2021年12月7日(火)
主張
岸田首相所信表明
危険な政治加速する姿示した
臨時国会が召集され、岸田文雄首相が所信表明演説を行いました。「新しい時代を切りひらく」「新しい資本主義」などと「新しさ」をさかんに強調しました。国民の批判を浴びて行き詰まった安倍晋三・菅義偉政権との「違い」を意識したものですが、政治の中身は基本的に「安倍・菅政治」の継承です。重大なのは、それにとどまらず改憲や軍事力の増強などでは「新しい」危険な姿勢をあらわにしていることです。国民の願いに逆らう岸田政権を包囲する国民的な運動を広げることが急務です。
「新しさ」の看板を掲げ
岸田首相は所信表明演説で「新しい資本主義」をはじめ「新時代開拓」「未来」などの言葉をちりばめました。しかし、具体的に語ったことは、第2次安倍政権から9年間続いた「古い政治」の看板の掛け替えが目立ちます。
「新しい資本主義」では、「まずは、成長戦略」と主張し、「デジタル」「経済安全保障」の名による大企業への支援を強く進める立場を明らかにしました。国民への「分配」に触れたのは、「成長のための大胆な投資」をさんざん語った後です。賃上げ規模も現場の求める水準からかけ離れています。大企業ばかりが空前のもうけをあげた一方、賃金が抑え込まれた「アベノミクス」の二番煎じであることは隠せません。
コロナ対策で医療・検査体制などの強化を掲げました。しかし、今夏、感染爆発で国民を危機にさらした前政権の対応のどこに問題があったのか、分析や反省はありません。誤りを直視することなく、有効な対策はとれません。必要な病床を確保するとはいっても公立公的病院の病床削減をやめようとしません。オミクロン株の感染が世界で急速に広がる中、万全の対応ができるのか不安は消えません。国民の暮らしの支援策の柱である10万円の給付金も必要な人に届く対策にはなっていません。「手厚い支援」の内実が問われます。
国民の不信が消えない「森友学園」「加計学園」「桜を見る会」疑惑や河井克行元法相夫妻の大規模買収事件などについては一切説明せず、「政治とカネ」と国政私物化になんら反省のない立場を浮き彫りにしました。日本学術会議への人事介入も言及しません。
沖縄県の辺野古米軍新基地建設では、「唯一の解決策」と述べ、県民の声に逆らい強行する構えです。「丁寧で寛容な政治」「車座の対話」などとは相反するものです。
これまで「安倍・菅政治」で実現したくてもできなかった政策を推進・拡大することも随所に盛り込まれました。
歴代政権が保有は憲法違反としてきた「敵基地攻撃能力」について、「あらゆる選択肢を排除せず」「スピード感をもって」軍拡路線の強化を明言したことは、極めて重大です。安保法制強行に続き、憲法解釈を百八十度変更する立憲主義破壊の企ては許されません。
今こそ9条生かせの声を
演説では「憲法改正」の章をたて、国会での積極的な議論と並行し、「国民理解のさらなる深化」を呼びかけました。踏み込んだ表現です。自衛隊を憲法に書き込む9条改憲の加速が狙いです。軍拡と一体の「戦争する国」づくりを阻止し、9条を生かす政治に転換するために、「草の根」からの世論と運動を強める時です。