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2021年7月25日(日)

主張

陸上イージス代替

コスト青天井の計画中止せよ

 昨年6月に計画を断念した陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」(陸上イージス)の代替策として、菅義偉政権は同年12月に整備を決めた「イージス・システム搭載艦」の詳細について検討を進めています。しかし、この代替艦の総コスト(経費)が陸上イージスの約2倍に膨れ、1兆円を超えるとも指摘されています。コロナ禍で大きな打撃を受けている国民の暮らしや営業への十分な財政的支援や補償こそ必要な時に、あまりにも法外な額です。

「総額1兆円を超える」

 昨年6月、陸上イージスの計画が停止されたのは、配備候補地の地元自治体や住民への説明とは異なり、迎撃ミサイルから切り離されるブースター(推進装置)を自衛隊演習場内や海上に落とせないことが判明したためです。その改修には2千億円の追加コストが必要になるとされました。これを受け、菅政権は昨年12月、代替策であるイージス・システム搭載艦2隻の導入を閣議決定しました。

 報道によると、防衛省の担当課がこの閣議決定に先立つ昨年11月時点で、代替艦の総コストの試算を内部文書にまとめていました。同文書は、「30年間の維持整備コスト」を2隻で「3792億~3842億円+α」としていました。(「朝日」5月21日付)

 同省は2隻の建造費を4800億~5000億円以上と発表しており、維持費を加えると、総コストは「8592億~8842億円+α」になります。

 さらに、同文書が代替艦のミサイル実射試験のコストを「数百億円規模」と記していたことも分かり、総額1兆円を超える可能性が高いとも報じられています。(同5月28日付)

 防衛省は、同文書について「今後の検討議論に予断を与えるため公表することは困難」などとしつつ、存在は否定していません。

 陸上イージス2基の総コストは約4664億円と発表されていました。計画の断念はさらに2千億円の改修費がかかることが理由の一つでしたが、これを合わせても7千億円弱です。総コストは、代替艦が3千億円以上も高額です。

 しかも、陸上イージス導入の口実は「24時間365日、日本全域を切れ目なく防護することが可能になる」ということでした。しかし、代替艦が洋上でミサイル防衛に従事できる期間は年の3分の1程度とされています。これまでの政府の理屈からしても、代替艦の導入に道理はありません。

 岸信夫防衛相は代替艦について「経費が高ければ直ちに選択肢にならないものではなく、総合的に検討していかなければならない」と述べ、青天井なコストを容認する姿勢を示しています。

ロ社製のレーダーに固執

 コストの膨張は、米ミサイル防衛庁の圧力を受け、陸上イージス用として契約した米ロッキード・マーチン社製レーダーを代替艦でも使用することにし、船体の大型化などが必要になったためです。

 陸上イージスの日本配備については、米有力シンクタンクからハワイやグアム防衛のためという狙いがあけすけに語られていました。専門家からは「最新の極超音速兵器などを撃ち落とせない」との指摘も上がっています。

 まさに不要の兵器であり、計画は中止にすべきです。


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