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4日に発足した岸田文雄内閣。自民党の役員人事に続いて、閣僚人事でも、数々の疑惑隠し、対米従属の外交姿勢、新自由主義推進など「安倍・菅直系政治」が鮮明です。
モリカケ・口利き…
疑惑のオンパレード
岸田首相は総裁選のなかで森友問題の再調査を否定してきましたが、人事でも「疑惑にふた」の姿勢を露骨に示しています。
党役員人事では、口利き・金銭授受疑惑で安倍政権での閣僚辞任に追い込まれた甘利明氏を新たな幹事長に据えたことをはじめ、政治資金規正法違反疑惑の小渕優子衆院議員を組織運動本部長に抜てきしました。
閣僚人事でも反省はありません。
再入閣の萩生田光一経産相・前文科相は、「加計学園」の獣医学部新設に関わり安倍晋三首相(当時)の意向を文部科学省に伝え、圧力をかけたとされる人物です。
松野博一官房長官も安倍側近の一人で、加計問題で当時の文科相として萩生田氏の内部文書に関する野党の調査要求を無視し、事実隠蔽(いんぺい)に終始。安倍元首相の疑惑に“ふた”をし続ける人物が政権の要衝を担います。
「政治とカネ」の問題では、鈴木俊一財務相は2007年、家賃が無料の議員会館に資金管理団体の「事務所」を置きながら、3千万円超の「事務所費」を計上し、政治資金規正法違反の「虚偽記載」の疑いをもたれています。
安保・外交
軍拡と同盟強化固執
安倍・菅政権による大軍拡・日米同盟強化路線が全く変わらないことは閣僚の布陣からも明らかです。防衛相には岸信夫氏が再任。憲法違反の安保法制に基づく「台湾有事」での軍事対応を明言し、軍事費についてはGDP(国内総生産)1%枠にこだわらない、との考えを繰り返し表明しています。敵基地攻撃に転用できる長距離巡航ミサイルの開発も進めるなど、「台湾有事」への安保法制の適用、敵基地攻撃能力を「有力な選択肢」とした岸田氏の姿勢と重なります。
新設された経済安全保障担当相には小林鷹之氏が就任。同相は、軍事的優位性を確保するための最先端技術の保護や半導体など戦略物資の確保で、米国と歩調を合わせ経済面で中国との対決を強める狙いです。
沖縄北方担当相に就任した西銘恒三郎氏。自民党の沖縄県連が、名護市辺野古の米軍新基地建設反対の公約を破り、容認にひるがえった“公約違反”を先駆けて推進した人物です。「人の話を聞く」と言いながら、岸田新内閣でも民意無視の新基地建設強行の方針に変わりはないことは明白です。
経済政策「転換」
結局、新自由主義継続
岸田首相は総裁選で「新自由主義的政策の転換」「新しい資本主義の構築」などを掲げました。その中身は何か。
岸田氏は6月、自ら主導して「新しい資本主義を創る議員連盟」を立ち上げました。発起人に甘利明党税調会長(当時)が就き、安倍晋三元首相と麻生太郎財務相(当時)を最高顧問に迎えました。「分配政策の強化が不可欠」という設立趣旨とは裏腹に、格差拡大を招いた「アベノミクス」と消費税増税を進めた張本人3氏が幹部に就くこと自体、議連の正体を示しています。
今回の人事では、この3氏が大きな影響を与えたと報道されています。党幹事長にはその一人である甘利氏が就任しました。経済産業相には安倍氏の側近といわれる萩生田光一前文科相、財務相には麻生派で、麻生氏の義弟の鈴木俊一党前総務会長が就任しました。
岸田内閣の経済政策の性格は、岸田新総裁就任の日の経団連・十倉雅和会長のコメントにも表れました。「岸田氏が唱える『新自由主義からの転換』と『新しい日本型資本主義』の構築は、(経団連が昨年11月に発表した)『。新成長戦略』と示した方向性と軌を一にしており、大変心強い」
「新自由主義的政策」の旗を振ってきた経団連。同「戦略」は新自由主義の行き詰まりを認めながら、処方箋として相変わらず、デジタル化と結んだ規制緩和などの新自由主義的政策を列挙しています。
日本共産党の志位和夫委員長は4日の党国会議員団総会でこう指摘しました。「岸田氏は『転換』といっても、中身はまったくない。そればかりか、やろうとしていることの実態は、新自由主義の継続・推進そのものです」
改憲・タカ派
ジェンダー平等 逆行
「憲法改正の実現に向けた項目は柱としてしっかりと立てる」。自民党政調会長に抜てきされた高市早苗氏は就任記者会見でこう述べ、安倍改憲への固執ぶりを露骨に示しました。岸田内閣には改憲・右翼団体「日本会議」と一心同体の「日本会議国会議員懇談会」(日本会議議連)のメンバーがずらりと並びます。
同議連の松野博一官房長官は、安倍政権の文科相時代、戦前に天皇絶対主義、男尊女卑を押し付けた教育勅語を「教材として用いることは問題としない」と明言。同議連の古川禎久法相は安倍首相(当時)に国会質疑で、日本の過去の侵略戦争を美化・正当化するという特異な歴史観をもつ靖国神社への参拝を迫りました。
岸田内閣の女性閣僚は3人(比率14・3%)です。国連女性機関(UN Women)が今年3月に発表した世界193カ国の閣僚の女性比率順位に照らすと120位相当。ジェンダー平等に逆行しています。
岸田首相は、急務となっている選択的夫婦別姓の法制化に対して「引き続き議論を」と述べ、安倍・菅政権を引き継いで“先送り”を表明。金子恭之総務相は、高市氏らとともに地方議員に選択的夫婦別姓反対を求める文書に名前を連ねています。