2021年8月28日(土)
主張
海兵隊汚染水放出
沖縄は米国の植民地ではない
在沖縄米海兵隊が26日、普天間基地(沖縄県宜野湾市)から、発がん性が指摘されている有機フッ素化合物(PFOS、PFOA)を含む汚染水を公共下水道へ放出しました。沖縄県や宜野湾市が排出に反対しているのを無視しての強行です。汚染水の取り扱いについて日米間の協議も続いていました。玉城デニー知事は同日、緊急の会見を開き、「米側が一方的に放出したことに激しい怒りを覚える」と抗議を表明しました。沖縄を植民地同然に扱う米軍の横暴勝手は断じて許されません。
「だまし討ち」と批判も
汚染水の放出計画は、メディアの報道を受け、在沖縄海兵隊が7月上旬に日本政府と協議していることを明らかにしていたものです。汚染水はこれまで日本の専門業者に焼却処分を委託していましたが、経費や時間がかさむことから、浄化装置でPFOSなどの濃度を低減した上で公共下水道に放出することにしたとされます。
県や宜野湾市は、従来通りの焼却処理を求め、放出に反対していました。県民の健康や環境に関わる問題にもかかわらず、米軍の財政的な都合だけを優先しているとの批判も高まっていました。日本政府も日米で協議中は放出しないよう求めていました。
7月中旬に日本政府や県が普天間基地に立ち入り、PFOSなどの濃度を下げる処理をしたとされる汚染水をサンプリング調査しました。しかし、その分析結果が明らかになっていないのに、海兵隊は放出を強行しました。しかも、政府や県への連絡は、放出の約30分前にメールを送り付けただけでした。これには県や市はもちろん、政府内にも「だまし討ちだ」と怒りの声が広がっています。
海兵隊は、処理した汚染水に含まれるPFOSなどの濃度は日本の暫定目標値よりも低いとし、「より安全できれいな環境を実現する」と主張しています。
しかし、デニー知事が会見で強調したように、日本では安全で確実な処理の仕方やその基準、処理が確実に行われたかどうかを確認する方法が定められていないのが実態です。しかも、今回、海兵隊が実施したという汚染水の処理が実際に行われたかを検証する手段もありません。
汚染水は、PFOSなどを含んだ泡消火剤を使った訓練で発生したものです。地元メディアは、下水道を含む米軍基地の光熱水費を在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)で日本政府が肩代わりしていることに触れ、「環境汚染を拡散させた上、その費用までわれわれの税金で負担するというのか。理不尽極まりない」と批判しています(琉球新報27日付)。
毅然とした対米姿勢こそ
米軍は汚染水を放出した26日、沖縄県うるま市の津堅島沖で、県や同市が反対しているパラシュート降下訓練を強行しました。前日の25日には、普天間基地の垂直離着陸機MV22オスプレイの部品落下事故を受け、県が原因究明までの飛行中止を求めたのに対し、海兵隊は拒否しました。
米軍のやりたい放題の背景に、菅義偉政権の対米追随の弱腰姿勢があるのは明白です。米軍の治外法権的特権を定めた日米地位協定の抜本改定をはじめ、主権国家として毅然(きぜん)とした立場で交渉することが求められています。