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2021年6月5日(土)

主張

相次ぐ軍拡要求

危険な米軍事戦略追従やめよ

 2022年度予算案の概算要求(8月末)に向け、政府・自民党内から、軍事費の大幅な増額を求める声が上がっています。アジア太平洋地域で中国と覇権争いをしている米国の軍事戦略に追従・加担し、日米同盟を飛躍的に強化するためです。中国が東シナ海や南シナ海などで繰り返している国際法違反の覇権主義的な行動は決して容認できません。しかし、そうした動きに軍事力の一層の強化で対抗すれば、危険な軍拡競争の悪循環をもたらすだけです。

GDP1%枠こだわらず

 自民党国防部会などは2日、「激変する安全保障環境に対応した防衛力の抜本的強化のための提言」を菅義偉首相に提出しました。

 提言は、国際情勢の特徴として「地域及び国際社会の主導権を巡る米中間の競争」を挙げ、「2000年以降、中国の国防費は10倍以上に膨らみ、今やわが国の約4倍」になるとして、「わが国は、日米同盟において一層主体的・積極的な役割を果たしていかなければならない」と強調しています。

 NATO(北大西洋条約機構)諸国はGDP(国内総生産)比2%以上の国防支出が目標にされているとし、「周辺国やNATO諸国の水準も念頭に防衛関係費を抜本的に増額する」よう求めています。

 岸信夫防衛相も、日本の軍事費がこれまで基本的にGDP比1%以内に抑えられてきたことについて「我々はGDPの対比で考えていることはない」「従来と抜本的に異なる速度で防衛力を強化しないといけない」と述べています(「日経」インタビュー、5月20日付)。

 こうした提言や発言は、4月16日の日米首脳会談で発表された共同声明で、日米同盟とインド太平洋地域の安全保障を一層強めるためとして、日本は「自らの防衛力を強化することを決意した」と明記したのに呼応したものです。

 バイデン米政権は5月28日、22会計年度(21年10月~22年9月)の予算教書を公表し、国防費として7529億ドル(約82兆8200億円)を要求しました。このうち、中国をにらんで米軍の長距離打撃能力などを強化する「太平洋抑止構想」(PDI)に51億ドル(約5600億円)を計上しました。

 米国防総省は今回の予算要求に関する説明で、中国を「米国と同盟・友好国に対する重大で長期的な安全保障上の脅威」とし、PDIは「米国の競争上の優位を維持する」ためだとしています。具体的には、沖縄への配備も想定される射程500キロ以上の地上発射型中距離ミサイルやトマホーク巡航ミサイル、敵のミサイル射程圏内にとどまり戦闘を展開する海兵隊の「スタンド・イン能力」などに予算を投じるとしています。

 同時に、同盟・友好国との統合部隊編成を重視し、日本については「両国の国防戦略の実行を一致させ、日米同盟の役割・任務・能力を将来の脅威に適合させるため密接に協力する」としています。

国民の暮らし支援に回せ

 日本の軍事費は21年度当初予算で約5兆3400億円に上り、7年連続過去最高を更新しています。予算をコロナ禍に苦しむ国民の支援に回すため、対米従属の異常な軍拡はやめるべきです。中国に対しては国際法に基づく批判を強めて外交的に包囲するとともに、米国の覇権主義も許さない立場を取ることが急務です。


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