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13日の参院本会議で代表質問に立った日本共産党の小池晃書記局長は、命、暮らし、営業を守る政治を実現するための「四つのチェンジ」を提案し、安倍・菅政治の転換を迫りました。岸田文雄首相は、国民の切実な要求や訴えに背を向ける冷たい答弁に終始しました。
ジェンダー
痴漢対策 取り組み本気で
小池氏は、「ジェンダー平等が当たり前となる社会をつくるのも政治の責任だ」と述べ、選択的夫婦別姓の実現や「痴漢ゼロ」などあらゆる女性に対する暴力の根絶を岸田首相に迫りました。
小池氏は、岸田首相が選択的夫婦別姓の早期実現を呼びかける自民党議連に名を連ねながら「引き続き議論すべき」と手のひらを返した対応をしていることを批判し、「政治家として、自らの言動に責任を持つべきだ」とただしました。岸田首相は「議論すべき問題」と繰り返すだけでした。
さらに小池氏は、最も身近な性暴力の一つであり、性犯罪である痴漢被害への対策を取り上げました。これまで痴漢は「ささいな問題」、あるいは「女性が注意すればすむこと」とされ、多くの被害者が泣き寝入りさせられてきましたが、実態は非常に深刻です。
小池氏は、昨年の日本共産党東京都委員会・ジェンダー平等委員会が実施した痴漢被害のウェブ調査で、初めて被害にあった年齢が18歳以下という回答が7割を超え、中・高校生の「通学中、ほぼ毎日被害にあう」との回答も目立ち、「痴漢は子ども、未成年への性暴力でもある」と指摘しました。
小池氏は被害後に「電車に乗ろうとすると過呼吸になり仕事をやめた」「頻繁なフラッシュバックに苦しみ続けている」などの声が多数寄せられたとして、「被害が一人ひとりの人生に大きな苦しみをもたらしている」と強調。痴漢被害への本気の取り組みを政治の課題にすべきだと訴え、国の責任による痴漢被害の実態調査を求めました。
岸田首相は「今年度、内閣府で痴漢を含めた若年層の性暴力被害の実態調査を行う予定」と初めて答えました。
気候変動
石炭火力発電 いつ撤退か
「気候変動は新型コロナウイルスなどとともに人類の危機だ」。小池氏は今年のノーベル物理学賞受賞者の真鍋淑郎氏の言葉を引用し、気候危機への岸田首相の認識をただしました。
小池氏は、岸田首相が「脱炭素社会の実現に向けて、国際社会を主導」と言いながら、日本が主要7カ国(G7)で唯一石炭火力からの撤退期限を持っていないと指摘し、「これでどうして、国際社会を主導できるのか」と批判。また、国連が石炭火力からの計画的な撤退を強く要請しているとして、「石炭火力からいつ撤退するのか。その期限を明確に答えよ」と迫りました。
岸田首相は「石炭火力のフェードアウトを着実に進める」と述べ、明確な撤退期限を示しませんでした。
米軍新基地
戦没者冒涜 土砂を採るな
小池氏は、沖縄県の辺野古新基地建設の埋め立てに沖縄戦犠牲者の遺骨が混じる県南部の土砂を使用する計画に、全国で怒りが広がっていると指摘。沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表が、自民党総裁選の候補者全員に出した公開質問状に誰も回答しなかったとして、「戦没者に対して救済の意識をもっていない人が日本をリードするのは、残念と言うより非常に悲しい」と語ったと紹介し、「この声にどうこたえるか」と迫りました。
岸田首相は、声をどう受け止めるのかについては答えず、「防衛省が適切に判断する」と述べるにとどめました。小池氏は「戦没者を冒涜(ぼうとく)し、遺族の心情をふみにじる土砂採取計画は撤回すべきだ」と強調し、「辺野古新基地建設の断念、普天間基地の閉鎖・撤去の決断」を強く求めました。
核禁条約
被爆者の声 耳傾けてこそ
小池氏は、岸田首相が所信表明で「被爆地広島出身の総理大臣」だと強調しながら、核兵器禁止条約に触れなかったことを批判。岸田首相が同条約に「核保有国が1カ国も参加していない」と述べたことへの反論として、条約発効へ国際社会を動かしたのは被爆者の訴えだったと指摘し、「核兵器の非人道性をどの国よりも理解する唯一の戦争被爆国がやるべきことは、条約に参加し、世界の国々や市民とともに核兵器国に核廃絶を迫ることではないか」と主張しました。
また、広島の被爆者でカナダ在住のサーロー節子氏が「市民や被爆者の声に耳を傾け、リーダーシップを発揮してほしい」と求めたことに触れ、「この声にどうこたえるか」と迫りました。岸田首相は、被爆者の声には言及せず、核保有国の参加がないとして条約参加に背を向けました。
民主主義
世論に背 危機打開望めぬ
小池氏は、岸田首相が「『信頼と共感』を得られる政治が必要」と述べる一方で、森友疑惑の再調査や「桜を見る会」の徹底的な説明などを求める世論に背を向けているとして、「『信頼と共感』を得られると考えるのか」と迫りました。
小池氏は、森友疑惑で命を絶った元近畿財務局職員・赤木俊夫さんの妻・雅子さんも、岸田首相が再調査に前向きだった当初の姿勢を突如一転させたことについて、「誰かから何か言われたのでしょうか」と不信感を示していると指摘。切実な真相解明を求める声をどう受け止めるのかとただしました。
岸田首相は、結論は出ていると述べ、「必要に応じて説明する」と再調査を拒否しました。
小池氏は「このままでは、安倍・菅政権と何も変わらない。民主主義の危機の打開など、到底望めない」と厳しく批判しました。
新型コロナ
病床削減計画を撤回せよ
小池氏は、「新型コロナウイルス感染症をどう抑え込むのか。政治の最大の課題だ」とのべ、ワクチンと一体での大規模検査、医療・保健所への支援、まともな補償の3本柱の対策を求めました。
小池氏は感染の伝播(でんぱ)を断ってコロナを封じ込めるためには、「大規模・頻回・無料」の検査体制の確立が必要だとして、「職場、学校、保育所などでの自主検査を大規模かつ無料で行えるように、国が思い切った補助を行うべきだ」と主張しました。
また、全国の保健所が90年代の852カ所から469カ所へ半減した結果、感染拡大のさいに保健所業務がひっ迫し、陽性と判定された人に連絡すら届かず、自宅で重症化する事例が相次いだとして、「保健所の数も職員の数も大幅に増やすべきではないか」と提案。自公政権が「地域医療構想」にもとづいて20万床の急性期病床を減らす計画を立て、「骨太の方針」でその「強化」「促進」をかかげていることをあげ、「岸田内閣が本当に『医療難民ゼロ』を実現しようというなら、それに反する『地域医療構想』と『骨太の方針』、消費税収を使った病床削減の仕組み、とりわけ、急性期病床を削減・縮小する計画を、ただちに撤回すべきだ」と迫りました。
岸田首相は、「地域医療構想」とは「地域の医療ニーズに合わせ、質の高い効率的な医療提供体制の確保を目指して取り組むものだ」などとのべ、病床を削減・縮小する計画を促進する考えをあらためて強調しました。
国民生活
疲弊は深刻 補償速やかに
コロナのもとで国民の生活と営業の疲弊は深刻です。小池氏は、持続化給付金・家賃支援給付金の再支給や、1人10万円を基本とした「暮らし応援給付金」を提案し、“まともな補償”を行うよう求めました。
また、コロナ禍で米価の大暴落が農村を襲っていると指摘。「昨年と比べ2割から3割下落し、1俵1万円を下回る銘柄も続出し、『このままでは米は作れなくなる』という悲鳴が全国の農村に広がっている」とコメ作りが崩壊しかねない深刻な実態を訴えました。
小池氏は、「米価の回復には過剰米を政府が買い入れ、市場から隔離する以外にない」と指摘。北海道と東北6県の農協中央会会長をはじめ、全国知事会や地方議会も一致している要求だとして首相に突きつけました。
岸田首相は、「政府備蓄米を需給操作のために運用することは制度の趣旨に合わない」と冷たく言い放ちました。
さらに小池氏は、「過剰在庫を理由に市場最大の減反拡大を農家に押し付けている一方で、国内需要の1割にも及ぶ77万トンものミニマムアクセス米の輸入を続ける。こんな不条理ともきっぱりと決別すべきだ」と主張しました。
新自由主義
分断生んだアベノミクス
小池氏は、岸田首相が所信表明で「新自由主義的な政策については、富める者と、富まざる者との深刻な分断を生んだ」と述べたことに触れ、「それがまさにアベノミクスの9年間だった」と指摘。大企業の内部留保は8年間で133兆円も増加する一方、働く人の賃金は22万円も減ったとして、「格差を拡大させたアベノミクスを反省し、経済政策を転換すべきだ」と迫りました。
小池氏は、格差拡大の大きな要因に、日本の不公平税制があると指摘。米国と比べても日本の株取引に対する税率が低く、所得が1億円を超えると負担率が逆に下がる実態を示しました。
小池氏は、経済同友会や経済協力開発機構(OECD)からも株取引の税率の引き上げが提案されてきたこともあげ、「なぜ(金融所得課税を)先送りにするのか」とただしました。岸田首相は「金融課税の見直しはさまざまな分配政策の一つ。賃上げに向けた税制の強化、下請け対策の強化をまずやるべきだ」などと苦しい言い逃れ。また小池氏が、世界62カ国が付加価値税の減税を実施しようとしていると紹介し、「経済危機の打開のためにも、格差是正のためにも、消費税を5%に引き下げるべきだ」と求めたのに対しては、減税の考えはないとしました。