2021年12月9日(木)
主張
辺野古新基地
沖縄に強権振るう暴挙やめよ
沖縄県の米軍普天間基地(宜野湾市)に代わる名護市辺野古の新基地建設をめぐり、玉城デニー知事が防衛省沖縄防衛局の設計変更申請を不承認にしたことを受け、同局が対抗措置として、行政不服審査法を悪用し、斉藤鉄夫国土交通相に不服審査請求をしました。しかし、「国交相は、内閣の一員として辺野古新基地建設を推進する立場にあり、審査庁として公平公正な判断を行うことは事実上不可能」(デニー知事、7日の記者会見)です。沖縄に問答無用の強権を振るう暴挙はやめるべきです。
厚顔無恥の出来レース
沖縄防衛局の設計変更申請は、埋め立て予定海域で見つかった軟弱地盤の改良工事を行うためのものです。デニー知事は11月25日、▽地盤の安定性にかかわる最も重要な地点で必要な調査がされていない▽ジュゴンなど環境への影響や保全対策が十分検討されていない▽埋め立て地の利用開始時期も不確実であり、普天間基地の危険性の早期除去にはつながらない―などを理由に不承認にしました。これに対し、沖縄防衛局は今月7日、不承認の取り消しを求める不服審査請求を行いました。
行政不服審査法を使った沖縄防衛局の対抗措置は、同法に反する違法行為です。
同法は、公権力の不当な行使から「国民の権利利益の救済を図る」ことが目的です。安倍晋三・菅義偉政権を継承し、辺野古新基地建設を「唯一の解決策」とする岸田文雄政権の下、埋め立て工事を強行しているのが沖縄防衛局です。同局が一般の「国民」を装って、閣僚である「身内」の国交相に審査請求をし、デニー知事の不承認処分を取り消そうなどというのは、厚顔無恥な「出来レース」に他なりません。
新基地建設強行のための行政不服審査法の悪用は、安倍・菅政権でも繰り返されてきました。
安倍政権下では、2015年に当時の翁長雄志知事が辺野古の埋め立て承認を取り消した際と、18年に県が改めて埋め立て承認を撤回した際、沖縄防衛局が国交相に審査請求をしました。菅政権でも今年7月、デニー知事がサンゴの移植許可を取り消した際、同局が農林水産相に申し立てています。
こうしたやり方は、行政法の専門家などから厳しく批判されてきました。全国知事会も6月、沖縄県の提案を受け、審査請求をされた政府が知事の処分を取り消す「裁定的関与」を地方自治の保障の観点から見直すことを求めています。
岸田政権が安倍・菅政権と同様、「聞く耳」を持たないことは明らかです。
工事完成の見通しなし
これまで沖縄防衛局の審査請求では、結論が出るまで知事などの処分の効力を止める執行停止を同時に申し立て、短期間で認められると工事を再開してきました。しかし、今回は執行停止を申し立てていません。執行停止にしても知事の承認は得られないからです。審査請求で不承認が取り消されても承認の効力は発生しません。
知事は会見で、最深で水面下90メートルに及ぶ軟弱地盤の改良について「そのような工事をした実績も機材もない」と述べ、見通しのないことを強調しています。今こそ、新基地建設断念、普天間基地の即時閉鎖・撤去を求める世論と運動を大きくすることが必要です。