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2021年12月11日(土)

命・安全最優先の政治に転換を 国民の願い実現迫る

田村副委員長の代表質問

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(写真)代表質問で政府を追及する田村智子副委員長=10日、参院本会議

 日本共産党の田村智子副委員長は10日の参院本会議で、大企業優遇、軍事優先の政治を続ける岸田政権の根本姿勢をただし、国民の命、暮らし、安全を最優先にした政治への転換を求めました。

コロナ対策

医療機関へ支援不可欠

 田村氏は、新型コロナの変異株「オミクロン株」の市中感染などの事態を想定して外来診療、入院医療ともに体制強化が求められると指摘。それにもかかわらず政府は「コロナ病床の確保を要請しながら、病床削減する計画を進めている」と批判し、削減計画中止を迫りました。

 田村氏は、昨年、医療機関は圧倒的な赤字になったとして、「最悪の事態を想定した」体制をつくるには医療機関全体への財政支援が不可欠だと提起。安倍政権のもとで7年間にわたって診療報酬が引き下げられ、緊急事態への体制確保に大きな困難をもたらした反省にたち、「医療の基盤強化の支援策を、今こそ進めるべきだ」と強調しました。

 困窮者への給付金について田村氏は、住民税非課税世帯などへ給付金が生活保護世帯に支給される場合、給付金が収入に認定されれば生活保護費が減額されるとして「収入認定から除外されるか」と質問。岸田首相は「収入認定から除外する方向で検討している」と答弁しました。

 田村氏は、事務費だけで967億円という子育て世帯のクーポン支給は「非難の嵐だ」として、抜本的見直しを求めました。

 中小企業支援では、多くの事業者が融資の返済や税金の延納分などの支払いに直面しているとして、コロナ融資の返済減免、社会保険料や税金の特別減免などを講ずるべきだと迫りました。岸田首相は「融資の返済猶予は金融機関に配慮を要請している。税、社会保険料の納付猶予は、仕組みを設けた」などと述べ、返済猶予、特別減税を拒否しました。

「新しい資本主義」

規制緩和路線の転換を

 岸田首相が総裁選で「小泉改革以降の新自由主義的政策を転換する」と訴えたことについて、田村氏は、岸田首相の「新しい資本主義」を正面からただし、構造問題に踏み込んだ対策を提案しました。

 田村氏は、小泉純一郎政権(2001~06年)で進められた派遣労働の対象拡大など労働法制緩和が非正規雇用を増やしてきたと指摘。フルタイムで働いても年収200万円に満たないワーキングプアを生みだし、貧困と格差の拡大と経済の停滞をもたらしたとし、「この規制緩和路線を転換するのか」と迫りました。岸田首相は、正社員化を支援するというだけで、規制緩和路線に無反省な姿勢を示しました。

 田村氏は、岸田首相が賃上げ策として21年度補正予算案に盛り込んだ、給与を引き上げた企業の法人税を減税する「賃上げ減税」は13年度から実施され、減税額は2兆円を超えるのに12年と20年の平均賃金を比較すると実質賃金はマイナスだと述べ、「効果があったのか」と追及。減税額の44・2%は大企業向けで、トヨタ自動車1社で359億円と推計されるとし、「やるべきは内部留保を活用した賃上げを大企業に強く要請することだ」と強調しました。

 田村氏は、賃上げを抜本的に進めるため、直接雇用を原則とするなど法規制によって構造的に正規雇用の割合を増やしていくべきだと主張。最低賃金を全国一律時給1500円に引き上げるべきだと提案しました。

 田村氏は「中小企業への直接の支援が最大のカギ」だとし、中小企業の社会保険料事業主負担分の軽減を提案。「本気の賃上げのために真剣に検討してほしい」と訴えました。

 岸田首相は、「賃上げ減税」は賃上げに寄与してきたとし、最低賃金は全国加重平均千円を目指すと低い目標を示しました。

気候危機

石炭火発延命策やめよ

 田村氏は、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で46の国と地域が賛同した石炭火発「廃止宣言」に、日本はなぜ入らなかったのかと追及。岸田首相が気候変動対策の名で進めようとしているアンモニアと石炭との混合燃焼が、温室効果ガスを大量に排出する石炭火力発電の延命策にすぎないことを告発しました。

 田村氏は、アンモニア製造は高コストなうえ、アンモニア1トンを製造するのに1・6トンの二酸化炭素が排出され、石炭とアンモニアを8対2の比率で燃やした二酸化炭素排出削減効果が4%にすぎないという事実を示し、「合理性はない。2050年以降も石炭火発を稼働させるつもりか。一刻も早く石炭火力発電をやめなければならない」とただしました。

 岸田首相は「日本は日本の取り組みを進めている」と開き直りました。

性暴力根絶

包括的な性教育が必要

 「あなたの望まない性的な行為は、性暴力」―。田村氏は、女性に対する暴力撤廃の国際デー(11月25日)に合わせた内閣府ポスターの標語を引用し、「この啓発は系統的に大規模に行うことが大切だ」と強調。法制審議会(法相の諮問機関)で議論されている刑法の性犯罪規定について、同意要件の新設など被害の実態に見合った改正を求めました。

 同時に田村氏は「性暴力、性犯罪をなくし、互いの性を尊重する人間関係を築くために、科学的で包括的な性教育が必要だ」と強調。ユネスコが包括的な性教育を推進するためにガイダンスで「性交、避妊に科学的情報など重要な話題を無視し、省略することはスティグマ(偏見)や無知を引き起こし、助けを求める障壁をつくりだす」と指摘し、「日本では性交も避妊も学校で教えることがタブー視されたままだ」と批判しました。

 田村氏は、文部科学省の「生命の安全教育」について、「包括的な性教育とは異なる」と指摘。「子どもたちは公教育で、性や生殖についての科学的な知識や、性に関わる人権意識を形成する機会もないままに、インターネットなどで氾濫する暴力的でゆがんだ性の情報に触れている、これが日本の現状ではないか」と迫り、性暴力や予期せぬ妊娠を防ぐ上でも、ユネスコに学んだ公教育での性教育の実践を求めました。

 岸田首相は、ユネスコのガイダンスは承知していると述べながら、日本の学校では学習指導要領に基づき指導すると答え、包括的な性教育に背を向けました。

「黒い雨」 学術会議

首相は問題に向き合え

 「黒い雨」被害者救済で、広島高裁は7月に原告全員に原爆手帳の交付を認め、特定の疾病の発症がなくても放射能による健康被害が否定できなければ被爆者とする判決を下し、国は上告を断念。しかし国は、被爆者手帳交付の新たな審査指針の検討で「特定の病気」になったことを考慮するとの基本的な考え方を示しています。

 田村氏は「判決の後退を批判する声が起こっている」として、「広島出身の総理として、高裁判決の立場を堅持し幅広く救済すべきではないか」と迫りました。

 岸田首相は、「同じような事情にあった人」を早急に救済するとした7月の総理談話に触れながら、「特定の病気」を考慮するとの点には正面から答えませんでした。

 田村氏は、森友・加計学園などの政治の私物化や広島での選挙買収などの真相解明にふたをし、辺野古新基地の埋め立てを強行するなどの岸田首相の姿勢について「結局、岸田総理は『聞く耳持たない』強権政治そのものではないか」と厳しく批判。日本学術会議の任命拒否問題は「憲法が保障する『学問の自由』への介入そのものだ」と批判し、官邸の違法な介入を認め、拒否された6人を即時任命するよう求めました。

 岸田首相は「会員の任命については一連の手続きは終了したと承知している」と述べ、6人の任命に背を向けました。

米軍機F16事故

地位協定抜本見直しを

 田村氏は、緊急事態に陥った米軍戦闘機F16が青森県深浦町に燃料タンク二つを投棄し、タンクの一つは民家からわずか20メートルの地点に落下(11月30日)した問題を追及しました。

 F16は1985年に50機が配備されて以降、燃料タンク投棄20回、模擬爆弾投棄12回、13機が墜落事故を起こすなど、これまでも事故を多発させています。

 田村氏は「国民の命と安全を守るために、F16の撤去を在日米軍に要請するべきだ」と主張。米軍機の事故に対し、日本は独自の調査を一切行うことができず、全国知事会が2018年に「日米地位協定抜本見直し」を求める「提言」を全会一致で採択したことをあげ、「国民の安全のために、地位協定の抜本的見直しへ動く時ではないか」と迫りました。

 岸田首相は「日米地位協定のあるべき姿を追求したい」としか答えませんでした。

安保法制・軍拡

平和外交への努力こそ

図

 田村氏は、自民党が軍事費のGDP(国内総生産)比2%を念頭に増額を目指すと公約に掲げ、補正予算に過去最大の約7700億円の軍事費を計上し、今年度の軍事費が6兆円を超えることを告発しました。

 さらに、岸田首相が「敵基地攻撃能力」保有の検討を表明し、2015年の安保法制強行以降、自衛隊の装備も訓練も「戦争する国づくり」の道を急速に歩んでいることを批判しました。

 田村氏は、中国の軍事的脅威、北朝鮮の核開発やミサイル発射は絶対に許されないと述べた上で、軍事に軍事で対決し、先制攻撃にもつながる敵基地攻撃能力まで持とうとすることは軍事的緊張と軍拡競争を強め、増税と社会保障予算のさらなる削減を伴い、国民の命・暮らし・安全を脅かすと指摘。「憲法を生かした平和外交への具体的で真剣な努力こそ求められている」と主張しました。

 岸田首相は「安保法制は日米同盟を強固にし、抑止力を向上させた」と述べ、「戦争する国づくりとの指摘は当たらない」と強弁しました。


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