2021年9月18日(土)
主張
自民党総裁選
安倍・菅政治の転換はできない
自民党の総裁選が告示され、河野太郎規制改革担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行が立候補しました。国民の怒りを浴びて政権を投げ出した菅義偉首相の後継を決める総裁選ですが、4氏の政策や発言からは、安倍晋三前政権以来の政治を大本から転換する姿勢がありません。コロナ大失政への根本的反省も欠いています。日本の政治の行き詰まりは、自民党内で「顔」がかわっても打開できないことを示しています。
4人には共同の責任
4氏はいずれも9年間にわたる安倍、菅両政権で党と政府の要職にあった人物で、共同の責任を負っています。総裁選出馬に当たって「ぬくもりのある政治」とか「ていねいで寛容な政治」を目指すなどと主張しましたが、国民に説明しない、冷たい政治を支え、推進してきた自らの責任には一切触れませんでした。これでは説得力がありません。
焦点のコロナ対策では、菅政権は検査や医療、生活支援などに無為無策を続け、感染爆発を招きました。河野氏はワクチン担当の現職閣僚として、直接責任を負っています。ワクチン接種で供給不足と遅れが相次いだことに反省がありません。
岸田氏は政策に「健康危機管理庁」創設などを掲げています。しかし、安倍政権末期に与党の政調会長としてコロナ対策で後手にまわってきたことには言及していません。
経済対策では、岸田氏が「新しい日本型資本主義」といいますが、格差と貧困を拡大した政治を担ってきました。岸田氏の経済政策を経団連が全面支持しているように、大企業本位の立場を転換する姿勢はありません。高市氏が掲げる「サナエノミクス」は破綻した「アベノミクス」の焼き直しです。河野氏が「安全が確認された原発は活用」すると再稼働を容認しているのをはじめ、原発からの撤退には全員が背を向けています。
軍拡では各氏が競い合っています。高市氏は、軍事費を「GDP(国内総生産)の2%に」といい、岸田氏も「1%などの数字には縛られない」と主張、河野氏も「総額としては増やさざるを得ない」としています。岸田氏は安倍政権で外相を務めました。河野氏は安倍政権で外相と防衛相を経験しています。日米軍事同盟強化の推進者です。
改憲の推進でも4氏は共通しています。改憲路線を引き継ぐ立場は国民の声に逆らうものです。高市氏は最近の雑誌インタビューで自衛隊を「国防軍」にとまで公言しています。
安倍氏を「忖度」して
安倍・菅政治の著しい特徴だった国政の私物化や「政治とカネ」の疑惑で、岸田氏らは「森友」問題での再調査を考えないとするなど、安倍氏を「忖度(そんたく)」していることは大問題です。岸田氏は学問の自由を破壊した日本学術会議介入も撤回しようとしません。
世論調査では次の首相は安倍・菅政治を「引き継がないほうがよい」という声が6割近くです。(「朝日」14日付)
コロナ対策を議論する臨時国会を拒否し、総裁選に熱中する自民党に批判が高まっています。市民と野党の共同の力で、政権交代を実現することが急務です。