2021年11月10日(水)
主張
調布市陥没1年
大深度工事はきっぱり中止を
東京都調布市の住宅街で2020年10月18日、東京外かく環状道路(外環道)のトンネル工事地上部が陥没して1年がたちました。工事が止まっている今も地盤の緩みで家屋や地面に亀裂が生じています。地下40メートルより深い「大深度」の公共利用に地上地権者の同意を不要とした大深度地下法に基づく工事です。地上への影響はないとして工事を認可した国の責任は重大です。「安全神話」は崩壊しています。大深度地下工事を中止すべきです。
住民の財産権侵す法律
事業者の東日本高速道路(ネクスコ東日本)などは、陥没と地下工事の因果関係を認める一方、「特殊な地盤」と不適切な工法を原因に挙げました。流動化しやすい地盤で地下トンネルを掘るシールドマシンが土砂を取り込みすぎたとし、地盤の緩みはトンネル直上部だけと説明しています。
しかし、住民が独自に専門家に依頼した調査では、空洞の形成につながる多数の隙間が地下で見つかり、地盤の緩みはトンネル直上部以外にも広範囲に及んでいる可能性があると指摘しました。
住民団体の「外環被害住民連絡会・調布」は事故1年にあたってネクスコへの不信を表明する声明を発表し、事前ボーリング調査もせず「地表に影響ない」となぜ言い切れたのかと追及しています。
ネクスコは、地盤が緩んだとするトンネル直上部で地盤を補修する方針です。住民は少なくとも2年間の移転が必要とされます。費用補償はあるものの、長期間、自宅を離れることを強いられる負担、苦痛は深刻です。
陥没だけでなく、騒音、振動など家屋への影響を含めて事故原因を徹底究明し、被害者への補償には集団交渉も認めるなど誠実に対応しなければなりません。
外環道で今後掘削する地下ルートには陥没現場と同じような地盤条件の場所が5カ所確認されています。陥没は他の場所でも起こる可能性があります。工事再開など論外です。
大深度地下法は都市部地下の活用を狙って、01年に施行されました。地上部の用地買収は不要です。地下使用に伴う補償もありません。地上部地権者に同意を得ることすら要りません。
憲法は財産権を「侵してはならない」(第29条)と定め、私有財産を公共目的で利用する場合には「正当な補償」が必要であるとしています。外環道の大深度工事の認可取り消しを求める住民訴訟で原告は同法の違憲性を主張しています。大深度地下法は廃止すべきです。
住宅街の地下トンネル工事の安全確保と地下開発行為の規制、地権者への補償などに関する法令の制定が必要です。
リニア工事もやめよ
JR東海によるリニア中央新幹線建設でも大深度地下利用が認可されています。東京都と名古屋市など計50キロで外環道工事と同じシールド工法による大深度地下トンネル工事を行います。
JR東海は外環道の陥没事故を受け、事前の家屋調査を実施することにしました。しかし、地盤調査は不十分なままで、シールド工法は変えず、安全が確保できるとは到底言えません。大深度地下トンネル工事の危険性は外環道で明らかです。リニアの建設工事も中止が求められます。