2021年12月20日(月)
参院予算委 小池書記局長の質問(詳報)
日本共産党の小池晃書記局長は17日の参院予算委員会で、安倍政権時代からの異常な隠ぺい体質にメスを入れるとともに、「敵基地攻撃能力」の危険性を追及しました。同時に、新型コロナの変異株「オミクロン株」への対策の強化、貧困と格差を克服するための最低賃金引き上げ、選択的夫婦別姓の早期実現を求めました。質疑の内容を紹介します。
国交省のデータ書き換え
統計をゆがめる異常なもの
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小池 都道府県への書き換えを指示した公文書の提出を求める
国交相 私自身もその文書を知らない
小池 無責任すぎる
小池氏は冒頭、国土交通省の基幹統計「建設工事受注動態統計調査」の改ざんについて取り上げ、「業者に無断で調査票を書き換えさせる、過去分の実績を提出された月の実績に足し上げる――誰が見ても統計をゆがめる異常なものだ」と告発しました。斉藤鉄夫国交相が、国交省の指示で始まったと認めたことに触れ、「なぜこんなことを始めたのか」とただしました。
斉藤国交相は、2000年に統計が開始され、都道府県に対し、複数月の調査票がまとめて提出された場合に提出月の調査票に数字をまとめるなどの修正をしていたと報告。一方、13年に、現在のように調査票の提出がなかった事業者について一定の受注があったものとして推計する方法を取るまでは、二重計上が生じるものではなかったとして、「どの時点から誰の指示で行っていたかという点については確認できていない」と回答しました。その上で統計、法律の専門家も加えた第三者委員会を立ち上げて経緯や原因を検証し、1カ月以内に取りまとめたいと答えました。小池氏は次のようにただしました。
小池 第三者委員会という問題じゃない。これ、都道府県に書き換えを指示したんですから、それを指示した公文書があるはずでしょう。当時の担当者に聞けばすぐ分かる。何でやらないんですか。
斉藤鉄夫国交相 それも含めて、どういう経緯、理由でそういう指示を行ったのか、検証をしていきたいと思っています。
小池 これ(二重計上)が始まった頃というのは太田昭宏さんが大臣じゃないですか。その後ずっと公明党が大臣やっているわけだから、問い合わせればいいじゃないですか。すぐに分かるでしょう。
書き換えを指示した文書が絶対にあるはずです。なければ全国でこんなことをやれるわけがないんです。出してください。
斉藤国交相が、「どういう文書があったのか、またどういう経緯でそういう指示がなされたのか、これは大変由々しき問題だとわれわれも認識している」と、文書の存在を認めながら、第三者委員会等で精査し、報告すると繰り返すもとで、小池氏は次のように迫りました。
小池 第三者委員会での全面的な検討の前に、まず、書き換えが始まったときの文書は誰の名前で出したのか、その文書を出してくださいと言っているんです。
国交相 その文書の存在も含めて、その検証委員会で、第三者委員会で調査をしたいと思っています。
小池 文書ありますってさっき言ったんですよ。なきゃおかしいでしょう。文書なしで都道府県に一斉にこんな指示できるわけないじゃないですか。当然あるでしょう。だから、それ出してくださいと言っているんですよ。
国交相 私自身、その文書を知りません。報道で、いわゆる文書ではない、その図というのは見ましたけれども、その真偽も含めて検証委員会で、文書の存在も含めて報告をさせていただきたい。
小池 知らないって無責任過ぎませんか。これだけ大問題になっているんです。文書なしにやっていたら、それこそ大問題だ。あるに決まっているんですよ。
国交相 その文書をしっかり探してみますけれども、私自身、その文書を見ておりません。もしありましたら、提出します。
小池 真相を解明する気がないのか。反省とかと言うけれど、全然反省していない。
小池 厚労省の統計改ざん後の一斉点検でも見落とした。全統計の見直しを
首相 まずは国交省統計を調査する
小池 一斉点検が信用できないのだから全面的見直しがいる
その上で、小池氏は18年に発覚した厚生労働省「毎月勤労統計調査」改ざんを受けて、19年1月に一斉点検がされた際、この問題が明らかにならなかった理由を追及。斉藤国交相は、国交省所管の五つの基本的な統計について検査し、「受注動態統計調査」については上がってこなかったとしたものの、その理由については述べず、ここでも第三者委員会で検証したいと述べました。
小池 総理、国交省から全て資料を出させると、そういう指示、出してください。
岸田文雄首相 先ほど大臣からも、資料を調べて、あったならば提出するという発言があったと記憶しています。ただ、国民に納得してもらうために、第三者委員会での調査を私から指示をしたということです。
小池 まずは持っている資料を出す、どういう経過か明らかにする、その上で第三者委員会で、どういう問題点があり、責任があったのかを解明していくのが筋じゃないですか。
これだけ明らかな書き換えを一斉点検で見落としている。全ての統計もう一度見直すべきじゃないですか。
首相 まずは国交省の統計について自ら調査し、第三者委員会でも調査し、原因、経緯をしっかり明らかにし、その上で必要であればほかの統計についても調査を行っていく、これが順番だと思います。
小池 一斉点検で見落としているんですから、この一斉点検が信用できないんですよ。だから全面的にやるべきだ。
小池 公文書・統計は民主主義の基礎。政権の都合で改ざん・隠ぺいは許されない
その上で小池氏は、統計や文書の改ざんは安倍政権時からひどくなったと告発。「桜を見る会」名簿のシュレッダー、自衛隊のイラク派遣日誌は隠ぺい、裁量労働制のデータ改ざん、森友・加計問題での公文書改ざん・虚偽答弁と、繰り返されてきたことを批判し、次のように追及しました。
小池 総理、公文書、統計は民主主義の基礎です。国民のための公共財です。政権の都合に合わせて改ざん、隠ぺいなど許されないという認識はありますか。安倍政権時代からの異常な体質に徹底的にメスを入れて、うみを出し切るべきではないでしょうか。
首相 大切な統計、文書に関するさまざまな不祥事について反省し、二度と起こらないためにはどうしたらいいのか、真剣に考えていく。私の政府でもしっかり行っていきたいと考えます。
森友問題
真相解明を求める
小池 赤木さんが改ざんを強要されて自死した責任を認めるか
財務相 事実関係の大筋で争うべき点はない。財務省として責任を痛感
次いで小池氏は、森友問題の真相解明を求めて質問。財務省の公文書改ざんを強要され、自ら命を絶った赤木俊夫さんの妻・雅子さんが国を訴えた裁判で、国・財務省がこれまでの主張を翻して原告の請求を認める「認諾」を行い、裁判を終わらせた理由をただしました。
鈴木俊一財務相は、「訴訟は赤木氏が公務による心理的、肉体的負荷を原因として亡くなったことに関する損害賠償請求訴訟だ」と指摘。10月の口頭弁論で原告側の主張の全体像を踏まえて検討し、国の損害賠償義務を認める判断に至ったと語りました。その上で、「情報公開にかかる別の訴訟は係属中であり、真摯(しんし)に対応していく」と述べました。
小池氏は、国を被告とする民事訴訟で認諾した件数と内容を質問。法務省の武笠圭志訟務局長は、今回の訴訟を除いて4件で、▽検察官が起訴後に接見に関する指定をしたことへの損害賠償要求▽海難事故被災者の遺族等が遺骨の返還等要求▽無罪判決を受けた元厚労省局長による損害賠償要求▽日米合同委員会の議事録の情報公開請求に対する不開示決定についての損害賠償要求―だと述べました。
小池氏は、「事案の詳細が明らかになるのを避けるためのものばかりだ」と批判し、雅子さんが訴えた裁判について、次のように追及しました。
小池 訴状で裁判の第一の目的は、「なぜ赤木俊夫氏が自殺に追い込まれなければならなかったのか、その原因と経緯を明らかにする点にある」と書かれています。原告が求めた原因と経緯が明らかになったと思いますか。
鈴木俊一財務相 遺族が損害賠償請求にあわせて、赤木氏の関与を含めた文書改ざんの真相究明などを目的としていることは承知しています。
今般の認諾で、赤木氏が当時さまざまな業務に忙殺され、本省からの決裁、決裁文書改ざん指示への対応を含め厳しい業務状況に置かれていたことを自死の原因として、国としてその責任を認めたところです。遺族が国に提起された別途の訴訟が係属中であり、真摯に対応していきたい。
小池 今の説明だったら、業務が忙しかったから自死したということじゃないですか。改ざんを強要されたから自死されたんでしょう。そこの責任認めているんでしょう。それ明確に言ってください。
財務相 決裁文書の改ざん等の一連の問題行為については、佐川(宣寿)元理財局長が方向性を決定付け、近畿財務局の職員の抵抗にもかかわらず本省理財局の指示で行われたこと、赤木氏の自死は、赤木氏が当時さまざまな業務に忙殺され、自身も強く反発された本省からの決裁文書改ざん指示への対応を含め厳しい業務状況に置かれる中、病気休職、自死に至られたものであるといった事実関係の大筋について、国としては争うべき点はなく、財務省としてもその責任を痛感しているところであります。
小池 雅子さんに会って謝罪・説明すべきだ
首相 お会いするのは慎重でなければ。説明責任は果たす
小池 具体的には何もしない。安倍・菅政権と同じ
小池氏は、岸田首相に「認諾という方針をいつ知ったか」と質問。岸田首相は「14日夕刻に報告を受けた」と答え、次のようなやりとりになりました。
小池 私は昨日、赤木雅子さんと電話でお話をしました。総理は「真摯に向き合う」と言うけれど、ならば、「なぜ裁判の場で真摯に向き合ってくれなかったのか」「証人尋問も今後求めたいと思っていた。裁判の打ち切りは真摯に向き合うやり方か」と怒っておられました。総理、この声にどう応えますか。
首相 今回、財務省から損害賠償の責任を全面的に認めるという報告を受けたわけですが、私から2点、財務省に指示を出しました。1点は、遺族と別途係属している訴訟について丁寧に対応すること、森友学園問題については、今後もさまざまな場で真摯に説明し尽くしていくことを確認し、今回の件について承知しました。
小池 今日16時に、赤木雅子さんは財務省に抗議文を届けると報道されています。赤木さんは、国に対して、「俊夫さんが亡くなったことを認諾したことについて謝罪すべきだ、認諾するようになった経緯や理由を説明すべきだ」とおっしゃっています。総理は「説明を求められた場合は真摯に説明を尽くしていく」と述べられた。雅子さんに会って謝罪と説明すべきじゃありませんか。
首相 別途、訴訟が進んでいます。被告と原告の関係にあることから、直接お会いすることについては私自身慎重でなければならないと考えております。
小池氏は、「本人は全く納得していない。私も、多くの国民も納得していない。どう対応するのか」と追及。岸田首相は、なおも「国会、さまざまな場を通じて説明責任を、さまざまな要求に応じていかなければならない」と語るだけ。
小池 口では説明責任を果たすと言うけれど、具体的には何もしないじゃないですか。証人申請することに多分なったであろう人たちを国会に招致する、これ必要じゃないですか。総理、「国会が決めること」じゃダメですよ。真摯に対応するんだったら、そういう役割を果たしてください。
首相 私の立場からあらゆる機会を捉えて説明努力を続ける。ただ、国会の招致については、国会がご判断することであります。私の立場から何か申し上げることは控えます。
小池 「真摯にやる」と言いながら、結局具体的なことは全部否定するんです。これ、安倍・菅政権と同じじゃないですか。
小池氏は、いずれも当時の財務省理財局長・佐川宣寿氏、近畿財務局長・美並義人氏、理財局総務課長・中村稔氏、国有財産審理室長・田村嘉啓氏、統括国有財産管理官・池田靖氏の国会招致を求めました。
新型コロナ対策
オミクロン株対応・病床削減をただす
小池 陽性者の3割は入国時陰性。空港検疫をすり抜けている
首相 感染状況を確認して適切に対応する
小池 危機感がない。感度の高い検査を直ちに
小池氏は、新型コロナウイルス感染者について、入国した陽性者と、そのうち、入国時には陰性で3日目以降に陽性が判明された方の数を質問しました。
後藤茂之厚生労働相 12月6日から12月12日までの間に入国された方で、検疫での検査で新型コロナウイルス陽性と判明した人数は89人。このうち、到着時の検査で判明した人数は60人、3日目以降の検査で判明した人数は29人です。
小池 3割は入国時陰性なんです。空港検疫をすり抜けている可能性があるわけです。3割がすり抜けている実態、由々しき事態ではないですか。
厚労相 14日間の待機は14日間の潜伏期間があるからで、今の運用としては、こうした運用でリスク管理の点から見ても対応しているところです。
小池 14日間と言いながら、1日目、2日目に人と会って、市中感染の可能性が出てきている。総理、やっぱり今の3割がすり抜けているという現状、何とかしないといけないんじゃないですか。
首相 ご指摘の点、リスクの度合いが明らかになり、感染状況を確認した上で適切に機動的に対応していく。
小池 ちょっと何かあまり危機感がないように思う。
その上で小池氏は、空港検疫で使われている抗原定量検査について、ウイルス量が少ない場合、陰性になることがあり得ると指摘。「3割が入国時に陰性だというのは憂慮すべき事態だ。より感度の高いPCRに切り替える(べきだ)。もう世界の先進国はみんなそうですよ」とただしました。
首相 空港では、大量の検査を迅速に行わなければいけないという要請に基づいて、現状、抗原定量検査を行っているところです。
小池 私は、水際対策は限界あると思います。しかし、少しでもすり抜けを防いで国内での市中感染を遅らせるというのが政府の責任だと。ならば少しでも感度の高い検査に変えていくと、当然やるべきじゃないですか。
小池氏は、「空港にPCRの解析機を置けばすぐできる話だ。やはり、やるべきことをやっていない。これは見直すべきだ」と改善を求めました。
小池 20万床病床削減計画はコロナ感染対策に逆行
首相 統廃合ありきではない
小池 数値目標を撤回すべきだ
小池氏は「医療体制の確立は待ったなしだ」として次のように迫りました。
小池 感染患者受け入れの確保病床を公表されましたが、総数はいくらか、そのうち国立、公立・公的病院などの割合を示してください。
厚労相 この夏に比べて約6000床増の約4万6000床の病床を確保しました。そのうち公的病院は、国立病院機構(NHO)が約3000、地域医療機能推進機構(JCHO)が約1000、(公立病院との)合計1万5000床で、全体の3分の1ぐらいです。
小池 これだけの役割を果たしている公立・公的病院を、430もの病院を名指しで統廃合、地域医療構想の名で20万床の急性期病床の削減。総理、パンデミック対策への逆行じゃないですか。
首相 地域医療構想ですが、これは病床の削減あるいは統廃合ありきではありません。より効率的な地域医療の実現のために、地方自治体と連携しながら体制を考えていくべき課題だと認識しています。
小池 統廃合ありきでないというなら、430の病院を名指しにする、20万床急性期病床を削減する、こういう数値目標を撤回すべきじゃないですか。
厚労相 430の病院の視点を今申されましたけれども、これはそれぞれの地域医療構想の中で人口構造の変化や地域の医療ニーズに合わせて決めていただくことです。一定の基準で改めて検討をしていただく病院を数値的にお示しはしておりますが、そのことによってその地域、数値目標に従って統廃合をするということではございませんし、(20万床を削減して)53万床にするという急性期の病院も、その数量を統廃合しろということではなくて、それぞれの地域において機能の分担をしていただくということで考えています。
小池 それぞれの地域で考えるんだったら、数値目標要らないじゃないですか。それぞれの地方で決めて、それでやっていけばいいじゃないですか。何で数値目標が要るのかと聞いている。
小池 数も全然根拠がない
厚労相 コロナ対応があり、協議が進んでない
小池 地域にニーズがあるから計画は進まない
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地域医療構想について「数ありき、削減ありきではない」と繰り返す首相に対し、小池氏は「撤回しなければ、数があれば、結局統廃合ありきになってしまう」と批判し、次のように迫りました。
小池 数にも全然根拠がないんです。2015年の地域医療構想を策定した時点での急性期病床は、高度急性期も含めて76・5万床だった。それを、53万床まで20万床削減するという計画でしたが、その後の実態を見ると、18年で73万床、19年で71万床、20年で70万床。病床削減は進んでいません。理由を。
厚労相 足元はコロナ対応等もあり、関係者の協議が進んでいないという点もあります。
小池 足元じゃない。この間の一貫した傾向なんです。急性期病院を53万床にするのは現実に不可能ですよね。
厚労相 そこは、人口が徐々に減ってくるといったことを含めて、できる限り丁寧に地域と議論をしていただくということです。それも2025年を目標年としてやっている計画作業でございます。
小池 2025年までに人口構造がそんな急激に変化するんですか。どう考えたってこのトレンド(傾向)だったら難しいでしょう。
急性期病床がなぜ減らないのか、地域にニーズがあるからなんですよ。だから計画を作ったって進まない。
小池 病床削減計画は見直すと明言すべきだ
小池氏は「パンデミックは、医療体制の強化の重要性を浮き彫りにした」として、日本医師会の横倉義武前会長が、コロナ感染拡大を受けて「なんとかそれを持ちこたえることができたのは、その(病床削減の)スピードの遅さがよかったと理解している。わが国の医療提供体制は、ある意味で無駄に見えていたものが、今回の感染では非常に役に立った」と述べていることを紹介し、「今の地域医療構想には、感染症対策も全く含まれていない。これからもパンデミックが繰り返しやってくると考えるべきだ。そのためには、医療提供体制には十分な余裕を確保することが必要だ」と強調しました。
小池 総理、今の病床削減計画は見直すと明言していただきたい。
首相 コロナ禍のさまざまな状況も踏まえて地域のニーズは確認しなければならない。その際に、自治体と意思疎通を図りながら、現実どうあるべきなのか、これから地域医療構想についてもしっかり考えていかなければならないと思います。
小池 しっかり考えていかなければいけないと。だったら見直さなきゃいけない。
医療提供体制に余裕がないと感染症有事には備えられないというのは、医療界の一致した意見ですから、ぜひそういう方向で進むことを求めます。
ケア労働
大幅賃上げと人員増を
小池 月9000円賃上げと言うが、職員配分で1人あたりは下がる
少子化担当相 各職員の改善額にばらつきは生じうる
小池 1桁違うが現場の切実な声。これに応えるべきだ
続いて小池氏はケア労働で働く労働者の大幅賃上げを迫りました。
小池 総理は、介護、保育などで働く人々の賃金を当面月9000円、コロナ医療に携わる看護師の賃金、月4000円引き上げると。しかし、コロナ対応しているのは看護師さんだけではない。ほかの職員にも配分していい仕組みになっていますから、1人当たりの賃上げ額は限りなく下がっていくことになってしまう。
ほかの分野でも同じで、都内で働く保育士さんの話聞いたんですけど、93人の園児を受け入れて、国の配置基準では保育士10人、実際にはそれ以上必要なので、パートも含めて25人働いていると。しかし、国のお金は配置基準分しか出ないから、手元に届くのは1人9000円ではなくて3000円程度だと。こういうことが起こり得る仕組みですね。
野田聖子少子化担当相 補助額は、公定価格上の配置基準に基づいて算定することになりますが他の職員にも一定の処遇改善を行うことができるよう施設が独自に配置している職員も含めて柔軟に配分することを可能にしています。このため各職員の改善額にばらつきが生じ得るところです。
小池 今私が言ったようなことが起こり得るということです。この保育士さんの月収は27万円。全く余裕がなくて、月9000円の賃上げでは話にならないし、実際の賃上げは9000円にもならないわけで、大幅賃上げをということをご本人は言っておられます。
小池氏は、日本は医療、介護、保育などケア労働の労働者は、労働条件が極めて劣悪だとして、全労連、日本医労連などが医療・介護・福祉労働者5万4866人に行ったアンケートの結果では、生活実感からの賃金不足額は平均で月4万285円だと語り、次のように迫りました。
小池 1桁違う。この切実な声に応えるべきじゃないですか。
首相 ご指摘の賃上げについて、公的価格の部分について、国が今回の補正予算等を通じて引き上げを行い、その後、安定的にこの引き上げを維持するために年末、予算編成の中で財源を確保していきたい。その後、公的価格評価検討委員会で議論を行い、年末までに中間整理を行い、それを踏まえてさらなる引き上げについても考えていきたい。
小池 診療報酬を改定し看護配置基準改善をの声は切実。財務省は自然増で賃上げできると言う。すべて人件費に回せるか
厚労相 それは無理だと思う
これに対し、小池氏は看護師たちの強い願いは、「人員増と賃金の抜本的引き上げだ」と強調しました。
小池 日本の病床当たりの看護職員配置数は、OECD(経済協力開発機構)加盟35カ国で30位です。現在の看護師配置基準は、最高で患者7人に看護師1人。これは平均ですから、常に7対1ではありません。しかも、これだけでは対応できませんから、重症者の多い病棟の3割以上が5対1、6対1で実際は配置しています。
集中治療室の配置基準は、患者2人に看護師1人。でも、実際は1・5対1以上になっています。しかも、コロナの患者には、人工呼吸器を装着していれば患者1人に看護師1人、ECMO(人工肺)を装着していたら患者1人に看護師2人というのが実態です。
日本看護協会は、診療報酬を改定して、高度な急性期医療を提供する病棟では5対1看護の加算を設けて、集中治療室では1・5対1看護を新設すべきだと提案しています。これが現場の切実な声です。
ところが、財務省は、診療報酬をちゅうちょなく下げようと。コロナ診療で頑張ってきた人たちにこんなひどい仕打ちはないと思う。財務省は、(高齢化や医療の高度化による)自然増が5400億円あるから、これで医療従事者の2・5%の賃上げができるんだと言っている。厚労大臣、自然増というのは全て人件費に回せますか。
厚労相 自然増で賃上げを全部まかなえるのかというと、それは無理だろうと思います。
小池 その通りです。財務省の言っていることはあり得ない。
小池 自民党議員の会も診療報酬の大幅プラス改定を提言。ぜひやるべきだ
小池氏は、医療はコロナ受け入れの病棟だけではなく、全ての医療機関がそれぞれの役割を分担する中で、全体として新型コロナ対応をしていると強調。「コロナ医療と通常医療の両立が可能な医療体制をつくる。そのためにきちんと診療報酬を充てていく。これが国民の命を守るために必要だ。もちろん私たちは、患者負担をあわせて下げることも要求する」として、次のように求めました。
小池 自民党の国民医療を守る議員の会が12月7日、総理に、診療報酬の大幅なプラス改定を求める提言を出されました。これはやるべきじゃないですか。ぜひ診療報酬に必要な手当てをすると明言いただきたい。党派を超えた声に応えるべきではありませんか。
首相 診療報酬についてはさまざまなご意見をいただいております。予算編成過程の中で検討をしていきたいと考えています。
最低賃金
全国一律・時給1500円に踏み出せ
小池 諸外国を参考に時給1000円を直ちに
首相 各国の経済状況はさまざまだ
小池 まずは国民のくらし。1500円を目標に中小企業支援をしっかり
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小池氏は、コロナ禍で貧困と格差が広がる中、政府にできる賃上げが最低賃金の引き上げだと強調。経済財政諮問会議に出された資料でも、最賃水準は、欧米などではコロナ禍でも引き上げられている一方で日本の水準は国際的に低いと指摘されているとして次のように追及しました。
小池 「骨太の方針2021」では、「感染症下でも最低賃金を引き上げてきた諸外国の取り組みも参考に」して、「感染症拡大前にわが国で引き上げてきた実績を踏まえ」、早期に全国加重平均1000円と言っていたんですが、総理の答弁はこの間、この前段の「感染症下でも最低賃金を引き上げてきた諸外国の取り組みも参考に」と、言わなくなった。なぜですか。
首相 答弁上、ポイントを絞って発言をいたしましたが、ご指摘のように、「骨太の方針2021」に書いてある趣旨で発言した次第です。
小池 だったら正確に言ってほしいんですよ。諸外国の取り組みも参考にしてって言葉すごく大事なんです。感染拡大前のわが国の実績だと大体年率3%です。実際に、今年の時給28円はその範囲なんです。昨年は1円しか上げていない。3%のペースだと、全国平均が1000円超えるのは3年後です。今年最低の820円が1000円超えるのは7年後の2028年なんですね。
一方で、感染症下で引き上げてきた諸外国の取り組み、例えばイギリスは今年6・6%引き上げ、ドイツは8・85%引き上げ。これを参考に、例えば日本が7・5%引き上げたら、来年、全国平均は1000円になります。諸外国を参考にして、第一歩として、全国どこでも時給はせめて1000円。直ちに実現すべきじゃないですか。
首相 諸外国を参考にしながらも、各国とも経済状況はさまざまです。わが国の来年度の具体的な賃上げについては、わが国の経済状況も踏まえながら、最低賃金を確定したいと思っています。
小池 経済状況と言うけど、まずは国民の暮らしですよ。そこを支えて、消費が活発になってこそ経済は豊かになっていく。私は、時給1500円という目標を明確にし、そのために中小企業をしっかり支援すべきだと思います。
小池 地域間格差で年40万円違う。全国一律最賃に踏み出すべきだ
首相 中小企業の経営が圧迫されかねない
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さらに、小池氏は、地域間格差が10年で2倍以上に広がり、東京の時給1041円に対して、高知、沖縄は820円で格差は221円だと述べました。
小池 時給200円違えば、フルタイムで働いたとして、年収で40万円も違ってくる。総理は地域間格差に配慮しているとおっしゃっていたけど、違うんじゃないですか。
首相 地域間格差はあるわけですが、一方で、標準生計費を考えた場合、東京都は12万6000円、沖縄県は9万7000円であります。こうしたこの違いもあることも勘案しながら、地域別最低賃金を決定することになっています。
小池 今総理が標準生計費を持ち出したけれど、厚労大臣、最低賃金の基準は標準生計費ですか。違うでしょう。
厚労相 最賃を判断する場合には、労働者の生計費、賃金、賃金支払能力の三つで判断し、中央最低賃金審議会では、生計費に関しては、生活保護のほか、各都道府県の人事委員会が作る標準生計費等の資料を踏まえて公労使で議論をしています。
小池 だから、生計費の基準は標準生計費じゃないですよね、生活保護基準でもないですよね。
厚労相 参考にしているということでございます。
小池 違うんですよ、標準生計費は労働者の生計費の基準じゃないんですよ。
実際でいうと、例えば鹿児島県労連が県内の最低生計費の調査をやって、25歳の単身者でアパートの家賃3万4000円、駐車場月3000円などを積み上げたら、時給換算で1584円となった。いまの時給821円で人間らしい生活ができると思いますか。
地方に行ったら生活費かからないって言うけど、公共交通機関は発達していませんから、車代とか駐車場代とかお金かかるんですよ。
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小池氏は、自民党の最低賃金一元化議連が、最賃水準の低い地域では、最賃引き上げで雇用が有意に増加して生産性も向上したという内閣府の調査を基に全国一律最低賃金制を提案していると紹介。ILO(国際労働機関)調査でも、世界的に地域別最低賃金制度は、中国、カナダ、日本、インドネシアの4カ国で、「世界の多数は全国一律だ」と述べました。
小池 狭い国土の日本で47都道府県全部最低賃金が違う。あまりに不合理です。地域格差是正、地方創生と言うなら決定打の全国一律最賃に踏み出すべきじゃないですか。
首相 自民党には、それに反対する考え方もいっぱいあります。全国一律の最低賃金は、特に地方で中小企業を中心に人件費が増加する、経営が圧迫される、結果として雇用が損なわれるといったことにもなりかねない。慎重に検討する必要がある課題だと認識しています。
小池 中小企業の賃上げ支援なら社会保険料の事業主負担の補てんが一番実効ある
厚労相 持続的賃上げは起こらない
小池 真剣に最賃を引き上げる気がない。あらゆる政策を動員すべきだ
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小池氏は、「この問題では中小企業支援が決定的だ」と指摘。「では何が必要か。事業主負担をみると中小・中堅企業では社会保険料が法人税の3倍程度、特に資本金2000万円以下の小規模企業では社会保険料が法人税の5倍だ」と述べました。
小池 中小企業の賃上げ支援というのであれば、日本商工会議所なども求めている社会保険料の事業主負担の補てんを真剣に検討すべきじゃないですか。それが一番実効ある賃上げ対策になります。
厚労相 社会保険料の事業主負担分を公的に肩代わりするだけでは持続的な賃上げは起こらないと思います。社会保険料の負担軽減分の使途というのは企業の裁量でもあります。
小池 企業負担を軽減しても軽減分の使途は企業の裁量だと。じゃ、賃上げ減税も同じじゃないですか。
首相 それは当たらないと思います。賃上げ税制は、賃上げそのものに焦点を当て、税制優遇を与えるわけですから。
小池 だったら、フランスは低賃金労働者の賃金を引き上げた企業に社会保険料の軽減をやっているんですよ。これならいいということですね。
厚労相 政策を各国それぞれ違う制度で整えていますので、各国の制度の一部だけを切り出して比較することも難しいと思います。
小池 真剣に最賃引き上げようという気がないんじゃないですか。最低賃金制度の第一の目的は労働者の生活の安定です。そのためにあらゆる政策を動員すべきです。社会保険料はその政策を動員する上で非常に重要な要素ではないか。ぜひ検討していただきたい。
選択的夫婦別姓の導入
実現は国民への責任
小池 通称使用の拡大はさまざまな問題が生じている
男女共同参画局長 行政コスト大きく経済的マイナス。根本解決にならないとの指摘がある
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次に小池氏は、選択的夫婦別姓の導入について質問。参院に選択的夫婦別姓の導入、法制化、議論の促進を求める自治体の意見書が3年間で何件届いたかを聞きました。金子真実参院議事部長は2019年に44件、20年に58件、21年は16日までに132件と答えました。
小池氏は、「年々増加している」と述べ、選択的夫婦別姓・全国陳情アクションの調べでは、これまで11都道府県議会、12政令指定都市議会を含め307件が国会に送られていると紹介。こうした中「通称使用」拡大の動きがあるとして、問題点をただしました。
小池 通称使用、結婚前の氏の併用を拡大しようという動きがあるわけですが、通称使用の拡大はさまざまな問題をもたらしていると思います。どういう問題が生じていますか。
林伴子男女共同参画局長 男女共同参画会議の計画実行・監視専門調査会をはじめ、さまざまな場で旧姓の通称使用の限界や課題も指摘されています。企業、行政にとってもコストや事務負担が大きく経済的にマイナスであるという指摘。パスポートは旧姓併記が可能ですが航空券やビザは戸籍名なので現地で混乱するなど海外での仕事や生活に支障があるという指摘。マネーロンダリングなど悪用の懸念、離婚・再婚により旧姓が複数ある人も多くなっていること。さらに、名前は個人の尊厳やアイデンティティー、人権に関わるものであり通称使用では根本的な解決にならないという指摘などいただいているところです。
小池 何よりも人権の問題。導入以外に道はない
男女共同参画担当相 法制審の導入答申から約四半世紀。通称使用は国際的に通用しない
小池 大変説得力のある話
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小池氏は、「二つの名前を持つというのは、世界で通用しない、まさにガラパゴス的なやり方だ」と述べ、次のようにただしました。
小池 何よりも人権の問題です。結婚で夫婦同姓を強制させる今の制度そのものが人権侵害だと思いますし、女性にとっては結婚で姓を変えること自体が大きな負担になる。通称使用の拡大はそれに輪を掛けて大きな負担と多大なコストを生むと思います。選択的夫婦別姓の導入以外に道はないと思います。
野田聖子男女共同参画担当相 平成8年(1996年)に法制審議会が答申を出しています。そこで選択的夫婦別氏、別姓を導入しようということで、約四半世紀たっています。
世界的に名前を二つ持つという国はどこにもなく、通称使用ということで法律にしたところで国際社会には通用しない法律ができてしまう。通称使用は、あくまでもこの法制審議会で平成8年、これから別氏に向かって取り組んでいきましょうという暫定的に、旧姓を名乗りたい人のための通過の措置みたいなところがありました。そこをしっかりご説明申し上げて、一人でも多く、女性活躍のみならず、男性も名字を変えると大変な負担になります。
夫も野田姓に変えて非常に負担を感じていて、私に腹を立てています。しっかり取り組んでいければと思っています。
小池氏は、「大変説得力のある話をしていただいた」と述べ、今回の総選挙で当選した自民党衆院議員261人のうち、朝日新聞・東京大学谷口研究室などのアンケートで、「反対」「どちらかといえば反対」と言った人は73人だと紹介。自民党の中でも少数派であると述べました。
小池 首相には早期実現を呼びかけた責任がある
首相 議論することは大変重要
小池 呼びかけたのに無責任。国会で早く結論を
小池 何を恐れているのかと言いたい。何より総理は選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟の呼びかけ人ですよ。政治家として呼びかけた責任を果たすべきではありませんか。
首相 選択的夫婦別氏制度について議論することは大変重要であり、多様性を大切にする社会において大いに議論する、これは大事なことであると考えてご指摘のような態度も取ったわけです。
ただ、広く国民全体が受け入れる制度であります。広島の地域で車座で議論すると、子どもの氏はどうなるんだろうか、こういった議論で随分盛り上がります。国民一般にこの問題について理解、どうなんだろうか、まだまだ議論しなければいけない部分はあるのではないか。
小池氏は、子どもの氏の問題は法制審で基本的な案が出されていると指摘。事実婚で子どもの名前が違っても、日本でも世界でも問題は起きていないと強調しました。
小池 そういったことを理由に、「議論する」と言うけれども、道をふさぐのでは進まない。選択的夫婦別姓であり、強制するわけじゃない。今は強制的夫婦同姓ですからね。私はちょっとがっかりした。今の岸田さんの答弁。野田大臣、岸田さんにこの制度の意味をちゃんと説得してください。
男女共同参画担当相 総理は総理のお立場で、しっかりと不安、不満をクリアしていこうというご努力の最中。私は四半世紀前から取り組んでいるので、そこら辺はクリアされている。法制審議会の答申では、子どもの氏は結婚の際にあらかじめ決めておき、子どもは全員同じ氏を名乗ると原案に示されているところなので、しっかりと広めていくことが大切だと思います。
首相 多くの国会議員が理解されているということは決して否定するものではありません。しかし、多くの国民の声、名もなき声を聞いたときに、本当にみんな理解しているのか、私はその辺に確信が持てない。そういった感覚も大事にした上で、社会的な雰囲気を盛り上げるよう、これは努力する必要があるのではないかと認識をしております。
小池 どんな世論調査でも6割以上が選択的夫婦別姓に賛成です。(多くの方は)これだけ時間かけてきたのに進まないんだと、じくじたる思いでいますよ。国会に法案出して、そこで議論しようじゃないですか。党議拘束を外してもいい。きちんと実現するのは国会の国民に対する責任だと思います。前に進めると呼びかけたのに今みたいなことを言っていたらだめですよ。無責任だ。きちんと国会で議論して早く結論出すことを求めたい。
「敵基地攻撃能力」の検討
先制攻撃そのもの。憲法破壊は許されない
小池 一発ミサイルを撃つという話ではない。基地をつぶしさらに攻撃。全面戦争に発展する
首相 状況が変化する中、一つの例ではある
小池 「一つの例」と認めたことは重大
小池氏は、今回の所信表明演説で初めて「敵基地攻撃能力」の検討を明言した岸田首相の姿勢をただしました。10月の所信表明や自民党の総選挙政策には「敵基地攻撃」の言葉はなかったのに、なぜ今回表明したのかと追及しました。
小池 小野寺元防衛大臣は、攻撃、反撃、敵基地という言葉が入ると先制攻撃のような間違った印象を与える危険性があるとおっしゃっている。私は、間違った印象じゃなくて、敵基地攻撃というのは先制攻撃そのものだと思っていますが、総理は、先制攻撃という印象を与える危険性もいとわず、なぜ踏み込んだんですか。
首相 私自身の態度は全く変わっておりません。今厳しい安全保障環境の中で、極超音速飛翔(ひしょう)兵器あるいは変則軌道ミサイル等、技術が刻々と進化する中にあって、国民の安心、安全を守るためにはあらゆる選択肢を排除せず議論するべきであるということをずっと申し上げてきております。いわゆる敵基地攻撃についても、昭和30年代から続く長い歴史のある議論ではありますが、状況はどんどん変化している。長い、古い議論ではありますが、決して現代的な議論でないということはないと考えております。
では、敵基地攻撃能力とは一体どういうものか―。小池氏は敵基地攻撃は一般的にどのようなオペレーション(作戦)を必要とするかを問いました。
岸信夫防衛相 一般論として、移動式のミサイル発射機の位置をリアルタイムに把握するとともに、地下に隠ぺいされたミサイル基地の正確な位置を把握し、まず防空用のレーダーや対空ミサイルを攻撃して無力化し、相手国の領域、領空における制空権を一時的に確保した上で、移動式ミサイル発射機や堅固な地下施設となっているミサイル基地を破壊してミサイル発射能力を無力化し、攻撃の効果を把握した上でさらなる攻撃を行うといった一連のオペレーションを行う必要があるという旨答弁している。
小池 以前、河野防衛大臣も同じ内容を答弁し、冒頭で「他国の領域において」と言っていますが、それでいいですね。これ、一発ミサイルを撃つという話じゃないんです。相手国の領域にまで乗り込んでいってミサイル基地をしらみつぶしに攻撃する。さらに、制空権を確保して、地下施設も含めて大規模な攻撃を行う。全面戦争に発展するような話なんですよ。私は、こんなものが憲法9条の下で認められるわけがないと思いますが、いかがですか。
首相 いわゆる敵基地攻撃能力の議論は、昭和31年(1956年)の鳩山内閣における判断を政府として引き継いでいます。法的に合致するものである、憲法等の法的な観点からこれは可能であるという判断をしている。状況が変化する中にあって具体的にどのような対応をするのか。お示しいただいたのも一つの例ではありますが、さまざまなパターンが考えられると思います。
小池 一つの例だと総理大臣が認めたことは重大だと思います。
小池 実行のためどんな装備体系が必要か
防衛相 一概には言えない
小池 どれだけ費用がかかるか想像もできない世界になる
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その上で小池氏は、こうしたオペレーションを実行するためにどのような装備体系が必要かをただしました。ところが岸防衛相は「具体的な装備体系については、一概に申し上げることはできない」などと回答を拒否し続けました。
小池 (先ほどの)オペレーションを実行する装備体系は何なのか、言えないんですか。おかしいじゃないですか。2003年3月、当時の守屋武昌防衛局長は、装備体系について、第一に敵の防空レーダー破壊能力、第二に航空機の低空進入能力、第三に空対地誘導弾または巡航ミサイル、第四に敵基地に関する正確な情報収集能力の四つが必要だと答弁している。(先ほどの答弁にある)移動式ミサイル発射機の位置をリアルタイムで把握するためには早期警戒衛星だって必要になるんじゃないですか。
防衛相 先ほどの例について用いられる装備品としてはあると思いますが、一概には申し上げられない。
「一概に申し上げられない」と繰り返す岸防衛相に対し小池氏は、「守屋防衛局長が答弁したときの装備体系も一つの装備体系として認めるか」と重ねて追及。
防衛相 その時点での答弁を差し上げたものだと思っておりますが、状況は刻々変化があります。
小池 その時点ではそうだったということは、その後はもっと、莫大(ばくだい)な装備体系が必要になるということなんですよ。一体どれだけの費用がかかるか想像もできない世界だ。
さらに小池氏は、極超音速滑空兵器など各国の「開発競争の背景に何があったのか」として、この間の日本の弾道ミサイル防衛(BMD)関連経費の予算額を質問。岸防衛相は、21年度補正予算案には約643億円、04年度予算から21年度補正予算案までの累計で約2兆7086億円が計上されていると答弁しました。
小池 BMD導入時の国会答弁では整備費全体で8千億から1兆円程度と言っていた。ところが、3倍近くに膨れ上がっている。米国のBMDシステムに日本も加わって、それが他国の対抗策を招いて、まさに軍事対軍事の悪循環の中で、極超音速滑空兵器などの非常に危険な兵器の開発に進んでいるということではないか。こうした中で、さらに敵基地攻撃能力の保有にまで踏み出せば、いっそう歯止めなき軍拡競争になっていく。総理は今回、あえて敵基地攻撃能力も含めて防衛力を抜本的に強化していくと強調しています。日本も打撃力を持って、「専守防衛」と説明してきた政策を変えることになるんじゃありませんか。
首相 急速に変化する安全保障環境、極超音速滑空兵器をはじめとするミサイル技術の進化に対して、政治の立場から国民の命や暮らしを守らなければいけない。そのために何が必要か、予算にも盛り込ませていただいている。その中で、敵基地攻撃能力をはじめあらゆる選択肢を検討したい。憲法やあるいは専守防衛、国際法と照らして実現可能な制度が確定したら、それにふさわしい装備を用意する。
聞かれたことに答えない首相に対し、小池氏は重ねてただしました。
小池 私が言ったことは日本の歯止めなき軍拡、世界各国の軍拡が軍事対軍事の悪循環になって、非常に危険な状況をつくってきたのではないか。そこを見直す必要があるんじゃないかと言っているんです。
首相 外交・安全保障において大切なことは、緊迫する安全保障環境の中にあっても国民の命と暮らしを守るために十分な備えはどうなのか、何が必要なのか、こういった議論も政治の立場から行っていくこと。
小池 立憲主義の破壊も憲法そのものの破壊も許さない
小池氏は「国民の命を守る」と言いながら、諸外国のさらなる軍拡に軍拡で応えていけば国民生活を支える予算がますます圧迫されると指摘しました。自民党の国防部会、外交部会などの合同会議で防衛省が配布した文書には、今回の補正も含めた来年度の軍事費は6兆円を超える大幅な増額と書かれていると告発し、中期防は5年間の総額が初めて30兆円を超える方向で検討されているとの報道をあげ、次のように訴えました。
小池 「専守防衛」と言いながら、実際には護衛艦「いずも」の空母化、F35や長距離巡航ミサイルの導入が進んでいる。そして軍事費のGDP(国内総生産)比2%以上の大軍拡がねらわれている。こうした中で先制攻撃も辞さない「敵基地攻撃」という大転換をしようとしている。安保法制に続く憲法の平和主義、立憲主義の破壊も、憲法そのものの破壊も許さない。
そのためにがんばりぬく決意を表明して、私の質問を終わります。