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2021年3月5日(金)

論戦ハイライト

コロナ禍医療 女性の困難 政策の根本転換を

参院予算委 田村議員の質問

 4日の参院予算委員会で、コロナ禍での医療崩壊や女性の困難さの実態を真正面から取り上げた日本共産党の田村智子議員。その背景には、医療・公衆衛生を弱体化させてきた政府の責任や、ジェンダーギャップを「当たり前」とする社会の構造的矛盾があることを指摘し、政策の根本転換を迫りました。


医療崩壊問題

厚労相「必要なものは支払っている」

田村議員「急激な減収は何も補填されていない」「医療崩壊の反省ない」

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(写真)菅首相らに質問する田村智子議員=4日、参院予算委

 「病床が足りない、呼吸器が足りない、救える命が救えなかった。新型コロナ患者だけでなく救急搬送先が決まらず命を落とした方もいる」。田村議員は新型コロナ対応の切実な現場の声を突きつけ、「医療崩壊」の原因を検証し二度と繰り返さないことが政治の責任だと迫りました。

 田村憲久厚労相が「医療機関の役割分担ができていなかった」と述べたのに対し、田村議員は、コロナ患者の受け入れ要請に応じない医療機関名を公表できるようにした政府の対応を批判。受け入れ以外でも、対応病院への看護師派遣や一般患者の対応、発熱外来の設置など「地域医療全体で立ち向かってきたのが実態だ」と指摘しました。

 また、緊急包括支援交付金など約3兆円の医療支援をしているという従来の政府答弁に対し、現場に届いた交付金は1・3兆円にすぎないことや、そもそも使い勝手が悪い問題をただしました。

 田村 大阪府や京都府、愛知県などは届いた額の一部を返金すると言う。緊急事態宣言を出した一番の理由は医療逼迫(ひっぱく)だ。どうなるのか。

 厚労相 そのまま返していただいても次に向かって使う。

 田村 埼玉県では空床補償を概算払いした。しかしコロナ以外の患者が確保病床を使っていた期間分は返金予定だ。3兆円の相当部分が、この1年で“見せ金”に終わるのではないか。

 「必要なものは支払っている」と強弁する田村厚労相に対し、4割超の病院が冬のボーナスを減額せざるをえなかったという医療団体の調査を示しました。

 田村 ワクチン接種が本格的に始まれば、いっそう地域医療全体の経営安定と体制強化が急がれる。最もシンプルに、迅速に届く減収補填(ほてん)をすべきだ。返金せず使ってくれと言えないのか。

 菅首相 (既存の支援で)基本的に減収になることはない。

 田村 (最初の)緊急事態宣言以降、急激な減収は何も補填されていない。医療崩壊の反省がない。

医療・公衆衛生体制

厚労相「『地域医療構想』進める」

田村議員「感染症対策と両立しない」

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 新型コロナのまん延は、長年の医療・公衆衛生の弱体化も浮き彫りにしました。

 田村議員は保健所の体制について、地域保健法の改正以降、職員・保健師数が減り続けていると指摘。「保健所が逼迫した大きな要因ではないか」とただしました。

 田村厚労相は「保健師については2年間で1・5倍にする」などと答弁。田村議員は「職員数は20年前の水準を回復していない」と批判し、抜本的な体制強化が必要だと強調しました。

 政府は感染拡大のさなかでも病床を削減する「地域医療構想」を推進しています。同構想は2015年に高度急性期16・9万床、急性期59・6万床、計76・6万床だった病床数を25年までに、高度急性期13・1万床、急性期40・1万床、計53・2万床まで減らすよう求めています。

 田村議員は、同構想について知事会の代表が「病床の確保をしようとしている病院に再編整理の話を持ちかけるなどというのは全くナンセンスだ」と意見を表明し、市長会の代表からも「医療構想を進めること自体、地域医療崩壊を加速させる恐れがある」と懸念の声が上がっていることを紹介。「それでも大幅な病床削減を進めるのか」と迫りました。

 厚労相 地域医療構想は計画にそって進めるが、感染症の問題をしっかりと入れ込む。

 田村 高度急性期の病床は重症患者を受け入れてきたベッドだ。これを減らすことと感染症対策は両立しない。

 田村議員は、政府が病床削減を強力に後押しするために、全額国費負担の病床再編支援制度の創設までしていると指摘。今年度84億円、来年度予算案に195億円を計上していることを明らかにし、「しかもこの予算に消費税増税分を充てようとしている」と強調しました。

 田村 専門職が一度減らされると緊急事態に対応できなくなる。これがこの冬の医療崩壊の教訓じゃないか。

 首相 地方医療制度は厚生労働省のもとで考えていく。

 田村 医療崩壊がなぜ起きたのか根源に迫る検証をすべきだ。

コロナ禍と女性

田村議員「政治の責任をどう考えるか」

首相「職業訓練に力いれる」

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 「社会的に女性が『当たり前』としてきたことが、コロナ禍で女性に困難をもたらしている」。田村議員はジェンダーギャップを当然とする社会の転換を求めました。

 田村議員は、コロナ禍で女性の就業者数が飲食業は約176万人、宿泊業は約53万人減少するなど、男性より女性の雇用に大きな打撃を与えていると指摘。給付金がないまま実施された昨年の緊急事態宣言で女性の非正規雇用が激減したとして、「コロナ禍で仕事を失い、収入が途絶える。どれほど不安と苦しみをもたらしたか」と批判しました。

 さらに田村議員は、女性が担う業務を正規雇用から非正規雇用に置きかえてきた自公政権の責任を追及しました。規制緩和によって正社員で働いていたバスガイドは非正規が当たり前になったとして、バスガイドの女性は「(コロナ禍によって)仕事はゼロだが支援はない。仲間は命を絶ってしまい、このままでは命を落とすガイドが増える」と助けを求めている事例を紹介し、次のようにただしました。

 田村 政治の責任をどう考えるか。

 首相 職業訓練しながら次の職に就けるよう力を入れる。

 田村 仕事に誇りを持ってきたガイドに届くメッセージではない。

 看護師、介護士、保育士などケア労働は正規雇用でも男性より低賃金です。田村議員は、看護師を医師の補助的業務、介護や保育を「女性の家庭労働」だとして専門性を評価しなかったと批判し、処遇引き上げを求めました。

 非正規・低賃金である上、家庭的責任を女性に担わせる構造の中で、矛盾が集中しているのがシングルマザーです。

 田村議員は、女性の置かれた不利益を埋める補償がなさすぎるため、シングルマザーは苦しさから抜け出せないと指摘。コロナ禍での学校休校で、小学生の子どもを一人で家に置けず正社員の事務職を辞めざるを得なかった事例を紹介し、「シングルマザーの苦悩に応える政治を」と迫りました。

 菅首相は「経済的に厳しいひとり親家庭をしっかり支えていく」と答弁。田村議員は「女性が置かれる構造的な問題を変える政治が必要だ」と主張しました。

接待疑惑ウミ出し切れ

NTT接待

谷脇審議官 違法性「認識なかった」

田村議員「虚偽答弁ではないか」

 田村氏は、谷脇康彦総務審議官がNTT幹部から少なくとも3回、計58万円の接待を受け、山田真貴子前内閣広報官も同社社長から1回30万円の接待を受けていたと『週刊文春』(4日発売)が報じたことを追及しました。

 菅首相は、山田氏が「体調不良」で内閣広報官を辞任した際、「(NTT接待は)承知していなかった」と答弁。田村氏が「山田氏に事実確認を行うべきだ」と迫ったのに対し、加藤勝信官房長官は「すでに(広報官を)退任しており、事実確認する立場にない」と拒否しました。

 田村氏が「政府として接待を究明する立場にないということか」と批判すると、菅首相は「ルールに基づいて対応している」と居直りました。

 谷脇氏は、2018、20両年に3回の接待を受けたと認め、18年の2回はNTT側から自身の配下職員に会食の案内があったと明らかにしました。

 総務省の許認可にかかわる通信事業者からの接待は、放送関連会社「東北新社」と同様、利害関係者から接待を受けることを禁じた国家公務員倫理法への違反が問われます。

 田村氏は、谷脇氏が国会で「(東北新社以外に)倫理法に反する会食はないと認識している」と答弁してきたと指摘し、次のようにただしました。

 田村 虚偽答弁だったのではないか。

 谷脇 先方が提示した金額を負担し、倫理法に抵触しないと認識していた。

 田村氏は、谷脇氏が菅政権の携帯料金値下げの「推進力」だとして「直接の利害関係者のNTTから高額接待を受けながら、またも、ばれなければいいと隠し、虚偽答弁を繰り返している」と述べ、菅首相に迫りました。

 田村 このままその任に就けるのか。

 首相 まだ調査をしている段階だ。

 田村氏は「菅政権はまともに究明するつもりがないと言わざるを得ない」と厳しく批判。首相長男の菅正剛氏ら東北新社関係者、NTT社長ら接待した側の国会招致を求めました。

丸川男女共同参画担当相の任命

首相の責任問われる 田村氏ただす

 田村議員は、丸川珠代・男女共同参画担当相を含む自民党議員が地方議会に対し、選択的夫婦別姓制度実現の意見書が採択されないよう求める文書を送っていた問題で菅義偉首相の任命責任をただしました。

 田村氏は「『意見書を採択するな』というのは議会に対する介入ではないか」と追及。菅首相が「お願い申し上げますと書いてある」と答弁したのに対し、「丁寧な言葉の圧力だ」と批判するとともに、「地方議会に圧力をかけた一人だと承知の上で任命したのか」と質問。菅首相は「承知していなかったが、知っていてもお願いする」と述べました。

 田村氏は、日本社会の問題をジェンダー平等の視点で問い直すムーブメントが始まる中での任命だとして、「丸川氏はこれに抵抗する側だと具体的な行動で示した」と批判。選択的夫婦別姓をめぐり菅首相が「不便さや苦痛を感じている人がいる以上、解決を考えるのは政治の責任だ」と述べていたことを指摘し、丸川氏の任命は「適材適所とはいえない」と批判しました。


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