2021年12月15日(水)
主張
与党税制大綱
不公平是正を置き去りのまま
自民、公明両党が10日、岸田文雄政権で初めてとなる2022年度税制改正大綱を決定しました。「成長と分配の好循環」「新しい資本主義の実現」を掲げたものの国民を直接支援する姿勢がなく、大企業・富裕層をさらに優遇します。これではコロナ禍で傷んだ暮らしと日本経済を立て直すことができません。格差を解消するために不公平税制を正すことが何よりも必要です。
効果なかった賃上げ減税
大綱が一番に掲げたのが「賃上げを促す」税制です。企業が賃金総額を増やした場合に法人税から差し引く控除率を引き上げます。
賃上げ減税は13年度から実施され、全く効果が上がっていない制度です。企業の減税額は推計2兆円以上に上りましたが、労働者の実質賃金は年収で22・4万円も減ってしまいました。控除率の引き上げで多少手直ししたとはいえ実効性は疑問視されています。
基本給のベースアップでなくても減税の対象となります。長年低く抑えられてきた賃金水準の底上げにはつながりません。
そもそも法人税は利益にかかる税です。赤字経営の企業は払いません。中小企業の6割を占める赤字企業に賃上げ減税は関係ありません。制度を利用できるのは主に大企業です。
大綱は、賃上げや投資を促すために「法人税実効税率の引下げをはじめとする様々な取組みを行ってきた」ものの「賃金水準は、実質的に見て30年以上にわたりほぼ横ばいの状態」であり「その一方で、株主還元や内部留保は増加を続けており、コロナ禍を受けてもその傾向は変わっていない」と述べています。
にもかかわらず大企業向けのベンチャー企業投資、5G(高速大容量通信規格)導入促進の優遇税制は拡充、延長します。大企業はすでに研究開発減税などの恩恵を受け、470兆円を超える過去最高の内部留保をため込んでいます。この上、優遇を重ねるのでなく、内部留保を賃上げに回すよう強く求めることが政府の役割です。
中小企業には社会保険料の軽減をはじめ思い切った支援策が必要です。それと一体で最低賃金を全国一律1500円に引き上げ、賃金を底上げすることが重要です。
岸田首相が自民党総裁選で掲げた「1億円の壁の打破」に向けた「金融所得課税の強化」は大綱で「検討する必要がある」とされただけで、期限も示さず見送られました。株の配当や譲渡益にかかる税金が低いため金融所得の多い富裕層ほど負担が軽く、年間所得が1億円を超すと所得税負担率が下がってしまうことが以前から問題になってきました。首相が3カ月前の公約を棚上げするようでは公平な税制は実現できません。
消費税依存から脱却を
第2次安倍晋三政権以来、大企業減税が繰り返され、富裕層の優遇税制も温存されました。その一方で低所得者ほど負担が重い消費税は2度も増税されました。この流れを転換すべきです。コロナ禍から暮らしと中小企業の営業を守るために消費税率は直ちに5%に引き下げなければなりません。
消費税に依存した税制ではコロナ対策の財源確保も社会保障の拡充もできません。大企業・富裕層に応分の負担を求める税制改革に踏み出すことが急務です。