2021年6月7日(月)
主張
「医療費2倍化」法
実施を許さない世論と運動を
「高齢者医療費2倍化法」が参院本会議で、自民・公明両党などの賛成多数で可決・成立しました。75歳以上の医療費窓口負担に初めて2割負担を導入する法律です。慢性的に病気を抱える高齢者の受診行動にブレーキをかける危険が国会論戦で浮き彫りになったにもかかわらず、成立を強行した菅義偉政権の姿勢は重大です。一方、負担増の実施は早くても2022年10月以降です。国民が「ノー」の声を上げればストップできます。秋までにある総選挙で菅政権を退陣に追い込み、政権交代を実現することが重要になっています。
容赦なく痛みを強いる
2割負担になる年収は、単身世帯200万円以上、夫婦世帯320万円以上で、約370万人が対象になります。75歳以上の窓口負担は現在原則1割(「現役並み所得」は3割)です。いまでも窓口負担は、通院の頻度が高い高齢者に重くのしかかっているのに、2倍化されれば大打撃は必至です。
政府は、「余裕」のある人を対象にしたと主張しますが、実施後3年間、負担の急上昇を抑える「配慮措置」をとることにしたのは、負担増の過酷さを認めているためです。2割負担で年1050億円の受診抑制を招くという試算もしています。高齢者に容赦なく痛みを強いる実態はごまかせません。
菅首相は受診抑制が「直ちに患者の健康への影響を意味しない」と強調しました。しかし、過去の窓口負担増で健康に悪影響を与えたことを示す調査・研究が野党の追及などで明らかになりました。治療が長期にわたる糖尿病患者などの受診率が抑え込まれ、病状が悪化し、入院に至ったケースも少なくないとされます。命にも直結する問題です。窓口負担増と健康との関係についての本格的な調査は、政府がやる気になればできるのに、それすらせず「負担増ありき」で進める姿勢は無責任です。
「若い世代のため」という菅政権の言い分も成り立ちません。今回の法律によって、軽減される労働者1人あたりの保険料は月平均33円です。給与が比較的低い若年労働者だと軽減額はさらに少なくなります。最も減額されるのは公費負担(年1140億円)です。公的医療への国の財政的な責任を大後退させることに全く道理はありません。高齢者と現役世代の負担を軽減するためには、歴代政権が減らしてきた国庫負担を元に戻すことがなにより必要です。
コロナ禍でもばく大な利益を上げている大企業や富裕層に応分の負担を求め、全世代の社会保障を拡充する改革に道を開く時です。
「2倍化法」に盛り込まれた国民健康保険料(税)引き上げを加速する仕組みを具体化させない自治体での取り組みも不可欠です。
有権者が一票の力示そう
コロナ対応で尽力している地域の医療体制を掘り崩す「病床削減推進法」(5月21日成立)を発動させないたたかいも急務です。東京都の小池百合子知事が推進する都立病院・公社病院の独立行政法人化は同法と軌を一にした動きです。東京都議選(25日告示)で、小池都政を支える自民、公明、都民ファーストに審判を下し、日本共産党を躍進させることが、都民の命と健康を守る最大の力です。
コロナ禍の教訓に学ばず医療の根底を壊す政治を変えるため、有権者が一票の力を示しましょう。