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2020年12月6日(日)

主張

大飯許可取り消し

再稼働推進への根本的疑義だ

 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)について、大阪地裁は、原子力規制委員会の判断に誤りがあったとして設置許可を取り消す判決を出しました。規制委が、耐震性について、自ら定めた審査基準を踏まえた検討をしていないことを違法としました。2011年3月の東京電力福島第1原発事故後、原発の設置許可を否定した司法判断は初めてです。各地の原発再稼働にお墨付きを与えてきた規制委の審査に根本から疑義を突き付けるものです。規制委は今回の判決を真剣に受け止め、審査をやりなおすべきです。

看過しがたい過誤・欠落

 この裁判は、福井県など11府県の住民約130人が大飯3、4号機をめぐり国の設置変更の許可取り消しを求めて提訴したものです。大きな争点は▽関電が設定した「基準地震動」が適切な値であるか▽国の規制機関である規制委が基準地震動を認めるにあたり、適切な審査をしたのか―でした。基準地震動は、原発で想定される地震の最大の揺れを示す値です。

 住民側は、関電の設定した基準地震動は過小で、想定を超える大きな地震が起きることが考慮されておらず、それを適正と評価して3、4号機の設置変更を許可した国の違法性を主張していました。

 地震の規模は、震源断層の長さなどから算出されます。そこで使われる計算式は、過去の事例から導かれたもので、算出されるのは平均的な地震規模です。実際に起きる地震の規模は、この平均値からずれる「ばらつき」があります。規制委も、福島第1原発事故の後に審査基準を見直すなかで、「ばらつき」を考慮する必要があることを「審査ガイド」に明記していました。

 ところが、関電は、「ばらつき」を考慮せず基準地震動を定め、規制委もそれを認めました。判決は、「審査ガイド」に定められた「ばらつき」の考慮がされていないことを指摘し、規制委の「調査審議及び判断の過程には、看過しがたい過誤、欠落がある」と結論付けました。自ら定めたルールすら守らず、設置変更を認可した規制委の姿勢は、極めて重大です。

 規制委は、他の原発の耐震性の審査でも同様のやり方で「合格」させています。地震の影響を過小評価した判断に基づき、運転を続けることは許されません。現在定期検査で停止中の大飯3、4号機は動かしてはなりません。

 規制委は、今回の判決を踏まえて、再稼働容認路線をやめるとともに、全ての原発の地震規模の見直しをすべきです。

 地震と火山のリスクと向き合い、原発運転を認めないとした司法判断は11年以降6回目です。いずれも福島第1原発が未曽有の被害をもたらした実態を踏まえたものです。地震多発国で原発を動かす危険はますます明白です。

規制委の「安全」根拠なし

 安倍晋三前政権は、規制委の安全審査は「世界一厳しい」などとして再稼働を推し進めました。菅義偉政権も今月決定した成長戦略実行計画で「原子力規制委員会によって安全性が確認されたものの再稼働」をすすめるとしています。福島原発事故への反省はどこへいったのか。規制委の審査が安全性を保証しないと示した司法判断を直視し、再稼働の推進と決別し、原発ゼロへかじを切る時です。


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