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2021年10月5日(火)

主張

組閣と衆院解散

国民に背向けた政権 終止符を

 岸田文雄内閣が発足しました。岸田首相は、臨時国会最終日の14日に衆院を解散し、19日公示、31日投開票の日程で総選挙を行う意向を明らかにしました。組閣当日に、首相が解散方針を示すことは前代未聞です。新内閣の顔ぶれを見ると、安倍晋三元政権・菅義偉前政権の骨格を受け継いでおり「安倍・菅直系」の布陣です。自民党内の政権たらい回しでは政治の中身が変わらないことは明白です。市民と野党の力で、総選挙で政権交代を実現することが急務です。

「安倍・菅直系」が鮮明

 新内閣の顔ぶれでは、茂木敏充外相や安倍氏の弟の岸信夫防衛相が留任し、文部科学相だった萩生田光一氏は経済産業相に横滑りしました。自民党副総裁に就任する麻生太郎前財務相の後任には麻生派の鈴木俊一元総務会長が就任しました。官房長官には安倍氏の影響が強い細田派の松野博一元文科相が就きました。13人を初入閣させたことを売り物にしていますが、先週の党役員人事で、安倍、麻生氏の盟友である甘利明氏を幹事長に据えたことと同様、「3A」支配が色濃く出ています。

 新設の「経済安全保障担当相」には、甘利氏にも近い小林鷹之元防衛政務官を起用しました。米国と中国の経済・技術対立などを意識した「経済安保」は菅政権が高く位置付けていたもので、菅路線の強化です。

 感染再拡大の懸念が消えないコロナ対策では、厚生労働相に後藤茂之元法務副大臣、経済再生担当相には山際大志郎元経産副大臣、ワクチン担当相には堀内詔子前環境副大臣を起用しました。顔ぶれは変わっても菅氏が作った「3閣僚」体制は維持されました。コロナ大失政への反省はあるのか。懸念は消えません。

 財務相に麻生氏に近い鈴木氏を起用したのは、年末の予算編成をにらんで、麻生氏の敷いた路線を変える意思がないことの表明です。2回にわたり消費税を増税し、軍拡最優先で福祉には冷たかった財政運営を変える姿勢はありません。岸防衛相の再任で、過去最大規模を更新し続けている軍事費の増額にさらに拍車がかかる恐れがあります。

 見過ごせないのは、安倍氏の国政私物化の象徴の一つである「加計学園」問題で、当時の文科相として解明に背を向けた松野氏の官房長官就任や、同疑惑に関与した萩生田氏の閣僚留任です。甘利幹事長は自らの口利き・金銭疑惑で説明責任を果たさず、麻生副総裁は「森友」疑惑で責任が問われています。疑惑にフタをする人物を起用した岸田首相の姿勢が問われます。

政権交代で新しい政治を

 改憲に固執し、過去の戦争を美化する「靖国派」で知られる政治家が党役員や閣僚に少なくないことも重大です。岸田首相は、9条に自衛隊を書き込むなどの改憲に取り組むことを公言しています。安倍氏に近い高市早苗氏が、安倍氏側近の下村博文氏の後任政調会長に就いたことは、改憲推進への執念にほかなりません。

 予算委員会での質疑もしないまま総選挙に突入するのは国会無視の暴挙です。説明をしない姿勢はまさに“安倍・菅流”そのものです。日本の政治を転換するには、国民に背を向ける自民党・公明党政治に終止符を打ち、政権交代を実現するしかありません。


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