しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2020年11月14日(土)

主張

香港議員資格剥奪

一国二制度の破壊は許されぬ

 中国の立法機関、全国人民代表大会常務委員会の決定を受けて香港政府が立法会の民主派4議員の議員資格を剥奪しました。香港の「一国二制度」をさらに形骸化させる暴挙です。選挙で選ばれた住民代表の地位を、中国の中央機関と香港政府が一方的に奪う行為は内外から厳しい批判を浴びています。強権を行使して自由と民主主義を踏みにじるのは、社会主義とまったく無縁な行動です。直ちに撤回することを要求します。

基本法ほごに民主派排除

 全人代常務委の決定は▽香港に対する中国の主権行使を拒否する▽香港独立の宣伝▽海外勢力に干渉を求める▽国家安全に危害を与える▽香港基本法と香港政府に忠節を尽くさない―などの行為があった場合、直ちに議員資格を失うというものです。

 具体的に何の行動が失格要件なのかは明示されず、当局の判断一つです。「中国共産党に反対した」「国家の安全を損なった」「香港政府に忠節を尽くさなかった」とされれば議員資格を喪失し、立候補もできなくなります。

 香港政府には6月に施行された国家安全維持法に基づいて中国から「国家安全」の担当幹部が派遣され、出先機関までつくられています。議員資格の剥奪は、香港の民主化を要求し中国指導部を批判する議員の排除を狙ったものにほかなりません。

 4人の資格剥奪に抗議してほかの15人の民主派議員が辞職を表明しました。立法会の定数70のうち以前からの欠員8を加えて3分の1以上が欠員となる異常事態です。残りのほとんどは中国指導部に従う議員であり、立法機関として崩壊状態に陥ります。

 立法会では親中派が多数を占めますが、民主化運動がかつてなく盛り上がるもとで民主派は9月6日に予定されていた議員選挙で初の過半数獲得を目指していました。そのさなかに香港政府はコロナ感染拡大を口実に選挙を1年間延期しました。民主派の伸長を恐れたことは明らかです。

 中国は資格剥奪に関する決定を「一国二制度を貫徹させるため」としています。まったく成り立たない言い分です。

 香港の地位を定めた香港基本法は立法権をはじめ高度な自治を明記しています。議員資格の剥奪は基本法に真っ向から反しています。

 中国指導部は「内政問題」を理由に国際社会の批判を拒むことはできません。一国二制度は香港基本法や、英国との共同声明で中国が世界に約束したことです。中国が署名した国際人権規約の自由権規約は、差別や不合理な制限のない選挙権、被選挙権の保障を定めています。中国には自由な選挙を行う義務があります。

社会主義とは相いれない

 中国の習近平政権は今世紀半ばまでに「社会主義現代化強国」を建設することを国家目標に掲げます。社会主義は「国民が主人公」という民主主義の理念を政治、経済や社会全体にわたって現実のものとした社会です。中国が香港で行っていることは社会主義とまったく相いれず、「共産党」の名に値しません。このまま経済力で他国を上回る「強国」になったとしても中国は国際的に信頼される国にはなれません。世界が香港を注視していることを中国指導部は自覚すべきです。


pageup