2021年12月26日(日)
主張
膨張する軍事費
軍拡アクセル 危険な踏み込み
岸田文雄政権が24日に閣議決定した2022年度当初予算案で、軍事費は5兆4005億円(デジタル庁関係経費含む)に上り、10年連続の増額、8年連続での過去最大の更新となりました。防衛省は、20日に成立した21年度補正予算の軍事費7738億円と合わせ「防衛力強化加速パッケージ」と呼んでいます。合計額は6兆1744億円で、「GDP(国内総生産)比は1・1%」(岸信夫防衛相)となります。軍事力の「強化加速」は、中国など周辺国との軍拡競争をさらに激化させ、北東アジアの平和と安定に逆行します。
敵基地攻撃能力保有へ
岸田政権が21年度補正予算と22年度予算案を一体化した「16カ月予算」で総額6兆円を超える軍事費を盛り込んだのは、「日本は自らの防衛力を強化する」(4月の日米首脳会談の共同声明)と対米公約したのを受けたものです。この結果、「主要装備品は(8月末に)概算要求したものを全て取り切る」(岸防衛相)という異例の事態となりました。
岸田政権は、今後も6兆円台の軍拡を続けるため、22年末に改定する「中期防衛力整備計画」(中期防)で5年間の軍事費総額を初めて30兆円台にする調整に入っていると報じられています。12年末に発足した第2次安倍晋三政権で始まった軍備増強のアクセルをさらに強く踏み込もうとしています。
岸田首相は、中期防に加え、「国家安全保障戦略」や「防衛計画の大綱」の22年末の改定に向け、憲法違反の「敵基地攻撃能力」の保有について検討すると表明しています。その既成事実化がすでに進んでいることも重大です。
22年度予算案の軍事費には、「スタンド・オフ防衛能力の強化」として▽最新鋭のステルス戦闘機F35A(8機・768億円)の取得▽長距離巡航ミサイル搭載のためのF15戦闘機の改修(520億円)▽地上に加えて艦船や航空機から発射し、射程1千キロとされる国産巡航ミサイル(12式地対艦誘導弾能力向上型)の開発(393億円)―などを盛り込んでいます。「いずも」型護衛艦の空母化に向けた改修(61億円)や「いずも」に搭載可能なF35B(4機・510億円)の取得も計上されています。
「スタンド・オフ防衛能力」とは敵軍の射程圏外にある位置から攻撃ができる能力のことで、「敵基地攻撃」に転用可能です。
「米軍再編関係経費」では、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設のために355億円(歳出ベース、以下同じ)を投じます。21年度補正予算と合わせると、1158億円にも上ります。馬毛島(鹿児島県西之表市)への米空母艦載機着陸訓練(FCLP)のための基地建設費として549億円も計上しています。いずれも建設反対の地元の民意を踏みにじるもので許されません。
米軍関係費も過去最大
22年度予算案の「米軍再編関係経費」は全体で2080億円に達します。日米間で新たに増額の合意をした「思いやり予算」(米軍駐留経費負担)2056億円、沖縄県内の米軍基地・訓練の移転費など「SACO関係経費」137億円と合わせると、当初予算で過去最大の4273億円に達します。
対米追随の異常な軍拡路線を軍縮の方向に抜本的に転換することが切実に求められています。