「露骨な政治介入宣言」だ―。小池氏は、学術会議問題で菅首相が「推薦前の調整が働かず、結果として任命に至らなかった者が生じた」と突如言いだしたことを厳しく追及しました。菅首相は自らの答弁について説明できず、答弁「崩壊」の状態に陥りました。
首相は5日の参院予算委で、「以前は…内閣府の事務局などと学術会議の会長との間で一定の調整が行われていた」と答弁しました。小池氏が「『以前』とはいつか」とただしたのに対し菅首相は2017年だと明言しました。
「一定の調整とは何か」と追及した小池氏に、菅首相は「任命にあたっての考え方のすり合わせ」だと答弁。小池氏は「名簿の変更が含まれるか」とただしましたが、菅首相は「人事に関することでコメントは控える」などと官僚が差し出すメモを棒読みし、質問に答えないため審議は分刻みで中断しました。小池氏は「調整」と言いだしたのは首相自身であり、「それに答えなかったら国会審議は成り立たない」と批判しました。
その上で、調整できなかったから任命しないということは、「調整」とは名簿を変更させること以外ないと指摘。日本学術会議法では、学術会議が選考・推薦を行い、職務も独立して行うと明記していると述べ、「政府が選考や推薦に実質的に関わることなど、法に照らして断じて認められない。政府との事前調整がなければ推薦通り任命しないというのは、学術会議の独立を脅かす政治介入そのもの」だと迫りました。
小池氏は「今までの説明は学術会議の推薦名簿をそのまま認めるかという話だったが、今回は名簿の作成以前に調整し、調整できなかったら任命拒否するという全くレベルの違う話だ」とさらに追及。菅首相はすり合わせは推薦前の話であり、「一定の調整」という答弁は5日の審議で初めてしたと認めました。
小池氏は、「総理は説明をくるくると変えてきた。そして今回の『会員の選考と推薦の段階から政府が介入する』という宣言、露骨な政治介入宣言だ」と批判。「議論の大前提が変わったのだから議論を一からやり直す必要がある」と要求。国会での質疑のやり直しと任命に深く関わった杉田和博官房副長官の出席を強く求め、野党席から大きな拍手が起きました。
小池氏はまた、任命拒否は、憲法が保障する学問の自由を脅かすものに他ならないと強調し、「学問の自由」に学者コミュニティーなどの自律性の保障も含まれるかとただしました。菅首相はそうだと答えられず、呼んでもいない内閣法制局長官が答弁席に立ち、野党席からは猛抗議があがりました。
小池氏は、1930年代の滝川事件、天皇機関説事件など政権による学問弾圧が行われたさい、政府側は「学問の自由を守る」と主張してきた歴史を紹介。「権力の側はいつでも自由を守ると言いながら、自由や人権を迫害してきた。菅政権がやっていることは戦前の政府がやった学問の自由の侵害とどこが違うのか」と追及。史上初めて人文社会系の220余の学会が理由の説明と6人の任命を求める共同声明を発表したことをあげ「この危機感の広がりをどう認識するか」とただしましたが、菅首相は「ご意見として伺う」と述べるだけでした。
小池氏は「あなたの行為そのものが答弁の欺まん性を証明している」と批判し、「事態を解決するすべての責任は任命拒否を行った総理にある」と任命拒否撤回を強く求めました。
|
継続支援へ「公助」の出番
コロナ危機打開
小池氏は、政府の新型コロナウイルス感染対策についてただしました。
小池氏は、コロナと最前線でたたかう医療機関への十分な支援が継続されない場合、「コロナ対応が不可能になるのみならず、地域医療が崩壊する危険性すらある」との日本病院会の指摘を紹介。菅首相が「約3兆円を支援した」と答えた緊急包括支援交付金のうち医療機関に届いたのはいくらかと追及しました。
田村憲久厚生労働相は「3000億円」と答え、小池氏は医療機関に届いているのは1割にすぎないと批判。さらに支援の規模が小さすぎるとして、田村厚労相が大臣就任前に、「足りない」と発言していたことにもふれ、抜本的な改善を求めました。
小池氏は、日本医労連の調査で加盟機関の8割近くが冬のボーナスを引き下げ、うち4分の1が平均10万円以上引き下げる予定とした結果を示し、「最前線でコロナとたたかう医療従事者のボーナスが引き下げられる理不尽はあってはならない」と強調。「自助でも共助でもなく、公助だ」として損失補てんを強調しました。
小池氏は新型コロナの影響で売り上げが減った事業者を支援する持続化給付金について、「1回限りとせず、継続支援を行うべきだ」と主張。「過剰債務のまま手元資金が枯渇する中小企業の増加が懸念される。業績の悪い今年のうちにリストラし、来年度を迎えようとする企業も増えるのではないか」として、「来年に向けた次の一手が必要な段階だ」と強調しました。
財政制度等審議会では「持続化給付金と家賃支援給付金を終了すべきだ」との資料が出され、部会長代理が「中小企業の新陳代謝が促される機会が奪われる」と発言したと指摘。成長戦略会議委員のデービッド・アトキンソン氏が「中小企業の数を半分以下に」と主張していることにふれ、「中小企業を切り捨てるなど言語道断だ」と批判しました。
小池氏が中小企業の雇用維持を最優先にすべきだと迫ると、梶山弘志経済産業相は「企業の存続と雇用の維持が大切だという視点で対応する」とし、菅首相は「小規模事業者が継続的に発展することが重要だ」と述べました。
小池氏は持続化給付金の改善・継続と地域の実情に合わせた「地域事業継続給付金」制度の創設を検討するよう求めました。
企業から休業手当が支払われない労働者を支援する「休業支援給付金」で、小池氏は「不支給決定が2万件だ」と批判。飲食業では従業員50人、宿泊業では100人以上で大企業と見なされ支援の対象外で、それぞれ42万人、20万人の労働者が「請求さえできない」とし、「企業規模にかかわらず給付できるよう、議論すべきだ」と主張しました。
小池氏はコロナによるイベント業界などへの影響について、「年間2億2900万人の観客が減った」と述べ、政府の文化芸術活動に対する「継続支援事業」が申請の半分しか支払い決定していないと指摘。萩生田光一文部科学相は「申請を迅速に審査する」と述べました。
小池氏は超党派の議連が文化芸術復興基金を創設し、国庫支出を要請したことに触れ、「文化芸術の灯を消さないよう公助が必要だ」と主張しました。
国民の願いに応え今こそ
選択的夫婦別姓
小池氏は、法律で夫婦同姓を強制している国は世界でも日本だけだと指摘し、選択的夫婦別姓の早期実現を求めました。
小池氏は、政府の第5次男女共同参画基本計画の策定に向けた意見募集で、選択的夫婦別姓導入についてどういう意見が寄せられているか問いました。橋本聖子男女共同参画担当相は、反対の意見はなく「改姓により論文などの研究実績のキャリアが引き継がれない」「改姓を避けるために結婚をあきらめる」といった声があると答弁。その上で「若い世代の意見を聞き、困っている方にしっかりとした対応をするのも重要だ」と述べました。
小池氏は「人権の問題として考えるべきだ」と述べ、1996年に法制審議会が、▽選択的夫婦別姓導入▽女性の婚姻適齢の引き上げ▽女性の再婚禁止期間の短縮▽婚外子への差別禁止―を柱とする民法改正を答申したが、選択的夫婦別姓以外はすべて実現したと指摘。「答申から24年。導入に踏み切るべきだ」と求めました。
上川陽子法相は、「国民の間には意見が分かれている状況にある」としつつ、「社会情勢に十分配慮する必要があることも確かだ」と答弁しました。
小池氏は、2001年当時、自民党国会議員有志が党三役に、選択的夫婦別姓導入に向けた民法改正について早急かつ徹底した党内議論を進めることなどを申し入れた際、菅義偉、上川陽子両氏が賛同者に名を連ねていたと指摘。「読売」(06年3月14日付)で、「別姓導入に理解を示す菅義偉衆院議員は『不便さや苦痛を感じている人がいる以上、解決を考えるのは政治の責任だ』と話す」と紹介されたことを示し、「別姓導入を進めてきた方が総理になり法相になった。政治の責任を果たす時ではないか」と迫りました。
菅首相は「政治家としてそうしたことを申し上げてきたことには責任がある」と答弁。小池氏は、野党が選択的夫婦別姓を導入する法案を出し続けていることにもふれ、「いまこそ党派を超えて実現を」と呼びかけました。