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2021年11月13日(土)

主張

敵基地攻撃力保有

国民の命と暮らしは守れない

 岸田文雄政権は、安倍晋三政権が外交・防衛政策の基本方針として策定した「国家安全保障戦略」と、それに基づく「防衛計画の大綱」(大綱)と「中期防衛力整備計画」(中期防)を来年末までに改定しようとしています。大きな狙いの一つは、相手国のミサイル発射拠点などを直接たたく「敵基地攻撃能力」の保有に踏み出すことです。際限のない軍拡につながり、北東アジアの軍事緊張をかつてなく高めることになる憲法破壊のたくらみです。

岸田氏は「必要」と主張

 岸田首相は就任後初の国会での所信表明演説で、国家安保戦略、大綱、中期防を改定し、その中で「さらなる効果的措置を含むミサイル防衛能力など防衛力の強化に果敢に取り組む」と宣言しました(10月8日)。これを受け、内閣の国家安全保障会議で「いわゆる敵基地攻撃能力の保有を含め、あらゆる選択肢を検討する」ことを確認しています(同月19日)。

 自民党も衆院選の政権公約で、新しい国家安保戦略などを「速やかに策定」し、敵基地攻撃能力についても「相手領域内で弾道ミサイル等を阻止する能力の保有を含めて、抑止力を向上させるための新たな取り組みを進める」と明記しました。

 国家安保戦略は、集団的自衛権の行使容認も念頭に置いた「積極的平和主義」を打ち出したもので、2013年末に安倍政権が初めて制定しました。これに合わせ、軍事力の在り方や水準を示す大綱と、その具体的な内容や規模を定める中期防も改定されました。大綱はこの時すでに、「弾道ミサイル発射手段等に対する対応能力の在り方についても検討の上、必要な措置を講ずる」とし、敵基地攻撃能力の保有にも道を開いていました。

 その後、集団的自衛権の行使を可能にした安保法制の成立を踏まえ、大綱と中期防は18年末に再び改定され、ステルス戦闘機を搭載できるようにする大型護衛艦の空母化や、巡航ミサイルの導入などを盛り込み、事実上の敵基地攻撃能力の保有を進めています。

 岸田氏は今年3月、安全保障に関する提言を発表し、「相手領域内でのミサイル阻止能力、すなわち、敵のミサイル発射能力そのものを直接打撃し、減衰させることができる能力を保有することが必要」だと露骨に主張しています。今月1日の会見では「さまざまな選択肢の一つとしてしっかり議論していく」と述べていますが、単なる「議論」でないことは明白です。

 敵基地攻撃能力を本格的に保有しようとすれば、大軍拡は必至です。自民党が衆院選の公約で、現在、5兆3千億円に上る軍事費について、その2倍超に当たるGDP(国内総生産)比2%以上も念頭に増額を目指すと掲げたことと無関係ではありません。

世論と運動を強め阻止を

 岸田首相は、敵基地攻撃能力保有の検討は「国民の命や暮らしを守るため」と繰り返しています。

 しかし、相手国の地下や移動発射台などにあるミサイルの位置を全て把握し、破壊することは不可能です。たとえ一部を破壊できたとしても、残ったミサイルによるいっそうの攻撃を覚悟しなければなりません。

 世論と運動を強め、岸田政権の企てを阻止することが必要です。


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