2021年4月24日(土)
温室ガス 30年度政府目標
1.5度抑制と整合せず
原発やめ再エネ転換こそ
米政府主催の気候変動サミット(首脳会議)で菅義偉首相は、2030年度の温室効果ガス削減目標を現行の13年度比26%削減から同46%削減とすると演説しました。
現行の目標は15年7月に決定しました。世界の平均気温上昇を産業革命前と比べ2度より十分低く抑え、1・5度に抑制する努力目標を掲げた地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」採択前の目標で極めて低いにもかかわらず、昨年3月も踏襲した目標です。引き上げは当然です。
しかし、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が18年に公表した報告書は、温度上昇を1・5度に抑えるには30年までに世界全体の温室効果ガス排出量を10年比で45%削減し、50年までにゼロにする必要があると明らかにしました。世界全体で45%であり、世界で第5位の排出国の日本はより高い削減目標が求められます。EU(欧州連合)はすでに1990年比で55%削減を掲げており、イギリスは今回、35年までに同78%削減を表明しました。
しかし、日本の今回の目標は10年比に換算すると約42%削減であり、1・5度目標と整合せず、不十分なものです。
サミットではグテレス国連事務総長が演説で、日本などの豊かな国々が30年までに石炭火力を段階的に廃止することが必要だと強調しました。日本の温室効果ガス排出量の4割を電力部門が占め、排出量が最も多い石炭火力の廃止が国内外から求められています。しかし、菅首相は石炭火力にはいっさい触れませんでした。国内外で現にすすめている石炭火力温存・推進政策を変えるつもりがないのか、これでは「世界の脱炭素化のリーダーシップ」をとるどころではありません。
菅首相はまた、温室効果ガスの削減に向けて「再エネなど脱炭素電源を最大限活用」とも述べました。政府がいう脱炭素電源には原子力も含めており、次期エネルギー計画に向け、「原子力のポテンシャルの最大限発揮」などと運転延長や新増設をねらう議論も盛んに行っています。これほど、国民の願いとかけ離れていることはありません。原発ゼロの日本の実現と石炭火力を廃止し、省エネ、再エネ中心の政策に転換すべきです。(三木利博)