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2021年12月23日(木)

ケア労働の現場から

低すぎ 国の配置基準

補助金なしで独自の加配も 保育士

写真

(写真)手作りの指人形を見せる小林君江さん

 30年以上保育士として働く小林君江さん(56)。子どもが好きなのはもちろんのこと、仕事をする保護者を応援したいとの思いから保育士になりました。保護者から「保育園があって助かった」と言われると、やっていてよかったと実感するといいます。

 小林さんが働く私立認可園「こぐま保育園」=東京都多摩市=。家庭的な保育を目指し、1~5歳児まで異年齢のクラス編成です。小林さんのクラスは各年齢7~8人の37人です。クラス担当の職員は正規5人、短時間勤務のパート4人です。

きめ細かに見られない

 国が定める保育士の年齢別配置基準を当てはめると、小林さんのクラスの保育士数は3・2人。それでは「子ども一人ひとりをきめ細やかに見ることができない」と小林さんは指摘します。

 衝動性がある子や発達がゆっくりな子など、配慮をしてあげたい子のために、保育士を加配しています。発達障害などの診断書があれば補助金が出ますが、診断書のない場合は補助金なしで独自に加配しています。

 自治体から支給される金額は国の基準をもとに算出されます。独自に保育士を加配する分は園のもち出し。そのため1人当たりの給与は下がってしまいます。

 座ってじっくり遊ぶ子もいれば走り回って遊ぶ子もいます。低年齢の子は保育士と一対一で向き合って遊ぶのを好みます。保育士が少なければ「子どもをおとなしくさせ、管理しやすいようにみんな一緒の活動をさせるようになってしまう」と話します。

 「いつも時間に追われている」というほど、事務作業が多くあります。日誌や保育計画、日々の保育を保護者に伝える連絡帳やおたよりなどがあります。それらを保育中に行うのは難しいといいます。休憩を削ったり残業をしたりすることもあります。

 子育て支援の役割も大きくなっています。家庭が多様化するなか保護者の相談に乗ったり、保護者どうしの交流会を開いたりしています。

低い賃上げ 期待持てず

 岸田政権は保育士の給与を月額9000円上げる方針を掲げています。金額が少なすぎて、保育士の間からは「小遣いなの?」と不満の声もありました。

 周囲から「給与が上がっていいね」といわれた人もいますが、世間の見方と現場の実感とのギャップが大きいと感じています。職員たちは数万円規模の賃上げを求めています。

 園にはパート職員や給食の調理員など正規の保育士以外の職員が多くいます。不公平感が出ないよう園で対応すれば、1人当たりの額はさらに低くなります。

 現場は賃上げの実感がなく「がっかりしたくないから期待していない」と冷めた雰囲気だといいます。

 小林さんは、子どもの安全や豊かな育ちのためだけでなく、職員の処遇や働き方の改善のためには、低すぎる国の配置基準の見直しこそが必要だと訴えます。(小林圭子)


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