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2021年4月20日(火)

主張

自民「こども庁」案

組織いじりは問題のすりかえ

 自民党が「こども庁」創設について党内議論を始めました。子どもの政策を「一元化」する行政庁をつくるとしています。子どもの命や権利を守ることを政治の中心に位置付けることは極めて重要です。しかし、にわかに浮上した自民党の議論には、問題のすりかえという批判が上がっています。子どもをめぐる政策が大きく立ち遅れているのは、歴代自民党政権が、解決を求める国民の切実な願いに背を向けてきたからです。その姿勢に根本的な反省を示さず、組織改編を前面におしたてた議論は、子どもが本当に大切にされる社会の実現につながりません。

具体的な中身は見えず

 自民党は「こども・若者」輝く未来創造本部の初会合を13日開きました。本部長に就いた二階俊博幹事長は、菅義偉首相から「国家的課題に党一丸で取り組むよう」指示があったと述べました。ただ、具体的な検討内容は見えません。

 現在、文部科学省、厚生労働省、内閣府に担当が分かれている子どもにかかわるさまざまな分野の政策を包括する役所を新設する案が有力とされますが、「何をやるのか、全く整理されていない」との指摘が同党内からも出ています。

 一方、菅首相は実現に意欲を燃やし、6月にも策定する「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)に盛り込むとしています。首相の動機は、デジタル庁設置に続く、「縦割り行政打破」の新たな目玉政策をつくるためという見方がもっぱらです。「衆院選のアピール材料にする狙い」と報じるメディアも少なくありません。政権浮揚の思惑と打算を出発点にした政策が、子どもにとって真に有益で実効性のある施策になるのかは大きな疑問です。

 子どもをめぐる大きな困難の大本にあるのは、自民党政権のもとで拡大した政治と社会のゆがみです。保育所に入れない子どもが後をたたない待機児問題を深刻化させたのは、歴代政権が公立をはじめ認可保育所の大増設を拒んできたためです。少子化が打開できない事態が続くのも、子どもを産み育てることが過酷な社会の仕組みが変わらないからです。

 安心して子育てできる雇用のルールづくりが急がれるのに、政府がやってきたのは、長時間労働や非正規雇用を拡大させる労働法制の改悪です。児童虐待についても児童相談所の抜本的な体制強化を図ってこなかったことが問題になっています。子どもの貧困でも、子どもの多い世帯ほど打撃が大きい生活保護改悪を強行するなど、逆行した政策を進めてきました。

 これらの問題は、「縦割り行政」のせいではありません。大企業のもうけを最優先にして、子どもや子育て政策の拡充に必要な予算を確保してこなかった政治の姿勢こそ厳しく問われます。そのことに無反省のまま、「こども庁」を持ち出しても期待は持てません。

世代間を対立させるな

 菅首相は「こども庁」案を語る中で、社会保障は「いままで高齢者中心だった。思い切って変えなければ」と強調しています。しかし、日本の社会保障は、欧州諸国に比べ高齢化が進んでいるのに給付費があまりに少ないことこそが問題です。「こども庁」議論で、世代間の対立をあおり、高齢者への社会保障費削減に結び付けることは許されません。


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