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2021年11月7日(日)

主張

軽石の大量漂着

国の責任で被害の拡大を防げ

 小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」の噴火で噴き出した大量の軽石が沖縄県、鹿児島県に漂着し大きな被害をもたらしています。深刻な広域災害です。国は自治体と連携して被害の救援と拡大防止に全力を尽くすべきです。

漁業・観光の支援が急務

 産業技術総合研究所によると、8月13~15日にかけての今回の噴火は「明治以降に発生した日本列島における噴火の中で最大級」です。噴出した軽石が海流に乗って西に移動し、2カ月かけて南西諸島に漂着し始めました。浅い層の海水を冷却水などに利用している発電所、製鉄所、船舶に障害が起きる可能性があると同研究所は警戒を呼びかけています。

 沖縄では海岸、漁港、港湾が軽石で埋め尽くされる事態が各地で発生しています。船のエンジンをかけると海面を浮遊する軽石を吸い込んで故障するため、多くの漁民が漁に出られず、収入を断たれています。那覇市の卸売市場ではマグロの水揚げ量が前月比で3割程度減少し、年末の稼ぎ時を前にして不安の声が上がっています。

 養殖されていた魚が死ぬ事態も起きています。モズク、アーサ(アオサ)養殖への被害も懸念されています。

 観光業は海洋レジャーのキャンセルなどで打撃を受けています。サンゴをはじめ自然環境への悪影響も指摘されています。

 出漁できない漁民や養殖業者への財政支援、観光産業への支援を急がなければなりません。

 離島を結ぶフェリーが一部で運休せざるをえなくなっています。航路の安全を確保するとともに、離島住民の生活、医療、教育、経済活動に支障がないよう万全の対策をとることが欠かせません。

 鹿児島県与論町では島内の発電所にタンカーによる給油ができなくなりました。県は1カ月分の燃料備蓄があるとしていますが、港湾機能の早急な回復が求められます。

 沖縄県、鹿児島県は、港湾などにたまった軽石を重機ですくって回収する作業を進めています。海面を漂う大量の軽石を効果的に回収する技術については国土交通省が有識者会議で検討を開始したところで、なお試行錯誤の段階です。軽石はいったん除去しても潮の流れに乗って戻ってくることがあり、きわめてやっかいです。

 回収した大量の軽石の処分をどうするかを検討しなければならず、処分までの仮置き場の確保にも悩まされます。

 沖縄県の玉城デニー知事は、軽石の回収・除去を国の災害復旧事業に認定して財政支援をすることや、サンゴ礁など自然環境への影響調査や保全への支援、水産業・観光業をはじめ影響を受けた産業への対策を政府に求めています。

火山国としての備えを

 気象庁は人工衛星の画像解析から軽石と推定されるものが四国沖で検知されたとしています。四国、本州に到達すれば被害が拡大しかねません。国が監視を強め、軽石の漂流状況や予測について国民や関係自治体に遅滞なく情報を提供する必要があります。

 日本には世界の活火山の7%が集中しています。火山は多くの恵みを与えますが、これまでも大規模な被害をもたらしてきました。火山国にふさわしい備えがいっそう重要になっています。


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