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2021年12月5日(日)

財政法に反する大軍拡

補正予算案に過去最大7738億円

辺野古埋め立て追加 軍需産業に前金払い

 岸田文雄政権は2021年度の補正予算案に過去最大の軍事費7738億円を計上しました。防衛省によると、補正後の同年度の軍事費は6兆1078億円となり、初めて6兆円を超えます。GDP(国内総生産)比は約1・09%で、歴代政権が目安としてきた1%を突破します。(斎藤和紀)


グラフ:補正予算を含む軍事費の推移

 重大なのは、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設に801億円を計上したことです。埋め立て区域南側(辺野古側)に土砂を投入する工事の追加分に充てられます。補正予算に盛り込んだ理由について、防衛省の担当者は「思ったより工事が進んでおり、一日も早い返還を達成するため工事を着実に進める」としています。

完成見通しなく

 同基地建設をめぐっては、沖縄県の玉城デニー知事が11月25日、大浦湾側に広がる軟弱地盤の改良工事に伴う設計変更申請を不承認としています。申請の対象区域外であることを理由に辺野古側の埋め立て工事を進めても、基地は「完成の見通しがない」(デニー知事)のが現状です。政府は県の判断に従い、工事を中止すべきです。

 財政法は、補正予算への計上を当初予算の作成後に生じた「特に緊要な経費の支出」(29条)に限定しています。完成の見通しがなくなった下で辺野古の関連経費を計上するのは、財政法の趣旨からも成り立ちません。

 補正予算を組んでまで基地建設を加速させるのは、「県や県民が反対しても断固進める」という岸田政権の姿勢を示すことがねらいとみられます。

中小は苦境でも

 補正予算案で最も大きな比重を占めるのは、過去に契約した艦船・航空機の調達や建設工事の分割払いである「歳出化経費」です。全体の約64%を占める4934億円に上ります。とりわけ、新型コロナウイルスの影響で兵器製造企業の経営が悪化し、納期が遅れるリスクがあるとして、4287億円をこうした企業への前金払いに充てるとしています。経団連の防衛産業委員会など防衛関連4団体が9月10日に岸信夫防衛相に対し、「防衛関係企業の資金繰り」に関する施策を「柔軟かつ効果的に講じる」よう求めており、軍需産業界の要求に応えるものです。コロナ禍でさまざまな業種の中小企業、個人事業主が経営難に直面しています。業種を問わず支援する持続化給付金等の再支給には背を向ける一方、軍需産業には手厚い支援です。

ツケ回し928億円

 ミサイルや航空機などの新規調達にも巨額の予算を投じています。具体的には、迎撃ミサイル・パトリオット改良型(441億円)やP1哨戒機(3機・658億円)、C2輸送機(1機・243億円)などです。8月の22年度概算要求から補正予算に前倒しするものです。「安全保障環境が厳しさを増している」ことを強調していますが、概算要求でも同じ理由を挙げており、「特に緊要な経費」とは言えません。

 こうした兵器の新規調達に伴い、新たに928億円が将来にツケ回しされます(「新規後年度負担」)。近年、後年度負担は拡大の一途をたどっており、財政の硬直化を招いています。地域の緊張を高め、財政法にも反する補正予算への軍事費計上は撤回すべきです。


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