日本共産党の志位和夫委員長が9日の衆院本会議で行った代表質問は次のとおりです。
新型コロナのオミクロン株への対応について
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私は、日本共産党を代表して、岸田総理に質問します。
まず、新型コロナのオミクロン株への対応について聞きます。医療崩壊をもたらしたデルタ株への対応の失敗を厳しく反省し、最悪の事態を想定して、水際対策の強化、検査・医療体制の強化など、あらゆる手だてをとることが必要です。2点にしぼって質問します。
病床確保を求めながら、病床削減を推進する矛盾した政策を改めよ
第一は、医療機関に病床確保を求めながら、病床削減を推進するという矛盾した政策をただちに改めることです。
総理は、所信表明で、「公立公的病院に、法律に基づく要請を行い、新型コロナの専用病床化を進める」とのべました。そう言いながらなぜ、「地域医療構想」の名で430もの公立公的病院をリストアップして統廃合計画を進め、消費税を財源にして20万床もの急性期病床の削減を進めるのか。説明がつかないではありませんか。
病床削減計画を中止し、病床の抜本的拡充にかじを切るべきではありませんか。
答弁を求めます。
ワクチン――3回目接種の思い切った前倒し、ワクチン格差解消への真剣なとりくみを
第二は、ワクチン接種の問題です。総理は、所信表明で、3回目のワクチン接種を「できる限り前倒し」すると表明しました。わが党は、政府が、安全性と供給への責任を果たしながら、思い切った前倒しを決断・実施することを強く求めます。
同時に、富裕国と貧困国とのワクチン格差の解消に真剣にとりくむ必要があります。「だれもが安全にならない限り、だれも安全ではない」。これはデルタ株の痛切な教訓であり、オミクロン株の出現でもその重要性が示されました。総理、途上国での十分なワクチン供給のために、ワクチンに関する「知的財産権」の保護義務を一時免除するという世界100カ国以上が求めている提案を、日本政府として強力に支持することをはじめ、ワクチン格差解消へのイニシアチブを発揮すべきではありませんか。
答弁を求めます。
補正予算案――二つの問題点を問う
岸田政権が提出した補正予算案について、二つの角度から聞きます。
「困っている人に届かない」――現金給付案の抜本的見直しを
第一は、コロナで疲弊した暮らしと営業の苦境を救うものとは程遠いという問題です。
個人向けの現金給付案の最大の問題点は、コロナで困窮している人への支援が住民税非課税世帯に限定され、「困っている人に届かない」ことにあります。
東京23区に暮らす単身世帯の場合、年収100万円以下にならないと住民税非課税になりません。政府案では、年収100万円~200万円で働かされているワーキングプアと呼ばれる方々さえ、現金給付の対象外になってしまいます。
総理は、10月の所信表明で、「コロナでお困りの方々を守るための給付金」を公約しましたが、コロナで困窮に陥っている非正規労働者を、生活に困っていない状態と見なしているのですか。給付金は、生活に困っている方々、コロナで収入が減った方々を広く対象にして支給すべきではありませんか。
答弁を求めます。
「事業復活支援金」の2倍化、家賃支援給付金の再支給で公約を果たせ
事業者向けの給付金について、総理は、「持続化給付金・家賃支援給付金の再支給」を約束してきました。補正予算案では、「事業復活支援金」が計上されていますが、その予算規模は2・8兆円と、持続化給付金の実績5・5兆円の半分にすぎません。しかも今年1月から10月の時期の売り上げ減少は対象とされていません。しかし1月から10月といえば、そのほとんどの期間で緊急事態宣言が出され、多くの事業者が深刻な打撃をこうむった時期です。この時期を対象にしないのは、あまりに不合理ではありませんか。
コロナ関連の経営破綻は3カ月連続で過去最悪を更新しています。過剰な債務を抱える事業者も増えており、融資だけで支えるのはもはや限界です。総理、「事業復活支援金」を少なくとも2倍にし、家賃支援給付金を再支給し、国民への公約を果たすべきではありませんか。
答弁を求めます。
あまりに不十分な看護師、介護士、保育士などの賃上げ――抜本引き上げを求める
総理は、看護師、介護士、保育士などの賃上げを公約してきました。しかし、補正予算案で具体化されたものは、あまりに不十分な内容です。
看護師の賃上げは月4000円。しかもコロナ医療などに従事している人に限られ、全体の半分程度しか対象になりません。総理、「月4000円で、看護師が集まると思っているのか」という現場の怒りの声にどう答えますか。賃上げ額を大幅に引き上げ、対象を医療従事者全体に広げるべきではありませんか。賃上げを言いながら診療報酬の引き下げを行うなど言語道断であり、引き上げこそ必要ではありませんか。
介護士、保育士などの賃上げは月9000円。総理、「一桁足らない」という現場の批判の声にどう答えますか。全産業平均との格差――月7万円から8万円を埋める引き上げを行うことを目標にすえるべきではありませんか。
答弁を求めます。
台湾企業に4000億円の補助金――半導体確保はユーザー企業の自己責任で
第二は、大企業と軍事費に異常な大盤振る舞いの予算案となっていることです。
補正予算案には、「経済安全保障」の名で、半導体製造で世界最大手の台湾企業に4000億円もの補助金をつぎ込む前代未聞のバラマキが計上されています。
しかし、本来、半導体の安定確保は、電機や自動車などのユーザー企業の自己責任で行うべきものです。コロナのもとでも電機・自動車大企業の内部留保は54兆円にも膨れあがっています。そのごく一部を半導体確保のための投資にあてればすむ話ではありませんか。国民の税金で支援するなどということは、到底、国民の理解を得られるものではないと考えますが、いかがですか。
過去最大の軍事費7738億円――財政民主主義の趣旨から大きく逸脱
補正予算案には、過去最大の軍事費7738億円が計上されています。当初予算と合わせますと軍事費は初めて6兆円を超えることになります。しかも今回は新規に導入する多額の正面装備費が含まれています。
しかし、そもそも補正予算案は、財政法で規定しているように、大規模災害への対応など、「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要になった経費の支出」について作成するものです。今回のような軍事費の計上は緊急を要するものではなく、財政法と財政民主主義に反するものであることは明らかではありませんか。
答弁を求めます。
大企業と軍事費への異常な大盤振る舞いをやめ、コロナで苦しむ国民の暮らしに
大企業と軍事費への異常な大盤振る舞いをやめ、コロナで苦しむ国民の暮らしにあてるべきです。
消費の喚起というなら、コロナのもとでも大もうけをしている富裕層と大企業に応分の負担を求め、消費税を5%に減税すべきです。総理の答弁を求めます。
気候危機――石炭火力の新増設は、「1.5度以下」と根本的に矛盾する
英国で開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議は、「グラスゴー気候合意」で「気温上昇を1・5度に制限する」ための決意を、参加国の総意として確認しました。そこで総理に聞きます。
日本政府として「1・5度以下」達成に責任があるという認識ですか。そういう認識だとしたら、なぜ首相のスピーチで石炭火力の撤廃について一言も触れなかったのですか。2030年度も電源の19%を石炭火力に頼り、九つもの石炭火力の新増設を進めることは、「1・5度以下」と根本的に矛盾すると考えませんか。
明確な答弁を求めます。
選択的夫婦別姓――自民党議員のうちの28%の反対のために先送りでいいのか
総選挙での党首討論で、選択的夫婦別姓に反対したのは、総理ただ一人でした。総理は、半年前には自民党の夫婦別姓推進議連の「呼びかけ人」だったのに、総理になると反対にまわる。それは自民党内の一部の強い抵抗に、総理が屈したということでしょうか。
しかし、自民党内でも強い抵抗はもはや少数派です。自民党の衆議院議員のうち、候補者アンケートで選択的夫婦別姓に「反対」と回答したのは261人中73人、28%にすぎません。自民党内のたった28%のために選択的夫婦別姓がいつまでも先送りされていいでしょうか。総理、自民党総裁としてのイニシアチブを発揮し、いいかげん推進の方針を決めるべきではありませんか。それができないというのであれば、党議拘束をはずして、ただちに民法改正案を採択しようではありませんか。いかがでしょうか。
辺野古新基地――なぜ軟弱地盤の最深部での調査を拒むのか
沖縄県の玉城デニー知事は、政府が申請していた辺野古新基地建設の設計変更を不承認とする決定を行いました。日本共産党は、知事の決定を断固支持するものであります。
知事が不承認の決定を行った理由の一つは、軟弱地盤対策で必要な調査すら行われていないということでした。軟弱地盤は「B27」と呼ばれる地点で、最深部が海面下90メートルに達します。設計変更でこの場所は海面下70メートルまで地盤改良するとされ、残りの20メートルは地盤改良がされません。防衛省は、77メートル以下の地盤は「固い」と主張していますが、「B27」地点では地盤の強度をはかる調査は行われていません。その地盤のデータは150メートル~750メートルも離れた三つの地点のデータを使った推定値でしかありません。
そこで総理にうかがいます。なぜ軟弱地盤の最深部での調査を拒むのですか。調査をすれば新基地は造れなくなるからとしか説明がつかないではありませんか。
沖縄県民の総意を受け止め、破綻した新基地建設は中止し、世界一危険な普天間基地の無条件撤去を求めて米国と交渉すべきです。明確な答弁を求めます。
核兵器禁止条約へのオブザーバー参加――ドイツが参加できて日本ができない理由は
この間、ドイツで新政権を担う3党が発表した連立政権合意で、ドイツが核兵器禁止条約の第1回締約国会議にオブザーバー参加することが決められました。NATO(北大西洋条約機構)加盟国からのオブザーバー参加表明は、ノルウェーに続いてドイツが2カ国目になります。
そこで総理にうかがいます。同じ米国の「核の傘」のもとにありながら、ドイツやノルウェーが参加できて、日本が参加できない理由を説明してください。
わが党は、核兵器禁止条約への参加を強く求めますが、唯一の戦争被爆国の政府として、まずは締約国会議にオブザーバーで参加し、核兵器廃絶を実現するための話し合いの輪に加わるべきではありませんか。
答弁を求めます。
「敵基地攻撃能力の保有」――「憲法違反」という歴代政権の憲法解釈を変更するつもりか
最後に、総理が、所信表明で、「敵基地攻撃能力」の「検討」を進めると表明したことは、きわめて重大です。
総理に端的にうかがいます。「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない」――すなわち「敵基地攻撃能力の保有」は「憲法違反」、これは歴代政権の憲法解釈であります。この憲法解釈を変更することを「検討」の対象にするおつもりか。
しかとお答えいただきたい。
海外で戦争する国づくりへの暴走を許してはなりません。安保法制に続く立憲主義の破壊、9条改憲をはじめとする自民党改憲4項目に断固として反対を貫くことを表明して、質問を終わります。