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2020年11月29日(日)

主張

感染急拡大と首相

今が正念場との危機感がない

 新型コロナウイルス感染の急拡大は、重症者増加で各地の医療機関がひっ迫するなど重大な局面です。有効な手だてを講じない菅義偉政権のもとで「人災」としての様相を強めています。専門家から「Go To トラベル」への批判が続出しているのに、首相は同事業の抜本見直しに踏み切ろうとしません。検査・医療への支援も立ち遅れたままです。菅政権に、今が感染爆発を抑止する正念場という危機意識があるのか。国民の命と健康、暮らしを守るために一刻も早く姿勢を改めるべきです。

GoTo固執は変わらず

 菅首相は27日の政府の対策本部で、札幌市と大阪市を出発地とする旅行で「Go To トラベル」の利用を控えることを呼びかけました。24日に両市を目的地にする同事業の新規予約の停止を発表したばかりですが、出発も停止すべきだとの声が続出する中で、数日で修正に追い込まれました。

 しかし、あくまで「自粛」の要請であり、利用するかしないかの判断は国民に丸投げです。感染拡大と重症者が増加している東京都については除外したままです。これで全国的な感染急拡大を抑え込む効果が出るとは思えません。

 そもそも菅政権の対応は遅すぎます。11月前半から「第3波」を警戒する声は上がっていました。人が活発に動くことを税金で後押しする政策「Go To」事業の見直し・縮小を求める意見も相次いでいました。ところが菅政権は、「Go To」は感染を拡大させていないと言い張りました。

 専門家が参加する政府の会議が20日、感染拡大地域の適用除外を提言したことを受け、やっと一部見直しを21日に表明したものの、「Go To」に固執する姿勢は変わりません。政策の失敗を認めず、後手で小出しの修正の繰り返しでは、急速に広がる感染を抑え込むことは不可能です。

 感染拡大時に人の移動を国が推奨する事業の枠組みを変えず漫然と続けること自体が誤ったメッセージです。この政府の姿勢が、感染予防に対する国民の意識の緩みにつながっているとの医療現場からの指摘は後を絶ちません。「Go To」の大幅見直しをせず、いくら首相が「この3週間が極めて重要な時期」と口にしても国民の心に響きません。全国一律の「Go To」は直ちに中止を決断し、苦境にある観光や飲食などの事業者を直接支えることを組み合わせた支援に切り替えるべきです。

 菅首相がコロナで時間を取った記者会見を一度も行わないことも大問題です。官邸への出入りの際に立ち止まり応じる取材でも、26日は「Go To」についての質問に答えず立ち去りました。言いたいことだけを一方的に主張する首相に国民の不信は募ります。

国民に語る言葉ないのか

 「コロナ第1波」の山を越えた今年6月、政府の専門家会議の構成員は、感染拡大時の政府の情報発信のあり方について「広く人々の声を聴き、市民の暮らしに与える影響や被害にまで心を砕いたコミュニケーションを実施しなければならない」と提言しました。安倍晋三前政権の発信方法はあまりに拙劣でしたが、それでもコロナだけで首相記者会見を8回しました。菅首相はなぜ会見しないのか。リスクに際し、国民に語る言葉を持たない政権は失格です。


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