2021年2月6日(土)
ヤマト 請負切り
日本郵便にDM便委託
補償なし コロナ禍に不安
ヤマト運輸がメール便「クロネコDM便」の配達を、2月から10道県で順次、日本郵便に委託します。配達を担ってきた請負労働者から「一方的な打ち切りだ」「コロナ禍で収入がなくなる」と不安の声があがっています。(田代正則)
|
ヤマトは、コロナで企業カタログやパンフレットなどの配達減少に拍車がかかっているためだとしています。
今月から山形で開始し、3月から富山、福井、山口、香川、鹿児島、4月から北海道北部、福島、静岡東部、奈良で実施。対象は約9000万通でクロネコDM便全体の10%。1通あたり単価は65円で、総計およそ60億円にのぼります。
ヤマトのDM配達の多くは、「クロネコメイト」と呼ばれる業務委託契約の労働者です。1通の報酬は取り扱い量の多い地域で十数円から山間地で40円などとなっており、時給に換算すると最低賃金の半分以下の場合もある低収入です。
奈良県で配達を担う60代の男性は「昨年9月、クロネコメイトの会議で配達委託のことを通知された」と話します。通知は口頭のみで、文書などはなし。今後の処遇も何の説明もなく次の仕事の紹介もありませんでした。
DM配達で毎月10万円以上の収入がありました。「コロナ禍で仕事もなくなり、収入がなくなったらどうすればいいのか」と訴えます。
クロネコメイトは、「雇用によらない働き方」ともいわれる業務委託契約ですが、発注企業が下請け業者を一方的に切り捨てることは、「優越的地位の乱用」ではないかとの批判を免れません。
ヤマトのメール便はもともと郵政が一手に担っていたのを規制緩和でできることになったものです。それがもうからなくなると一転して切り捨てようというのです。
契約書も渡されず突然
奈良県でクロネコDM便を配達していた男性は3カ月ごとの契約更新。対等の契約関係ではお互いが契約書を保持しますが、男性はヤマトから契約書を渡されていません。
雇用契約であれば、雇用を維持できないほどのやむを得ない経営状況でなければ解雇・雇い止めは許されません。別の業務につけたり、事業譲渡先に雇用を引き継いだり、最低でも再就職まで責任を持つ必要があります。
ヤマトグループは昨年4月~12月の営業利益が897億4700万円(前年同期比396億7000万円増)とネット通販需要などで過去最高です。
クロネコメイトが「雇用によらない働き方」と呼ばれる業務委託契約をいいことに、そのまま打ち切りにしようとしています。
しかし、取引上の地位を乱用して、正常な商習慣に照らして不当に不利益を与えることは優越的地位の乱用とされています。
ヤマトは問い合わせに対して、「各契約に基づき説明を行い、個別に対応しています。具体的な数値等に関してはお答えしかねます」と答えました。