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2021年1月16日(土)

罰則は感染抑止を困難に

日本医学会連合が反対声明

 政府が、新型コロナウイルス感染症対策をめぐり、罰則を新設する感染症法の改定を検討していることについて、医療系の136学会でつくる日本医学会連合(門田守人会長)が14日、「感染抑止も困難になる」とする反対声明をあげました。日本公衆衛生学会と日本疫学会も同日、罰則は不適切とする声明を出しています。政府が罰則新設の理由として感染防止策の「実効性を高めるため」との主張が医学の専門家から否定される事態です。

 政府は、感染症法を改定し、患者・感染者が入院措置に反した場合や行動歴の調査などを拒否した場合、懲役を含む刑事罰を科すことを検討しています。

 同連合は、「感染症法等の改正に関する緊急声明」で、(1)「感染症の制御は国民の理解と協力によるべき」として刑事罰や罰則を伴う条項を設けないこと(2)感染者を受け入れる施設の十分な確保を前提に、入院入所の基準を統一し、施設間や地域間の格差をなくすこと(3)入院勧告や宿泊療養などの要請の措置に伴う社会的不利益への十分な補償(4)感染者とその関係者への偏見・差別行為を防止するための法的規制―を求めています。

 同連合は、過去に性感染症対策やAIDS(後天性免疫不全症候群)対策で強制的措置を実施した多くの国で、国民が刑事罰・罰則を恐れて検査結果を隠したり、検査を受けなくなったりし、感染状況の把握が十分できなかったことを指摘。「公衆衛生の実践上もデメリットが大きいことは確認済み」と強調しています。

 同連合は、国民が入院措置を拒否する「理由」として、就労できなくなることや家庭内での役割が果たせなくなること、周囲からの偏見や差別などをあげて、「これらの状況を抑止する対策を伴わずに、個人に責任を負わせることは、倫理的に受け入れがたい」と主張しています。そのうえで、罰則は不安・差別を引き起こし、主体的で積極的な参加と協力を得られなくなる危険性を指摘します。

 感染症法改定案の罰則規定をめぐって、厚労省の専門部会(15日)でも、複数の委員から「(感染症拡大防止策の)実効性の担保につながるのか疑問に思う」などと懸念が表明されています。


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