2021年9月8日(水)
コロナ禍の中の自公農政
日本共産党国会議員団農水部会長 田村貴昭衆院議員に聞く(上)
米価大暴落も策なし
総選挙で「農村の反乱」へ
新型コロナウイルス禍で大打撃を受けている農林水産分野でも政府の無策が顕著になっています。総選挙を控え、国会論戦の到達点と今後の課題について、日本共産党の田村貴昭衆院議員・国会議員団農水部会長に聞きました。(聞き手・北川俊文)
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―国会での農林水産分野での論戦について話してください。
田村 この間の国会で明らかになったのは、第一に、菅義偉自民・公明政権が、新型コロナウイルス禍で著しい需要減と価格低下に見舞われた第1次産業に対しても全く無策だったことです。第二に、コロナ禍で食料生産基盤の脆弱(ぜいじゃく)さがあらわになったにもかかわらず、既存の路線を改められない現政権の姿です。
この2点が顕著に表れたのが、米価暴落の問題です。
今、米の出荷の際、農業協同組合(JA)などが支払う前渡しの価格が各地で明らかになってきています。
米の生産費の平均は60キロ当たり1万5000円台です。しかし、前渡しの価格は、新潟の一般コシヒカリで前年比1800円減の1万2200円でした。福井は1万500円(2700円減)、三重は9500円(3100円減)まで下がりました。千葉では、あきたこまち(60キロ)を6000円台に設定するJAまで出ています。
私は国会で、「60キロ1万円を切る『米価暴落』となりかねない。ペットボトル1杯のお米が、ミネラルウオーターより安くなってしまう」と何度も警告しましたが、現実になりました。
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在庫が米価下押し
―なぜ、これほど米価が下がるのですか。
田村 新型コロナウイルスの感染拡大で、米の需要が激減したからです。外出や旅行の自粛、飲食店の休業や営業時間短縮など、外食需要が落ち込みました。一斉休校による学校給食中止も大きく影響しました。
実は、昨年秋、過剰在庫がすでに積みあがっていました。それを解消するには、2021年産の生産量を前年より36万トン(生産量の5%)減らす必要があるとして、政府は過去最大の作付け削減を打ち出しました。行政や農協を通じてなりふり構わず産地や生産者に実行を迫って、目標はほぼ達成されました。
しかし、コロナ禍が長期化し、需要の減少が続く中、在庫が当初見通しを20万トン前後上回って新年度に繰り越されることが分かり、21年産の米価を暴落させ、22年産にも影響を及ぼしかねない事態になったのです。
こうして、6月末の米の民間在庫は、適正とされる180万トンを大きく超え、219万トンにまで膨れ上がってしまいました。この過剰在庫が、米価を押し下げているのです。
食料自給率が最低
―どんな対策をとるべきですか。
田村 農民運動全国連合会(農民連)は昨年の早い段階から、「政府の責任で米を買い上げ、市場から隔離を」と求めていました。JAや自治体からも同様の要求が上がっていました。日本共産党の紙智子参院議員も私も国会で再三、「米を買い上げ、生活困窮者に供給せよ」「外国からの米の輸入を停止せよ」と要求しました。
流通業者も含め誰もが、今回は、政府も何らかの強力な対策をとるだろうと思っていました。しかし、政府が動かないまま、ここまできてしまいました。米価暴落で農家がどんなに困っていても、年間77万トンものミニマムアクセス(最低輸入機会)米の輸入をやめようとしないのです。
振り返ると、安倍晋三前政権は18年、米農家への戸別所得補償を廃止し、米の生産調整の配分をやめてしまいました。50年続いた「減反政策」をやめ、米の需給調整の責任を放棄したのです。政府は、紙議員や私に対し「農家が自分で需要に合わせて生産をすべきだ」と繰り返し答弁しました。まさに、自己責任論、新自由主義そのものです。
歴代自民党政権、自公政権の農政の結果、農業と農村の疲弊が進み、20年度の日本の食料自給率は、過去最低の37・17%となりました。農業従事者は15年から20年までの5年間で198万人から152万人へ、46万人も減少しました。日本の米を守り、農業と農村を維持していくには、もはや政権を代えるしか道はありません。
新しい政権めざし
―菅首相は自民党総裁選挙不出馬を表明しましたが。
田村 菅首相は、内閣支持率が過去最低水準へ落ち込む中で、国民の世論と運動に追い詰められて退陣を余儀なくされました。これは、菅政権だけでなく、長く続いた自公政治の破綻です。総裁選で誰が選ばれようとも、破綻した従来の政治の枠内では農業と農村に新しい展望は開けません。
総選挙で、自公政治そのものを退場させ、野党が結束して新しい政権をつくるために、市民と野党の共闘を進めましょう。特に、農村では、米価暴落に対する政府の無策に怒りが広がっています。16年の参議院選挙で東北5県と長野、新潟の1人区で野党候補が勝利した「東北の反乱」を上回り、全国で「農村の反乱」を実現しましょう。(つづく)
(3回連載。10・11日付に掲載予定です)