2021年11月27日(土)
自民、赤字企業から献金
20年政治資金報告 コロナ禍の影響でる中
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新型コロナウイルスの感染拡大で多くの企業や商工業者が減収・赤字を余儀なくされた昨年。自民党側は赤字を計上した大企業からも多額の献金を受け取っていたことが26日、総務省が公表した2020年分の政治資金収支報告書でわかりました。(「政治とカネ」取材班)
収支報告書によると、自民党は政治資金団体「国民政治協会」(国政協)を通じたものとあわせて23億3831万円の企業・団体献金を20年に集めています。
前年の19年は約24億1994万円でした。昨年、新型コロナで経済活動に深刻な影響が出たなか、企業献金は8160万円ほどの減少にとどまり、ほぼ横ばいです。
国政協に献金した大企業では、航空、鉄道、自動車を中心に少なくとも20社が20年度決算で赤字を計上していました。
このうちJR東日本、JR東海はどちらも2000万円ずつ献金しており、19年と同額でした。JR東日本は20年度に、5779億円の赤字を出しています。JR東海も同年度に2015億円の赤字でした。両社とも民営化後、初めての赤字です。
両社とも元は国鉄で、極めて公共性の高い企業です。さらにJR東海はリニア中央新幹線の建設で、3兆円の財政投融資を受けています。これにより同社は低利で長期・固定の資金を確保し、金利上昇リスクを回避できたとしています。政治献金は公的資金が還流した形となります。
本紙の取材にJR東日本は「特定の政党の件についてはお答えできない」とし、JR東海は「回答を差し控える」としています。
国支援企業が自民に献金
日本航空は800万円 人件費削った全日空も
2020年度に新型コロナの感染拡大による影響で赤字を出したのに、国政協に献金していた鉄道会社はほかにもあります。
関東圏を走る私鉄では8社が赤字にもかかわらず20年に献金。このうち、小田急、西武、東急が450万円ずつなど前年と変わらず献金していました。
近畿圏の私鉄も前年と同額の献金をしており、赤字の近鉄が450万円などとなっています。
新型コロナは航空業界も直撃しました。20年度に日本航空は再上場以来最大の2866億円もの赤字を出しました。政府は航空業界に着陸料や航空機燃料税など公租公課の支払い猶予といった支援策をしています。
同年に日本航空は国政協に800万円を献金。前年から200万円減らしたことについて同社は「当時の経営状況を踏まえて総合的に判断した」としています。
全日空は過去最大となる4046億円の赤字を出すなかで、人件費など固定費を5900億円削減しました。他方で、同社は国政協に前年から800万円減らしつつも300万円を献金しています。
自動車では、日産が20年度に4487億円の赤字を計上。赤字は2期連続ですが、それでも前年度比700万円減の3000万円を献金しました。
三菱自動車は3123億円もの赤字にもかかわらず、前年から440万円増額して2100万円でした。マツダは100万円で額は変わりませんでした。
昨年、法令違反が発覚し富山県から業務停止命令を受けた製薬会社の日医工は268万円となっており、前年より13万円増額していました。
赤字の企業からも献金を得る一方で、自民党は昨年だけで172億円余の政党助成金を受け取っています。
企業が業績悪化し、国民生活が苦境にあるなか、自民党は“バブル経済”であるかのように潤沢な政治資金を集めている形です。