2021年11月8日(月)
主張
再エネ普及の障害
乱開発を許さないルールこそ
気候危機打開のためには、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーの活用が不可欠です。
ところが、大手事業者などによって、地域住民の声を無視した、もうけ本位の開発による再エネの発電施設建設が全国各地でなされており、法律による規制などの対応が急がれています。
各地での被害が深刻に
大型太陽光発電(メガソーラー)や大型風力発電の施設を建設するための乱開発によって、森林が破壊され、土砂災害、住環境の悪化、健康被害などの危険を広げていることは大きな問題です。
宮城県丸森町耕野(こうや)地区の中山間地で計画されているメガソーラー事業もその一つです。東京ドーム約25個分に匹敵する面積内の山林を伐採する開発に、地元の住民たちは災害誘発や生活水源の枯渇などが懸念されると声を上げ、反対の運動が続いています。
4万キロワット以上の太陽光発電は国の環境アセスメント(環境影響評価)が義務づけられていますが、事業者は、事実上、同一の計画を約2・8万キロワットずつ二つに分け、アセスを逃れようとしました。
日本共産党の岩渕友参院議員が5月の国会質問でこの問題を取り上げ、梶山弘志経済産業相(当時)は、検討会を立ち上げて対応することを表明しました。
9月末、政府は太陽光発電と風力発電について、これまでの判断基準を変更して、設備の距離が離れていても、管理の一体性を中心に判断するなど、アセス逃れを防ぐ見直しを行いました。
一方で、森林法などの現行法は、大規模な伐採や土地の改変をともなうメガソーラーや風力発電の集中立地を想定していません。再エネの地域資源としての活用と大量導入との両立には、環境保全のための森林法の改正、土砂崩れの危険性も評価事項に加えるなど環境アセスの改善が必要です。
環境保全地区と建設可能地区の明確なゾーニング(区分)を住民の参加と合意のもとで自治体が行うことも強く求められます。
そのためには、地域のエネルギーとして、地域が中心となって開発や運営を担っていくことが欠かせません。自治体などのイニシアチブによって、住民の合意と協力にもとづいた地域の力を発揮し、利益が地域に還元され、環境破壊を起こさないような再エネの利用をはかることが大切です。
地域外や外国の資本による乱開発を防止することは、利益が域外に流出することを防ぎ、地域の産業として雇用や需要の創出につながります。再エネは、気候危機に対応する役割とともに自然環境にやさしいエネルギー資源としても期待されています。
既存の施設や未利用地で
森林など自然環境を守るためには、新たな開発ではなく、既存の施設や建築物、未利用地などの活用を推進することも重要です。
工場の屋根に太陽光パネルを設置して、エネルギー転換とコスト削減を実現した企業もあります。そのための固定価格買取制度の改善も必要です。このような規制のもとでこそ、再エネの導入を促進できます。
再エネは、一つ一つの発電量は小さいものの、日本中のどの地域にもあります。地域と住民の力に依拠して進めてこそ、本格的な普及が可能となります。