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2020年12月17日(木)

大量被ばく 東電の責任

仙台高裁 福島原発作業員が勝訴

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(写真)一審に続き控訴審での勝訴判決について記者会見する原告弁護団=16日、仙台高裁記者室

 東京電力福島第1原発事故の緊急作業に従事していた作業員の男性=当時(48)=が、現場での不適切な指示で大量の放射線被ばくを余儀なくされ精神的苦痛を受けたのは安全配慮義務違反だとして、東電とその子会社の関電工、下請け会社に対し合計1100万円の損害賠償を求めた裁判の控訴審判決が16日、仙台高裁でありました。上田哲裁判長は一審の福島地裁判決に続き東電の責任を認め、原告への30万円の慰謝料の支払いを命じました。

 原告は、事故発生翌日の2011年3月12日から同31日まで、3号機タービン建屋地下の電源盤にケーブルを敷設するなどの緊急作業に従事。その間に最大で10・81ミリシーベルトの外部被ばくと5・8ミリシーベルトの内部被ばくを受けました。

 ケーブル敷設では本来、退避基準となるポケット線量計(APD)の警報音が鳴り響くなかで、作業の継続が指示され現場を離れることができませんでした。

 控訴審で東電は、APDが鳴る中での作業による不安は、放射線の作用などで生じた損害ではないなどとして、一審判決の変更を主張。被ばくも低線量であり、賠償すべき精神的苦痛は発生していないとの立場でした。

 判決は、敷設作業での被ばく量だけでは直ちに健康被害が生じないとしても、一定程度以上の累積被ばく量によっては発がんなどのリスクが高まることは一般に否定できないと指摘。そのうえで「健康被害を受けるかもしれないという強い不安や恐怖を覚えたことが不合理なものとはいえない」と原告の主張を認定し、「東電の主張には理由がない」と退けました。

 記者会見で弁護団の広田次男弁護士は、「原発作業員による、被ばくでの賠償請求裁判はこの事件が初めてと言える」と指摘。「原発の世界で圧倒的な力関係をもつ東電に慰謝料の支払いを命じさせた意義は大きく、この判決で勝利を確定させたと原告も私も受け止めている」と述べました。


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