2021年12月14日(火)
主張
SACO合意25年
基地負担の抜本解消が急務だ
1995年9月に沖縄で発生した米兵による少女暴行事件を受け、日米両政府が米軍基地負担軽減のためとして設置した「沖縄に関する特別行動委員会」(SACO)が96年12月に最終報告を公表して25年がたちました。同報告は、沖縄県内の米軍基地11施設の返還などを決めました。ところが、「県内での代替施設建設や機能移転が返還の条件」となり、「基地の機能強化や近代化が図られてきた」(琉球新報3日付)のが実態です。今なお沖縄にのしかかる過重な基地負担の抜本的解消が急務です。
機能強化と訓練激化
96年12月2日発表のSACO最終報告には、普天間基地など計5002ヘクタールの返還が盛り込まれました。沖縄県基地対策課の資料によると、このうち返還済み面積は4449ヘクタールとなっています。しかし、国土面積の0・6%にすぎない沖縄に、現在も在日米軍専用基地面積の70・3%が集中しています(いずれも2020年3月時点)。
返還済み面積の大半は北部訓練場の部分返還(3987ヘクタール)が占めます。これは「(米軍の)使用に適さない北部訓練場の約51%(の土地)を返す一方、新たに使用できる訓練場所を開発する」のが狙いでした(米海兵隊報告書)。このため、未返還の区域に東村高江の集落を取り囲むように6カ所のヘリパッド(発着帯)が造られ、垂直離着陸機オスプレイなどが昼夜を問わず飛来し、騒音被害や事故の危険が激増しています。
最終報告に基づき読谷補助飛行場でのパラシュート降下訓練が伊江島補助飛行場に移転されました。同飛行場は、米海兵隊が島しょに部隊を迅速に展開させ攻撃拠点を確保する「遠征前進基地作戦」(EABO)の訓練場として機能強化が進んでいます。パラシュート降下訓練をはじめ、最新鋭ステルス戦闘機F35Bの離着陸訓練などが激しく行われています。
キャンプ・ハンセンでの155ミリりゅう弾砲実弾砲撃演習の本土移転でも、高機動ロケット砲システム「ハイマース」を使ったEABOの訓練が実施されるなど、大きく変質しているのは重大です。
最終報告は日米地位協定の運用改善をうたいましたが、問題が次々明らかになっています。環境補足協定(15年)もその一例です。
今年6月、陸軍貯油施設から有害な有機フッ素化合物(PFAS)を含んだ汚水が流出しました。環境補足協定に基づき県が調査し、汚水から国の指針値の1600倍もの濃度のPFASが検出されたのに、米軍が同意しないため、公表できないと報じられています。
最終報告で確認された普天間基地と嘉手納基地の航空機騒音規制措置も、米軍が「運用上必要」だとすれば深夜早朝の飛行も許されます。すべて米側の判断次第という状況は何も変わっていません。
新基地の破綻は明瞭
SACO最終報告の目玉だった普天間基地の返還は四半世紀たっても実現していません。県民の大多数が反対する名護市辺野古の新基地建設が条件になっているためです。新基地の埋め立て予定海域に軟弱地盤が広がり、完成の見通しも立たず、破綻は明瞭です。
先月、普天間基地のオスプレイから水筒が民家に落下する事故も起こりました。新基地建設断念と普天間基地の無条件返還、地位協定改定への転換こそ必要です。