2021年1月12日(火)
主張
普天間「合意」25年
新基地固執が返還妨げている
2021年の今年は、日米両政府が沖縄県の米海兵隊普天間基地(宜野湾市)の「全面返還」で合意して25年になります。「世界一危険」(ラムズフェルド元米国防長官)でありながら四半世紀たった今も返還が実現しないのは、両政府が普天間基地の「県内移設」=名護市辺野古の新基地建設に固執し続けてきたためです。とりわけ安倍晋三前政権と菅義偉現政権はかつてない強権を振るい、埋め立て工事を強行してきました。しかし、新基地建設は完成の見通しが全く立たず、破綻が明白です。
辺野古埋め立て破綻明白
普天間基地の「全面返還」は1996年4月、当時の橋本龍太郎首相とモンデール駐日米大使の会談で合意されました。95年9月の米海兵隊員らによる少女暴行事件に沖縄県民の怒りが爆発し、基地の縮小や撤去を求める島ぐるみの運動が空前の高まりをみせたことが背景にありました。日米両政府は同年11月、沖縄の基地負担の軽減策を協議するとしてSACO(沖縄に関する特別行動委員会)を設置し、普天間基地の「全面返還」を最大の目玉にしました。
普天間基地の「返還」時期は、「5~7年以内」とされました。ところが、96年12月のSACO最終報告は、普天間基地の「重要な軍事的機能と能力を維持」するため、沖縄県内に代替の「海上施設」を建設することが条件とされました。しかも、当時、「ヘリポート」とされていた「海上施設」はその後、大きく変貌しました。現在は、辺野古の海を大規模に埋め立て、2本の滑走路や弾薬搭載区域、強襲揚陸艦が接岸できる岸壁など、普天間基地にはない新たな機能を備えた巨大基地の建設が計画されています。負担軽減どころか基地機能の飛躍的な強化に他なりません。
新基地建設は今後、途方もない年数と経費を要することが明らかになっています。防衛省は2019年12月、埋め立て区域北側(大浦湾側)にある軟弱地盤の改良工事のため、新基地を完成させて米軍に提供するまでに約12年、経費は約9300億円かかるという試算を示しています。しかし、あまりにも甘い見込みです。
同省は18年12月から埋め立て区域南側(辺野古側)で土砂投入を強行しています。沖縄県の試算によると、20年10月末までの土砂投入量は、全体の埋め立てに必要な量の3・8%にすぎません。このペースが続けば埋め立てが終わるのに約50年かかることになります。現地での抗議の座り込みなど、新基地に反対する運動が埋め立て工事の進捗(しんちょく)を阻む大きな力になっています。
「オール沖縄」の勝利を
しかも、最も深い所で海面下90メートルにも及ぶ軟弱地盤の改良工事は、専門家から実施不可能と指摘されています。米国の有力な保守系シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)も、辺野古の新基地について「そもそも完成することはありそうにない」と指摘しています(20年11月の報告書)。
新基地建設の中止、普天間基地の無条件返還こそ問題解決の唯一の道であることは明らかです。新基地建設のためのばく大な予算はコロナ対策に回すべきです。今年必ずある総選挙で新基地阻止を掲げる「オール沖縄」予定候補の全員勝利、野党連合政権の実現がどうしても必要です。