2021年4月22日(木)
主張
文科省接待調査
行政ゆがめた疑惑は深まった
文部科学省の藤原誠事務次官や文科副大臣だった亀岡偉民(よしたみ)・復興副大臣(自民党衆院議員)が、宮崎県の学校法人「豊栄学園」から接待された疑惑で、同省が調査報告書をまとめました。藤原氏が同学園の清水豊理事長らと会食で同席したことや、同省担当者が副大臣室で理事長らに補助金事業について説明していたことを認めました。行政がゆがめられた疑いが深まりました。ところが報告書は、倫理規程に反する事実は確認されなかったと結論付けました。しかし、調査は尽くされておらず、幕引きすることは許されません。
「赤旗」スクープで発覚
豊栄学園が亀岡氏と藤原氏を繰り返し接待した疑惑は、本紙3月22日付がスクープしました。2015~19年に亀岡氏は都内や宮崎県内で学園側とたびたび会食し、藤原氏も複数回同席していました。学園側が費用(総額約95万円)を負担したことを示す記録もあります。この時期、文科省は同学園に多額の補助金の交付を決定しており、違法な接待にあたる疑いが指摘されています。
本紙報道を受けて文科省は、亀岡、藤原の両氏や理事長らから聞き取るなどして16日に結果を公表しました。報告書は、藤原氏が官房長だった15年11月と17年11月に都内の焼き肉店で理事長らと飲食したことを認めました。また、同学園は文科省から補助金が交付されていることから、藤原氏と同学園は「利害関係者に該当していた」と認定しました。一方、報告書は、飲食代は亀岡氏が自分の分と藤原氏の分を支払っているなどとして接待でなく、藤原氏について国家公務員倫理法や倫理規程に違反する事実は確認されなかったとしました。しかし、調査では、亀岡氏の領収書や、学園側の資料などを確認していません。当事者の記憶や申告にもとづく聞き取りだけでは、きわめて不十分です。
亀岡氏を介して副大臣室などで、補助金を担当する職員3人が理事長らに、補助金事業の概要を説明していた事実が報告書で明らかになったことは重大です。副大臣が公務する部屋を使い、補助金を受ける学園側に担当者を引き合わせるというのは国民の疑念を招く行為に他なりません。「何らかの特別な便宜を求めるようなことを働きかけたことはない」(報告書)と言っても説得力はありません。
日本共産党の山添拓参院議員の調査で、豊栄学園が15~20年度にかけて文科省から6件、総額約1億5000万円の補助金や委託費を受けていたことが判明しました。同党の畑野君枝衆院議員の21日の文科委員会質疑で、萩生田光一文科相は、自民党政治家が会食に官僚を呼びつける体質があることを認めました。解明はこれからです。学園側に資料提出などを求めるとともに、関係者の国会招致も必要です。省内の内輪の調査で終わらせることはできません。
菅政権の体質が問われる
菅義偉首相の長男が勤務する「東北新社」やNTTによる総務省の接待、大手鶏卵生産会社アキタフーズにからむ農林水産省の接待など数々の疑惑も徹底的に解明されなければなりません。首相らは究明に背を向ける姿勢を改めるべきです。政官業の癒着が次々と発覚することに国民の政治への不信は高まっています。菅政権の体質が厳しく問われます。