2021年8月7日(土)
主張
辺野古サンゴ移植
埋め立て工事を直ちにやめよ
沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設をめぐり、埋め立て予定海域のサンゴの移植許可を県が撤回したことに対し、野上浩太郎農林水産相は5日に県の撤回処分を凍結する執行停止を決めました。県が撤回の正当性を主張する意見書を4日に提出してからわずか1日しかたっていません。結論ありきでまともな審査もせず、埋め立て工事の既成事実づくりを何より優先させた言語道断の決定です。
農水相の不当な執行停止
今回の決定は、防衛省沖縄防衛局が2日に行政不服審査法に基づき、県によるサンゴの移植許可の撤回を取り消す審査請求をするとともに、その結論が出るまで県の撤回処分を執行停止にする申し立てをしたのを受けたものです。
しかし、県の撤回処分は、許可の条件にした移植時期を沖縄防衛局が守らず、そのため県が移植作業の中止を行政指導したにもかかわらず、これにも応じなかったからです。防衛局の申し立てに道理はありませんでした。
しかも、農水相は、辺野古の新基地建設を推進する菅義偉内閣の一員です。沖縄防衛局の申し立ては行政不服審査法の悪用にほかならず、公平さをまったく欠き、同法の趣旨にも反します。
新基地建設に伴うサンゴの移植問題の経緯は、自然環境の保全を二の次、三の次にしてでも埋め立てを強行しようとする政府の姿勢を浮き彫りにしています。
沖縄防衛局は19年にサンゴの移植許可を県に申請しました。しかし、当時すでに、辺野古東側にある大浦湾の埋め立て予定海域に軟弱地盤が広範に存在することが判明していました。当初の埋め立て計画では工事を完成できないことは明らかで、移植の必要性はそもそもなくなっていました。
移植サンゴは生き残る可能性が低い上、約4万群体の大規模な移植計画であることから、県は移植先の選定方法などの説明を沖縄防衛局に求めました。しかし、十分な回答もありませんでした。
県が審査を継続中の20年2月に当時の農水相は突然、サンゴの移植を許可するよう是正指示を出します。同年4月には沖縄防衛局が、軟弱地盤の改良工事のため埋め立て計画の変更を県に申請します。
県は農水相の指示の取り消しを求めて提訴しますが、今年7月6日に最高裁で県敗訴の不当判決が確定します。しかし、5人の裁判官のうち2人が反対意見を述べました。その中で「(埋め立て計画の)変更申請が拒否されることになれば、サンゴ類の移植は無駄になるばかりか、移植されたサンゴ類の生残率は高くないことなどから、水産資源の保護培養という水産資源保護法の目的に反する」と指摘されたことは重要です。
今月にも変更申請を判断
県は判決を受け、移植を許可します。その際、サンゴが死滅しやすい水温の高い時期や台風の時期を避けるよう条件を付けました。ところが、沖縄防衛局はこれを無視し、7月29日に移植作業を強行しました。県は翌30日に作業中止を求めましたが、防衛局が拒否したため許可を撤回したのです。
新基地に反対する玉城デニー知事は今月にも埋め立て計画の変更申請について判断すると報じられています。菅政権は無意味なサンゴの移植はもちろん、埋め立て工事そのものを断念すべきです。