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2021年11月18日(木)

主張

核兵器先制不使用

岸田政権の反対姿勢許されぬ

 松野博一官房長官が先週の記者会見で、核保有国による核兵器の先制不使用宣言を否定する態度をとったことが批判を呼んでいます。核兵器使用の可能性を少しでも軽減させる措置に異を唱えることは、唯一の戦争被爆国の政府としてあるまじき立場です。岸田文雄政権は姿勢を改めるべきです。

積極的な部分的措置

 バイデン政権が2022年に策定する新しい核兵器方針「核態勢の見直し(NPR)」に先制不使用宣言が盛り込まれるかどうかが焦点の一つになっています。日本や英、仏などは宣言しないよう水面下で働きかけていると報じられました。10日の記者会見で問われた松野氏は、働きかけの有無には答えず、全ての核保有国が「同時に行わなければ有意義ではない」と一国の先制不使用宣言を否定しました。

 バイデン氏はこれまでも米国の核兵器の「唯一の目的は核攻撃に対する抑止と報復であるべきだ」と述べてきました。核兵器大国のアメリカが「核兵器のない世界の平和と安全」(オバマ元大統領)をめざす姿勢を改めて明確にし、先制不使用を宣言すれば、核軍縮を後押しすることになるでしょう。

 現在、米ロあわせ約2千発の核兵器が常時すぐに発射できる態勢にあります。人為的ミスや装置の不具合から、核使用の一歩手前まで進んだことが過去何度もありました。「先に使われる恐れ」がなくなれば、こうした態勢の解除にもつながります。配備された核兵器を減らす条件も拡大します。停滞する核軍縮交渉にも前向きな影響を及ぼすことになります。

 「核兵器のない世界」が部分的措置の積み重ねだけで実現できないことは、歴史が証明しています。核兵器廃絶を中心にすえた努力が必要であり、核兵器禁止条約はその重要な成果です。同時に、廃絶をめざす過程で、核兵器使用の危険性を減らす措置はそれ自体、積極的な意義があります。

 日本共産党は10年の核不拡散条約(NPT)再検討会議への書簡で、核兵器廃絶の国際交渉の開始とともに、「核軍縮の個々の部分的措置を前進させることは重要」と述べ、先制不使用などの措置の実現を求めてきました。

 もちろん、先制使用でなく、報復なら核兵器を使っても良いということではありません。壊滅的で非人道的な結果をもたらす核使用は、いかなる場合でも絶対に許されません。

 日本政府は、オバマ政権の核政策見直しの際(16年)にも「安全保障上の懸念」を理由に先制不使用宣言に反対しました。再びこれを阻もうとする岸田政権の立場が厳しく問われます。

核軍縮交渉は重要な節目

 10月の国連総会第1委員会(軍縮・国際安全保障問題)で、核兵器禁止条約発効を歓迎し署名・批准を呼び掛ける決議案に岸田政権は反対しました。「被爆地広島出身の総理大臣として、私が目指すのは、『核兵器のない世界』です」(岸田首相の所信表明演説)と言いながら、核兵器禁止条約の署名・批准を拒んでいることに国内外の批判が集まっています。

 22年1月にはNPT再検討会議が開かれ、3月には核兵器禁止条約第1回締約国会議も開催されます。国際的な核軍縮交渉の重要な節目を迎える中、世論と運動を広げることが強く求められます。


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