2021年12月31日(金)
アベノミクス自賛 税金6千万円投入
都合のよい数字並べ宣伝
18年 安倍内閣
安倍晋三内閣だった2018年に、アベノミクスの「成果を国民に伝えるため」として宣伝費用に6400万円余の税金を使ったことが本紙の調べでわかりました。内容は「戦後最長の景気回復」などと自賛するもので、政権の名を冠した政策を公金で持ち上げる異様さと空虚さが浮かびあがります。(矢野昌弘)
内閣府が18年に結んだ契約情報によると、「アベノミクスをはじめとする各種取組とその成果を国民に伝えるため」として3件の契約がありました。内容は「動画、雑誌広告の制作」「パンフレットの印刷等」となっており、計6440万円余を大手広告代理店・博報堂に入札によらない随意契約で発注しています。
この契約での動画などは、今も政府広報のホームページで公開しています。パンフレット『データで見る アベノミクス』は20年1月に内容が改定されたものが掲載されています。
パンフレットでは、「アベノミクスの推進により日本経済は大きく改善」などと、第2次安倍政権とそれ以前とを比較し、“成果”を強調しています。
名目GDPや企業収益、就業者数などのデータが並び、あたかも「景気回復」を思わせるものになっています。他方で、「実質家計消費支出」といった景気を判断する上で重要な指標が抜けていました。「実質家計消費支出」は、第2次安倍政権が14年に強行した消費税率8%への引き上げを契機に落ち込んでいます。それにもかかわらず安倍政権は19年に消費税をさらに10%に引き上げています。
またパンフレットでは、「就業者数」が12年と比べ、18年は「384万人増」と誇っています。
このデータについては19年2月の衆院予算委員会で、日本共産党の志位和夫委員長が内閣府や日本学生支援機構の調査をもとに検証。志位氏は、増加した就業者数のほとんどが65歳以上の高齢者や高校生・大学生となっており、少ない年金や高い学費のために働かざるをえない状況になっていることを指摘しました。
この質問で安倍首相(当時)は、志位氏から「都合のよい数字だけツマミ食い」はやめるべきだと批判されていますが、その後改定されたパンフレットをみると、それを反省した様子はありません。
本紙の取材に政府広報室は「契約の経緯については詳しくわからないが、成果を広報しようということで契約に至ったのではないか」とのべました。