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2021年6月2日(水)

社会は変わるし、変えられる――志位さんと語る学生オンラインゼミ(2)

科学と反省の欠如――二つの問題正す

コロナ対策

どんな感染対策が必要か

 広島県の学生班 緊急事態宣言が出されているんですけれども、効果がどれぐらいあるのかわかりません。どんなコロナ感染対策が必要だと、委員長は思われますか。あと、「オンライン授業の準備が大変」とか、「バイト先が休業した」という学生に、補償が必要ではないかと思うんですけど、その点いかがでしょうか。

 志位 どんなコロナ対策が必要かという質問ですが、私は、日本のコロナ対策は失敗したと考えているんです。いま世界の少なくない国では(収束への)出口が見えてきつつありますね。ところが日本では出口が見えてきていません。ただすべき二つの大問題があると、私は言いたいと思います。

科学に基づく「封じ込め」の戦略がない――検査とワクチンの異常な遅れ

 志位 第一は、科学に基づく「封じ込め」の戦略がないという問題です。そのなかでも一番の問題は、PCR検査を軽視してきたことにあります。いまだに人口比で世界144位と、まったく遅れている。なぜこんなに遅れたのか、私は、とっても疑問だったんですけれども、この間、「なるほど」と思ったことがあるんです。

図
(拡大図はこちら)

 (パネル2)これは、厚生労働省が昨年5月に、秘密裏に作成していた内部文書です。「希望者に広く検査を受けられるようにすべきとの主張」に対する「反論」が書いてある。そんなことをやったら「医療崩壊につながる」「医療崩壊を招く」と書いてあるでしょ。“検査を広げたら医療崩壊が起こる”。こういう文書を、秘密裏につくってばらまいていた。ひどいでしょ。起こったことは反対でした。検査を怠ったために、感染が拡大して、医療崩壊が起こっている。

 ワクチンもそうです。日本ではワクチン接種が非常に遅れている。接種回数で世界128位です。これは、国産ワクチンの開発を怠ってきたことが根本にあるのですが、早い段階からワクチン接種に本腰を入れてとりくむ体制をつくってこなかった政治の怠慢が、こういう事態を招いていると思うんです。

 検査とワクチン――これは「封じ込め」のための科学的基本です。ところが両方とも真剣にとりくんでこなかった。今からでもここは根本からたださなければいけないと、私たちは主張しています。

失敗から謙虚に学び、次の対策に生かすという姿勢がない

写真

(写真)新型コロナウイルスワクチンを注射器に充填(じゅうてん)する看護師=5月24日、東京・葛飾区内の診療所

 志位 もう一つ問題があります。

 第二の問題として私が言いたいのは、失敗から謙虚に学び、次の対策に生かすという姿勢がないということです。未知のウイルスとのたたかいですから、政治が失敗することは、私はあると思うんです。失敗したときが大事だと思う。そのときに、きちんと失敗だったと認め、反省し、謙虚に学んで、次の対策に生かす。こういう姿勢が大切ではないでしょうか。

 ところが、世界の多くの国ではそういう姿勢でとりくんでいるのに、日本の政府にはそういう姿勢がない。たとえば、安倍政権、菅政権のもとで、誰がみても失敗だったということが、いくつもあるでしょ。昨年3月の全国いっせい休校――子どもを苦しめただけでした。アベノマスク――届いたころには市中にマスクが出回っていた。GoToキャンペーン――全国に感染を広げてしまいました。明らかに失敗をやっている。

 ところが、いまあげた三つのうち、政府が「間違っていました」と頭を下げたのは、一つもありません。そういうことでは、国民は、政府のやることが信用できなくなってしまいます。たとえば、GoToキャンペーンのときには、「移動するだけでは感染は広がりません」と言っていたのに、いまは「移動をやめてください」と言っている。つじつまが合わなくなってしまっているわけです。

 私は、この二つの大問題をただすことが急務だと思います。

ワクチン、検査、補償――「3本柱」でコロナ「封じ込め」に責任をもて

 志位 私たち日本共産党としては、先日(5月20日)、政府にたいして緊急要請を行いました。安全・迅速なワクチン接種、大規模検査、十分な補償と生活支援――この「3本柱」で「封じ込め」に責任をもてという要請です。

 それから、医療機関への減収補填(ほてん)や支援強化、そして、東京オリンピック・パラリンピック中止の決断をということも提起しています。ぜひこの方向に進むよう、強く求めていきたい。

学生への複数回の給付金、給付型の奨学金、学費を半分に

 志位 それから、学生のみなさんにたいして、「オンライン授業の準備が大変」とか「バイト先が休業した」などの学生に補償が必要ではないかというご意見ですが、これは本当にその通りです。

 困窮している学生への給付金が1回きりしか出ていません。しかも全学生の12%しか対象になっていない。これを複数回、もっと対象を広げて出す必要があります。

 それから、感染対策を考えたら、オンライン授業はどうしてもやむを得ないのですが、オンライン授業だけでは何のために大学に入ったのかとなってしまいます。キャンパスに行きたいですよね。そのためには、大学での検査を大規模にやるべきです。一部の大学で始まっていると聞きましたが、PCR検査を大規模に行って、キャンパスを安全にして、大学でもゼミなどで集えるように条件をつくっていくことも大切です。

 それから、何といっても給付型の奨学金を本格的につくって、学費を半分にするということを、政治の責任でやっていく。

 そうしたことを、強く求めていきたいと考えています。

オンライン授業なのに施設費――政治が責任をもって対応することを求めていく

 中山 ありがとうございます。学生の方から追加の質問ありますか。

 学生 オンライン授業で、大学に行っていないのに施設費がかかる問題についてどう思われますか。

 志位 これは大きな矛盾だと思います。オンライン授業は、現状ではやむを得ないとしても、施設費などを学生負担にするというのは、政治の責任でただしていく必要があると思います。大学に責任を転嫁するのでなく、政治が責任をもって対応することが必要です。また、先ほどお話ししたように給付金をしっかり出していくことも含めて、必要な支援をやっていくことを求めていきます。

 同時に、私が強調したいのは、オンライン授業は、現状ではやむを得ないのですが、大学の一番のだいご味というのはキャンパスでみんなが集う、そのなかで学んでいくことですよね。先ほども言ったように、検査をしっかりやって、大学でも少人数のゼミなどができるように条件をつくっていくことを、今はあわせてやっていかないといけない。そのことも求めていきたいと考えています。

「受益者負担主義」――“「益」を受ける学生が負担を”という考え方が間違っている

 中山 施設費のことで質問でしたけど、学費の半額そのものを掲げているのは、どうしてなんでしょうか。

 志位 これは、日本の学費は、年間で約80万円から130万円にもなる。世界最高水準の学費になっています。私が大学生のとき(1973年)は、国立大学で年間3万6千円でした。それでも、その2年前までは1万2千円で、3倍にすることに反対してストライキが起こったぐらい、当時は大問題になったのですが。

 中山 ほんとに高いですね。

 志位 高いですね。これは下げるのは当たり前です。ヨーロッパの多くの国ぐにでは、無償か、廉価です。そういう方向に変えていかなければなりません。

 中山 学生の方どうですか、回答を受けて。

 学生 ありがとうございました。学費が高すぎるというのは本当に思っていて、40年くらい前や50年くらい前は、物価の違いもあるんですけれど、いまより、安かったという印象が自分にもあるので、学生が大学をきちんと卒業できるような環境を整備してほしいなと、それに見合った学費が必要だと思いました。

 志位 いまのお話を聞いてつけくわえますと、政府が学費を上げていった理屈があるんですよ。「受益者負担主義」というもので、つまり大学で「益」を受けるのは学生だと、だから学生が負担して当たり前でしょうと、こういう理屈で上げていったんです。ところが、学生が大学で学んで「益」を受けるのは個人じゃないんです。社会全体の利益になるじゃないですか。学生が、大学でいろいろな勉強をして、社会に出て行っていろいろな分野で頑張る。これは社会全体の利益じゃないですか。そもそも憲法は教育を受ける権利を定めており、「受益者負担主義」は成り立ちません。

 だから、「受益者負担主義」ということで、個人が利益を受けるんだから、その分は払って当然だろうと、この考え方が間違いだということを私はうんと言いたいと思います。ヨーロッパなどでは「益」を受けるのは社会だから、費用は社会が負担する――学費は無償は当然だという議論になるんですね。それが当たり前だと思います。

 (つづく)


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