2021年4月13日(火)
主張
河井事件と再選挙
菅政権の頬かむり許されない
25日投票の長野と広島の参院選挙区、衆院北海道2区の補欠選挙・再選挙は、菅義偉政権発足後初の国政選挙です。一連の選挙で厳しく問われるのは「政治とカネ」問題です。広島の再選挙は、大規模買収事件で有罪となった河井案里前参院議員の当選無効によるものです。北海道2区補選は、大手鶏卵生産会社の贈収賄事件で起訴された吉川貴盛元農林水産相の議員辞職に伴うものです。菅政権は、二つの事件で説明責任を果たさず、頬かむりを続けています。金権政治に無反省の菅政権と与党にノーの審判を下すことが重要です。
巨額資金の使途を語らず
案里前参院議員の2019年の買収事件では、夫で元法相の克行被告の公判が続いています。先週終わった被告人質問の中で元法相は買収を認めました。一方で、自民党本部から提供された1億5000万円にのぼる巨額選挙資金は「1円たりとも買収資金に使っていない」と主張しました。
買収原資は「手持ちの資金」だと言いますが、根拠は示しません。広島県内の地方議員や首長ら100人に配った約2900万円もの現金を「手持ち」でまかなえるのか疑問です。2月の公判では、運動員買収に使った金は党本部から提供された資金が原資だったとする河井陣営の元会計担当者の調書が読み上げられました。疑念だらけなのに、首相ら自民党側は、書類が検察に押収されたことなどを理由に使途を明らかにしません。
提供した資金の8割にあたる1億2000万円は国民の税金である政党助成金です。票をカネで買う買収行為は、民主主義の根幹である選挙をゆがめる大問題です。ましてや買収原資に税金が使われたとすれば言語道断です。河井夫妻の議員辞職で疑惑にフタをすることは許されません。両氏の国会招致が必要です。菅政権と自民党も説明責任を免れません。買収された自民党の地方議員に対しても県民の怒りは高まっています。事件をうやむやにして、いくら再選挙で「信頼を取り戻す」「清廉な政治活動」(自民党陣営)などと訴えても、説得力はありません。
河井夫妻と安倍晋三前政権との深い関係の究明も不可欠です。元法相を首相補佐官や党総裁外交特別補佐などに重用してきたのは前首相です。当時官房長官だった菅首相も安倍氏とともに、案里氏出馬を強引に推進し、当選のために異例のテコ入れをしました。安倍氏も菅氏も国民に全てを語らなければなりません。
大手鶏卵生産会社アキタフーズから500万円の現金を大臣在職中に受け取った吉川元農水相の疑惑についても菅政権は解明に動こうとしません。同事件は、農水省の幹部職員への接待など深刻な広がりをみせています。徹底追及こそが急がれます。
汚れた政治変えるために
河井夫妻の事件も吉川元農水相の事件も、「政治とカネ」疑惑で閣僚らの辞任が相次いだ安倍前政権の「モラル崩壊」体質のなかで引き起こされました。総務省や農水省、文部科学省で相次いでいる接待問題も根は同じです。8年余の「安倍・菅政治」と決別する時です。長野、広島、北海道2区の選挙で市民と野党の統一候補が勝利することは、自民党に代わる新しい政治を実現する大きな力となります。今こそ力を合わせましょう。